三朝温泉で1932年から続く老舗旅館「旅館大橋」の魅力を徹底解説
三徳川沿いに建つ、木造3階建ての趣ある旅館大橋。
1932年に完成した宮大工の技が光る本館などは、国登録有形文化財にも登録されました。
今回はそんな「文化財で川のせせらぎを聴きながら温泉を楽しめる」、旅館大橋をご紹介します。
三朝温泉 旅館大橋の歴史
三徳川沿いに立つ木造の風情ある旅館大橋。
3階建ての木造旅館で、1997年にはそのほとんどが重要文化財に指定されています。
では、はじめに歴史ある旅館大橋の歩みをたどっていきましょう。
冊子「倉吉」の記録によると、旅館大橋はもともと倉吉にあった大橋旅館の別館としてはじまったそうです。
創建された1932年頃、まだ三朝は温泉街として成立しておらず、大半が農家という状況でした。
戦争がはじまり、全国の旅館は集団疎開の受け入れや病棟の役割を担いますが、旅館大橋においては戦時中も旅館として残されていました。
戦時中はもちろんのこと、終戦を迎えても三朝の温泉旅館はどこも経営が厳しい状態が続きます。
転機となったのは、1955年頃からの高度経済成長期。
好景気は三朝に温泉客を導き、一気に三朝は観光地として名を馳せました。
1932年に建物が完成して以来、苦しい時代も「旅館」の看板を下ろすことなく生き抜いた旅館大橋。
今回はそんな歴史が刻まれた館をご紹介します。
旅館大橋の重要文化財 太鼓橋・本館
1997年に大部分が国の登録有形文化財に登録された旅館大橋。
登録されたのは、「本館・離れ・西離れ・大広間・太鼓橋」の5つです。
こちらは「太鼓橋」で、大浴場へと続く廊下の一部となっています。
宮大工の遊び心なのか、不思議な造りをしています。
大浴場の行き来に使っているだけでは、太鼓橋とは気付きません。
外から見ると美しい曲線を描いていますが、館内から見ると橋は平らな造りになっているのです。
太鼓橋を歩く際は、「曲がっているのに曲がっていない」不思議な感覚をお楽しみください。
また。夜にはほのかな灯りが太鼓橋を照らし、幻想的な雰囲気ですよ。
旅館大橋は1992年に銘木を集めて建てられたため、木の違いによってお部屋の印象が変わります。
たとえば、こちらの「竹」のお部屋では、柱に竹が用いられています。
他にも「桜」のお部屋では桜の木といったように、部屋の名前に合わせた木材が使用されているので、お好みの木でお部屋を選ぶのもいいですね。
そして特別な旅にオススメなのが、最上階である3階の「南天の間」。
南天の間では、宮大工が趣向を凝らした「傘天井」を見ることができます。
天井を見上げると、太い木々が傘のように広がっています。
現在では手に入れることが難しい高品質の「南天の木」を使っており、迫力満点です。
他にも露天風呂付のお部屋があるので、ご宿泊の際にはじっくりお好みの部屋を探してみてください。
旅館大橋にしかない二つの温泉 ~ラドン泉・トリウム泉~
旅館といえば「温泉」という方も多いのではないでしょうか。
旅館大橋には「せせらぎ」と「巌窟(がんくつ)の湯」の2つの大浴場があります。
巌窟の湯は、もともと三徳川沿いに湧き出ていた温泉です。
その周りに壁を造り、湯船として利用しています。
湯船をよく見ていると、ときどき気泡が出てくるのがわかります。
この気泡は温泉が湧き出ている証拠。贅沢な「かけながし」の温泉です。
巌窟の湯には三朝温泉唯一のトリウム泉があります。
効能や効果はラドン泉に等しいと考えられています。
旅館大橋でしか体験できないトリウム泉は、要チェックですね。
せせらぎは、三徳川を眺めながら楽しめる露天風呂です。
温泉に入って川を流れる水の音に耳を澄ませて、リラックス。
隣のミストサウナのスペースもお忘れなく。
三朝温泉は、ラドンの濃度が高い世界屈指の放射能泉です。
微量のラドンは体内に吸収することで細胞が活性化して、健康促進に役立つとされています。
ミストサウナで三朝温泉の蒸気を吸って、健康体を目指しましょう。
知るともっと楽しくなる 旅館大橋の見どころ
歴史に客室、温泉とご紹介してきましたが、他にも旅館大橋にはすてきなところがあるんです。
2階にあるくつろぎ処「湯庵」は、湯処「せせらぎ」の手前にあります。
一面ガラス張りの広々とした空間で、三徳川を眺めながら、のんびりとした時間をお過ごしください。
館内を歩くと、いくつかの戸に「波打つガラス」が使われています。
先ほどの湯庵にあったガラスとは違い、ガラスが波打っているような形状です。
一般的なガラスは、機械で大量に画一的なガラスを生産できる「フロート法」で作られていますが、これは現在ではめずらしく手作業で作られています。
手作業のガラスは、職人によって仕上がりの質感が変わってくるため、ひとつひとつ味があります。
そしてその波打つガラスを通して見る、ぼんやりとした景色は水彩画のようで美しいですよ。
現在は板ガラスのほとんどが機械で作られているため、なかなか目にすることのない波打つガラス。
廊下を歩きながら、ぜひ探してみてください。
創業してまもなく戦争で経営難となりながらも、旅館として生き抜いた旅館大橋。
宮大工の趣向を凝らした建物には、芸術性とともに歴史が刻まれているのを感じます。
ぜひ三朝に来られた際には、旅館大橋ですてきなひとときをお過ごしください。