重伝建地区で唯一の製塩町、「広島県竹原市」では2023年9月22日-24日に世界的な着物デザイナー、スタイリスト冨田伸明氏をむかえて、『「竹取物語 光るKIMONO十二単」&「冨田伸明が手掛けた衣装展」in竹原』を開催いたします。
数々の映画やドラマのスタイリング、着物のプロデュースを手掛け、着物の文化を世界へ発信する冨田氏が今回なぜ「広島県竹原市」でイベントを開催するのか。HISTRIPでもこれまで取り上げてきた竹原、そして日本文化である着物と重伝建地区のまちなみの可能性を深ぼるインタビュー記事を2回に分けてお届けいたします。
また HISTRIPプロデュースの同時開催として、NIPPONIA HOTEL 竹原 製塩町へご宿泊のお客様限定での冨田伸明氏のトークショー、着物着付体験を開催いたします。
ご参加へのご予約についてはこちら
https://www.nipponia-takehara.com/
冨田伸明氏プロフィール
冨田伸明 着物デザイナー&キモノスタイリスト/文化人
「2021年度外務大臣表彰受賞」「在外公館長賞」
栃木県とちぎ未来大使/群馬県観光特使/富山県氷見市きときと大使
佐賀県嬉野市観光大使/群馬県伊香保温泉観光大使/京都観光グローバルサポーター
1963年京都生まれ 京都室町問屋に入社 キモノの商品・流通を学び27歳で独立し「京香織」を設立
着物デザイナー&キモノスタイリストとして国内外で活躍
・銀座ファッションウィークのメインゲスト
・NY「ハリウッドスタイリスト アマンダ・ロス」とのトークショーを開催
・婦人画報1200回特別記念号にて着物の達人4人に選ばれる
・外務省(各国の大使館、総領事館)JNTO(日本政府観光局)のイベント、ゲスト参加
・各大学での学会基調講演、特殊講義など和の装いを通じての日本をPRしている
・JAPAN EXPO Paris 第20回記念 最大ステージにて着物ファッションショーを開催
「竹取物語 光るKIMONO十二単」&「冨田伸明が手掛けた衣装展」in竹原
― 今回展示される作品について教えてください。
今回は「NIPPONIA HOTEL 竹原 製塩町」と「旧森川邸(市重要文化財)」へ、新作の「竹取物語 光るKIMONO 十二単」とこれまで手掛けてきた数々の衣装を展示いたします。
光るKIMONO 十二単は特殊な糸、特殊な織り方で光があたると着物自体が光るものをつくりました。服の上からでも30秒で着ていただけるもので、襟を外すと大奥の衣装にもなります。
私のところでは糸の色を染めるところからおこなっており、職人さんにこの色とこの色を重ねて織ってほしいということを指示をして、それを京都にも5,6台しかない通常の倍幅の機織り機で織っています。
これまで手掛けた衣装には、実際に女優が着用した着物から、人気歴史ドラマ『暴れん坊将軍』主人公の江戸幕府第8代将軍・徳川吉宗の衣装、上海の地下鉄路線図をモチーフとした帯等、独創的な和服作品を展示を予定しています。
― 今回、竹原で作品展を開催されようと思われた理由はなんだったのでしょうか?
竹原には、晴美さん(奥様)から着物が似合うまちだと聞いて初めて訪れました。実際に現地へ行って素晴らしい場所だなと驚きました。その上、竹原の人から「竹取物語の舞台は竹原」だと聞きまして、調べてみたら本当に日本に8ヶ所ある竹取物語の聖地の一つだったんです。
大河ドラマに取り上げられる紫式部にちなんで「光るKIMONO 十二単(じゅうにひとえ)」を作品としてつくろうと構想していたところだったので、そのような奇跡的な物語があり、しかも古いまちなみが残っていてお着物にもとてもマッチする竹原で作品を発表するのが一番いいのではないかと思ったんです。
― 竹原へ実際に行かれて感じられた良さとはなんだったのでしょう?
世界の人が来られていいなって思うところは日本には本当に沢山あると思うんです。竹原はそのひとつだと思います。
「NIPPONIA HOTEL 竹原 製塩町」が元々の古い町並みを活かして、着物を着て楽しめるような通過点をそこここにつくっておられる。竹原はただ着物が似合うまちじゃなしに、歩いて着物が素敵に見えるまちなんだと思いました。
特に竹原は最も発展した時代には、日本中の塩を必要とする場所へ竹原の塩を流通させるまちだったんです。その時代のアイデンティティがあるので、日本から発信して海外からわざわざ来てもらえる場所に絶対になるなと思ったんです。
着物は着ているだけで日本文化が歩いている
― 冨田さんはこれまで海外でも多く活躍されてこられましたが、着物の可能性をどのように感じていますか?
日本語がそのまま英語になった言葉はいくつかあります。例えば芸者、歌舞伎、着物など。
文化はなかなか持ち歩きができないけれど、特に着物は着ているだけで日本文化が歩いていると感じていただけるものです。
なかには体型を気にして着られないと思っている方もいらっしゃるので、着せてあげるとものすごく喜んでくれる。海外へ訪れて数々のVIPに着付けをしてきた中で、彼らは人前で靴下を見せることがNGで、それはもう、裸になれって言うのと同じような感覚のようなんです。でも着物を着せてあげるというと、喜んで靴を脱がれるんですね。それぐらい喜んでくれる。
一方で、京都のレンタル着物屋さんとかで着物を着た人からは、「あんなの二度と見たくない」って言われたり、イタリアから教え子が来て「先生、あれは着物じゃないよね」って海外の人が笑ってるんですね。着物に触れるきっかけとして、形として着物に見えるんだったらビジネスとしてはそれもありだなと思うのですが、本物の着物を服の上から簡単に着られるってことが、今後大きな可能性があるんじゃないかと感じています。
― 今回の「光るKIMONO 十二単」も服から着られるようになっていますね
そうなんです。そういった海外の経験から、服の上から5分ぐらいで「本物の着物」を着せようと考えたんです。今回の十二単もその経験が活かして、30秒で服の上から着られようなものとしてつくりました。
服の上から着せるってものすごく大変なのですが、でも僕は朝ドラなどで女優さんをモデルとして練習してきましたから簡単に着せられるんですね。もちろん冬着でも、セーターを着た上からでもできます。
今回は、「NIPPONIA HOTEL 竹原 製塩町」のご宿泊者様には「竹取物語 光るKIMONO 十二単」と、映画『武士の一分』ヒロイン役で女優の壇れいさんがベルリン国際映画祭で着用した着物を実際に服の上からの着付けを体験をしていただけるので楽しみにしていてください。
竹原を着物を着て「来てみたい、楽しみたい」と言われるまちに
― 「NIPPONIA HOTEL 竹原 製塩町」についてはどのように思われましたか?
海外の人たちはとても勉強して日本へくるんですね。彼らは東京、大阪、京都なんてどうでもいいんですよ。自分たちだけではなかなか行けないようなところに行って楽しみたい、こういうところがあるんだよって帰って自慢したいんですね。竹原にはそんな本物があると思います。
「NIPPONIA HOTEL 竹原 製塩町」はそこで古い建物や町並みを活かした地域密着型の分散型ホテルとして運営されていると思います。宿泊と飲食で「食」と「住」ですよね。それにあと一つ足らないのが衣食住の「衣」なんです。
実は私と晴美さんも、着物を着て楽しめるような通過点をそこここにつくって地域に密着しながら楽しめるような「まち」をつくりたいと考えていました。
着物を普段に着るっていうのは今の日常すごく難しいけれども、着たいな、体験したいなっていう気持ちは日本の方も、特に海外の方はもっとお持ちだと思います。着られる場所があったらきっとそこに行くし、行きたいと思う。
でも着物が似合う地域があっても、新たに作られたテーマパークのようなまちでは意味がないんです。竹原は守り続けられてきたまちだからこそ意味があると感じています。だから僕はなんとか竹原が着物が似合うまちじゃなしに着物を着てここに来てみたい、着物を着て楽しみたいって言われるようなまちにしたい。
なので竹原へ来たいと思っていただけるよう竹原でしか得られない価値をつくりたい。
そのためには1年だけでなく、時間をかけて今後も竹原でやっていければ嬉しいと感じています。