真田信繁だけでない 古めいた独特な長野県上田文化を体感しよう!
北陸新幹線で乗車して上田駅に到着して間もなく、駅売店のガラス越しに武将の鎧が見えてきました。
およそ400年以上前から、歴史上有名な上田合戦はまさにここの上田城で二回も行われ、真田氏と徳川氏の対決は日本戦国歴史における大きな注目ポイントとなり、後世の歴史ファンに興味深げに語られ続けています。
上田城ガイドを持っている観光客の列や旗めいている明るい赤の旗、いずれも戦国武将の真田幸村(信繁)の魅力とテレビドラマの影響力の大きさが伝わります。
実は上田市には、戦国名将のゆかり地としてだけではなく、和菓子、工芸品、映画ロケ地、文豪作品のテーマとなる景色など、色んな文化的な見所があります。
上田駅から徒歩やバスで行ける範囲内で、上田市の独特な魅力を丸一日どっぷりと体感じたい方におすすめします!
今回はその百年を超えた、まちなかに潜んでいる古めいた、当地しか味わえない上田文化をご紹介します。
この記事の目次
真田坂で和菓子巡り!登録文化財の大正風飯島商店から歩き食べよう!
1925年築の飯島商店は有形登録文化財であり、大正モダニズムの内装が保たれる貴重な空間として人気を集めています。
飯島商店のメイン商品は、日本の豊かな自然から生み出された、完熟した果実のジャムとお菓子です。
鮮やかな四季の彩り、豊郁で懐かしく故郷を忍ばせる旬な味、まろやかな口触りが組み合わせ、果物の最高な味覚を奏でています。
信濃国が故郷であるりんごやぶとうは勿論、フルーツの王様と呼ばれる三宝柑もあります。
鮮度を高め、芳醇な風味がふわっと喉までに届く極上な味です。ジャムを別途でお水で希釈し、ジュースにもできます。
また百年の歴史を誇りとする上田銘菓、ほっくりとした「栗仙果」、ふくよかな香りを持つ「花くるみ」、ほんの甘さと柔らかな口触りを併せ持つ上田城を想起させる「真田石」、一口食べると、癖になるほどの美味しさ。上田の和菓子をぜひ試してください。
知っておきたい上田工芸!「農民美術」や松代焼から美意識を見学!
駅に直通している真田坂では、上田風情が感じられるご当地の工芸品との出会いもあります。
全ての素材が天然物を使い、200年もの歴史を持つ「松代焼」は、松代藩主である真田幸専が京都から陶工を招き、「青流し」という技法で仕上げられる信州·長野県の代表的な陶器工芸品です。
口元に翡翠色の釉薬をかけることで、グラデーションのかかる色彩になります。予測できない色合いも、松代焼の一つの魅力でしょう。
他に、水や窯の土、全ての材料が上田市を原産地とし製造された「染谷焼」から一種の素朴な美学を感じられます。余計な彩りを一切使わず、沖縄土偶を連想させるシンプルなデザインに、不思議な力が宿っているように思います。
上田市の民俗風情から、精巧な手作業で作られた「農民美術」の木彫りも、お土産としておすすめです。
お蕎麦だけではない!北国街道柳町で伝統の発酵グルメと出会えよう!
当時徳川軍の経由していた北國街道の一部である柳町は城下の商人町として栄えてきました。日本の伝統的な雰囲気を味えるため、柳町は強くお勧めしたいところです。
信濃の独特な風情そのものが現代住民の日常生活に溶け込んでいる町並みや、
昔の風貌を表す特徴的な卯建(うだつ)屋根を眺めながら、上田ならではの発酵グルメはいかがですか。
焼きたての天然酵母パン、老舗酒蔵の全国最優賞受賞作「亀齢大吟醸(きれいだいぎんじょう)」、限定生産の味噌「寒仕込」、独自製法による腰のありながら柔らかい食感を持つ人気「うさぎ餅」、甘めで絶妙な口当たりを伝わる手打ち蕎麦など、いずれも柳町で満腹になります。家族や親友に差し上げるお土産としても最高のチョイスです。
芸術ファンなら大興奮!上田市立美術館と映画ロケ地を訪ねていこう!
美味しいもので舌を肥やしてから、美術品と映画ロケ地の観光めぐりするのは、
更に幸せな気分になれるではないでしょうか。
上田駅から徒歩約13分の場所に位置する上田市立美術館本館の手前には広く開けた広場と芝生が設けられています。
館内では現代的なデザインが施され、静かで巨大なアートの空間の中で身を置き、とても落ち着いた気分になります。上田ゆかりの深い芸術家の絵画、彫刻、写真
など幅広い芸術品も常時展示されています。
上田市は「映画の街」として名を馳せています。篠田正浩、山田洋次、黒澤明、小津安二郎、市川崑など数々の
日本映画の巨匠による名作品がここで誕生しました。贅沢な気分で、ゆったりアートの空間を楽しめます。
千曲川と言えば!河原で島崎文豪の描いた千曲川風情を感じてみよう!
日本文学の愛好者にとっては、近代文豪である島崎藤村の名作、『千曲川(ちくまがわ)のスケッチ』はとても耳に馴染んでいる作品ではないでしょうか。この作品は作者当時信州へ単身赴任していた際、千曲川を中心に人々の生活を描いた写生文です。
藤村の作家人生において着目すべき一作であり、忠実的な目線で信州地方の生活様式を描写したものです。
上田駅温泉口から西方向に10分ぐらい歩き、千曲川の河原に着きます。吹いてくる気持ちの良い風、岩石に勢いよくぶつかる音を立てる湍流、見渡す限りの雲空を背景とした千曲川橋梁を通り抜けていく鮮やかなしなの鉄道車体。
『千曲川のスケッチ』を彩った目の前の景色は、途轍もなく愛おしいです。
上田市の一日旅の最後、豊かな自然の中で文学的な気分を味わいませんか。
真田信繁(幸村)のゆかり地を目当てに上田市を訪ねてきましたが、驚くほど上田市は他に沢山の魅力的なところを発見できました。
上田城跡公園で歴史をたっぷり満喫してから、その余韻を味わいながら、古く伝わってきた和菓子やお蕎麦を楽しむことができます。
また、信濃風情の溢れる柳町で日本酒に舌鼓をしたり、上田ならではの民間工芸や現代芸術を鑑賞したりすることもいい思い出になるでしょう。
最後に、千曲川の河原で文学や映画作の舞台になる景色を堪能するのは、いかがでしょうか。