【A面】国重要文化財 大宝寺三重塔 【B面】猫の命 塩田平の魅力
長野県上田市「塩田平」と呼ばれるのどかな土地には3基の「三重塔」があります。
今回ご紹介する前山寺三重塔は国の重要文化財にも指定されていて、その姿は特別な存在感を放っています。
しかしこの塔、「未完成の塔」という別名があります。その理由とはいったい・・・?
今回旅で出会った「福島さん」と猫のお話を添えて、その魅力をお伝えします。
この記事の目次
前山寺の歴史と共に歩んできた 前山寺へ続く300歳の並木道のお話
上田駅から上田電鉄別所線に乗り換え、揺られること約20分、塩田町駅を通る信州鎌倉シャトルバスに乗り換え「前山寺バス停」下車すぐ、塩田平を一望できる高台にある「前山寺」(ぜんざんじ)が今回の目的地です。
(信州鎌倉シャトルバス運行日:4月~11月毎日)
前山寺の歴史は古く、平安時代初期の建築であると伝えられています。
「前山寺」は並木が美しく、「前山寺参道並木」は市指定の天然記念物です。
樹齢300年を超える大きな二本の欅の木(けやきのき)があります。
今回はちょうど冬季に訪れたため、残念ながら、生い茂る葉はありませんでしたが、春から秋にかけては華やかに人々を迎え入れています。
また、春になれば境内も、植物で色づきます。
中でも三重塔の庭と本堂の庭の間の傾斜地に植えられている藤の花は圧巻です。
塔を写真に収めた時にも、きれいに映り込み、写真を彩るフレームになることでしょう。
さて、お地蔵さんに見守られて並木道を奥へと進みましょう。
所在地:長野県上田市前山300
日本の古きを忘れない 前山寺本堂で歴史を感じる藁葺屋根のお話
まず最初の見どころは立派な藁葺屋根の本堂です。
鎌倉期から室町期にかけの時代にみられる禅宗特有特徴が表れた建築で宋代中国から伝来した禅宗様式(唐様)を和風様式融合させられています。
そのバランスが非常に見事な本堂をまずは参拝です。
ところで余談ですが、こちらの『藁葺屋根』、日本の伝統的な建築に用いられ、戦前までは多くの藁葺屋根の家が残されていました。
夏は涼しく冬は暖かい、まさに日本の四季ある気候にも適した素材ですが、火に弱く耐久性もあまり優れないことから次第に姿を消していきました。
現在では、それを保存しようとする取り組みも行われていて、そんな風情ある藁葺屋根の建物が、ここでは楽しむことが出来ます。
朝露が滴る屋根はとっても素敵な光景でした!
ぜひ注目してみてください。
前山寺最大の魅力「三重塔」は「未完成」!?歴史の謎に旅するお話
この「前山寺」最大の魅力は、やはり「三重塔」にあります。
国の重要文化財にも指定されているこの建物は、「未完成の塔」という別名もあり、魅力的な塩田平の人気スポットの一つです。
この「三重塔」が本当に未完成なのかという真実は歴史の謎に包まれていますが、今回旅の中で出会った地元の方にこのことを伺ってみると
「どこにいても三重塔を拝めるようにと各地に作られた中で、前山寺の三重塔が建設された時には、塔を拝む必要性がなくなったために中断されたか、もしくは建設するだけの権力や経済力を失ったか」
というお話をお聞きすることが出来ました。
みれば見るほどその絶妙なバランスが何とも言えません!
塩田平には「安楽寺」(あんらくじ)「大宝寺」(だいほうじ)にもそれぞれ国宝三重塔があります。
ぜひこちらと比較しながら歴史旅を楽しんでください。
旅の出会いは一生の宝物 福島さん営むお店と 猫の心温まるお話
“ほくろ~、みーちゃん~、しっぽ~”猫を呼ぶ声がします。
前山寺と別れを告げて階段を下っていくと、そこには小さな小屋がありました。
声の主人はこの、前山寺向かいで地元の農作物を販売し、お店を営む“福島さん”でした。
長野の最南端篠ノ井から干し柿や、特産のリンゴやクルミを仕入れて販売をしています。
私が訪れたのは2月頭の長野の寒い冬。
農作物の収穫はお休みの時期ですが、福島さんは1日置きにここへ足を運びます。
お話を伺うと、“捨て猫”のお世話をしているとのこと。
多い時で数十匹の捨て猫がこの小屋に集ったこともあるそうです。
今日、顔を出していた3匹の猫の性格を楽しそうにお話ししながら、猫を捨てていくことに対して、何度も何度も「かわいそう」と口にする福島さんからは、猫を愛する思いがひしひしと伝わってきました。
中には、猫の餌をもってきてくれる人もいるそうで、塩田平の温かい人々に支えられて生きている猫と福島さんのいるお店は3月お彼岸から営業を始めます。
前山寺に足を運んだ際には、ぜひ、ちょっと猫のご飯を差し入れに、向かいの小さな小屋のお店に立ち寄ってください。
そこには、旅の醍醐味、温かい出会いが待っています。
塩田平の地域に訪れたら、魅力的な自然と建物の人に出会いました。
旅の出会いは最高のお土産です。
お土産売り場がなくても、思い出というお土産はずっと心の中に残ります。
そんな大事なことを気づかせてくれる出会いにあふれた歴史旅に塩田平に出かけてみてください。
猫の絵ご飯も忘れずに。