歴史と人をつなぎ 新しいものに出会う山梨県甲府のスポット5選
甲府と聞いて、思い浮かぶものはどのようなものでしょうか。一般的には、武田信玄ゆかりの地とよく言われます。
しかし、今の甲府市にはそれだけではない、確かな歴史の流れを見ることができます。そしてそこには、必ず人がいるものです。
今回は、歴史を感じ、今を感じることもできるスポットをご紹介します。
この記事の目次
初めての体験!甲斐善光寺で、武田信玄に救われたご本尊とつながる
甲府駅の1駅隣の酒折駅に降り立ちました。 静かな住宅街を歩いていくと、甲斐善光寺は姿を現します。甲斐善光寺は、戦国時代、川中島の戦いの戦火を恐れた武田信玄は、信濃善光寺の諸仏寺宝類(しょぶつじほうるい)を奉還したことに始まっています。
そんな甲斐善光寺では「鳴き龍(なきりゅう)」と「お戒壇廻り(おかいだんめぐり)」を体験することができます。
鳴き龍は、日本一の規模を誇り、大きな龍が2匹描かれ、ご本尊の方を向いています。まるでいつもご本尊を見守っているようです。
そしてもう一つの見どころ、お戒壇廻りでは「ご本尊とつながることができる」と言われています。 暗闇の中を壁づたいに進み、壁にかかっている南京錠を見つけます。
この鍵がご本尊が奉納されている真下にあるため、このように言われています。 また、暗闇の中では”心”という文字を形作るように壁が並んでいます。
暗闇の中で、自分の”心”を再確認し、2匹の龍の想い、ご本尊を感じてみてはいかかでしょうか。
じっくり見たくなる…甲斐善光寺の『地獄極楽図』は異世界への第一歩
実は、甲斐善光寺には、『地獄極楽図』というものがあります。 人間が三途の川を渡り、閻魔大王の前で裁きを受け、地獄と極楽でいる様子を表しています。
この絵は14枚にわたり、その中の半分には地獄の様子が描かれています。連れていかれる地獄は、様々な罪によって異なります。
この『地獄極楽図』では、その一つ一つを丁寧に描いていて、私たちは間近でそれらを見ることができます。
もしかしたら、当てはまってしまう地獄があるかもしれません…。
「文字ではなく、目で見て感じることが大切」 迫力のある14枚の絵は、そんなことを教えてくれます。
絵が展示されている本堂は、風通しもよく、気持ちのいい風が吹き抜けます。自分の過去から未来へと、吹き抜ける風のようでした。
お昼ご飯には、地元に愛される甲府の郷土料理「おざら」がぴったり!
甲府の郷土料理と言えば、”ほうとう”を思い浮かべるかもしれません。山梨県は山に囲まれていて水田が少なく、米は貴重だったため、代わりに小麦粉で作られるほうとうがよく食べられていました。
しかし、甲府で親しまれている郷土料理として、「おざら」というものがあります。これは、 ”冷やしほうとう”とも呼ばれています。
今回紹介するお店は、このおざらを、初めてメニューに載せた「ちよだ」です。
「おざら」とは、ほうとうで使われる麺を冷やし、それを具だくさんで、かつおだしの効いたしょうゆ風味のつゆにつけて食べるものです。夏の麺は冷たく、冬は暖かくして食べます。
舌をやけどする心配もなく、つるつると食べることができ、あっという間に無くなってしまいます。
おかみさんの笑顔も素敵で、はきはきとした声も店内に響きます。
お座敷でゆったりするのもよし、時間がないときは、テーブル席でかきこむもよし。
お昼はもちろん、夜も賑わいます。お酒の〆に、おざらはぴったりだそうです。
戦国時代からの甲府のシンボル、舞鶴城公園で伝統技術の魅力を発見!
甲府駅前を少し行くとすぐに、舞鶴城公園があります。敷地は広く、駅前の街並みから離れ、静かな雰囲気です。
舞鶴城公園は、甲府城跡地を開放した公園です。甲府城も、武田氏ゆかりの地かと思いきや…実は違います。
武田氏滅亡後、豊臣秀吉の命令により築城されたのです。豊臣の時代は徳川に、徳川の時代には西日本の勢力に対抗するための重要拠点とされてきました。
その後、明治時代にはいると廃城され、その前後10年で建物が取り壊されるなどして縮小されていきました。
平成になり、舞鶴城公園整備事業として復元された立派な門や櫓(やぐら)も見ることができます。
舞鶴城公園では、是非様々な石垣を見てみてください。あるものはとても高く見え、あるものは歯形がついているような跡があります。
そして、それらの謎を解くときは、稲荷櫓(いなりやぐら)に行きます。石垣の謎だけではなく、瓦の謎も解くことができますよ。
それから、忘れてはいけないのが天守台に登ること。360度、遠くまで見渡すことができ、街中の奥の山々をより一層深く感じることができます。
少し階段は急ですが、是非上ってみてほしいです。
この公園は甲府市民にも親しまれています。ご家族連れでお昼時を楽しまれたり、カップルが散歩をしにこられたり。
時間がゆったりと流れるこの舞鶴城公園で、緑を感じながら、次の目的地をゆったり決めるのもいいのではないでしょうか。
甲府の銘菓は「松林軒」で。明治時代から続く味は日本全国でも話題!
舞鶴城公園から少し歩くと、商店街が見えてきます。飲食店や呉服屋さんなど、様々なお店がひしめく中で、ひときわ大きな看板を持つ”松林軒”というお店がありました。
ドアを開けると、またもや素敵なおかみさんが。 お菓子について質問をすると、「食べたことないの?食べてって」とお茶を出してくださいました。
そのお菓子とは、”月の雫”。山梨県の銘菓です。今では、いたるところで作られ、売られていますが、発祥はこの松林軒だそうです。
甲州ぶどうを砂糖で包んであるこのお菓子は、酸味と甘味の相性が抜群です。
また、お店にいた常連の方も、「今はない映画館で、映画を見た後は決まってアイスクリームを食べていた」といったような、約40年前の商店街のお話を話してくださり、アットホームな時間を過ごすことができました。
商店街にある、昔から長く愛されるお店には、常連の方もたくさんいるようです。そして、そんなお店から出てくるお客さんは、皆さん笑顔でお店を後にします。
旅に少し疲れてしまったなら、商店街でお気に入りのお店を探してみてください。
人の温かさに触れ、笑顔がこぼれてしまうかもしれません。
今回紹介した場所は、甲斐善光寺を除いて、歩いて回ることができますが、レンタサイクルが便利です。
駅前のホテルで借りることができ、午前9時から午後5時まで、1回500円で使うことができます。
南北に長い甲府で、より足をのばしたくなったら、レンタサイクルの利用をおすすめします。
甲府という土地は、新しいものをつくりつつ、今までの歴史も誇りに思い、大事にしています。
甲府にあるものすべてが、歴史的な建造物ではありません。しかし、それぞれの時代で、それらを復元し、残そうとしている人々はたくさんいました。
そのおかげで、原点となる時代から現代までの、長い歴史を見ることができるのです。
誰かに話したくなる、そんな旅を、ぜひ甲府で体験してみてはいかがですか。