ユネスコ無形文化遺産 300年の伝統を受け継ぐ千葉「佐原の大祭」
江戸への水運の要として栄えた千葉県香取市の「佐原」。人々は江戸の文化を取り入れ、その財力を背景に、さらに独自の文化へと発展させていきました。
そんな佐原を語る上で、「佐原の大祭」は欠かせません。
大祭の期間でなくても、町にはお祭りに関する場所やものが沢山あります。
今回は地元の方の生活の一部になっている「佐原の大祭」について紹介します!
この記事の目次
大祭のことを知るには「水郷佐原山車会館」へ 迫力ある大人形の山車
佐原は成田空港からほど近く、飛行機で向かうのが便利です。
成田空港から京成本線に乗って京成成田まで行き、JRに乗り換えてJR佐原駅まで向かいます。
電車に乗って約38分で到着しました。
新幹線をご利用の方は、JR東京駅からはJR千葉駅で乗り換えてJR佐原駅へと向かい約1時間43分ほどでJR佐原駅に着きます。
小野川を中心に東西2つの地区に分かれる佐原。
東側を本宿、西側を新宿と呼びます。「佐原の大祭」は、東側の本宿・八坂神社の夏祭りと、西側の新宿・諏訪神社の秋祭りの2つを総称しています。
約300年の歴史がある佐原の大祭は、関東三大祭りの一つであり、日本三大囃子(はやし)の一つ、「佐原囃子」を町中に響かせながら、他には見られない山車が町を歩きます。
江戸風情残す町並みの中で行われるお祭りは、まさに圧巻です。
また、その長い歴史と伝統から2016年12月1日に「佐原の山車行事」を含む「山・鉾・屋台行事」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。
江戸の粋の文化と、近江商人がもたらした町内みんなで協力する京の町の文化が出会い、佐原らしさが形成されて生まれた佐原の大祭。
JR佐原駅から約15分程歩いたところにある、八坂神社境内の水郷佐原山車会館では、その「佐原らしさ」をお祭りの期間以外でも体感することができます。
佐原の大祭は、大きな人形を乗せた豪華な佐原型の山車が有名です。
水郷佐原山車会館の1階ではこの山車が常時2台展示されており、間近でその迫力を感じることができます。
山車の大人形は、神話の神々、伝説の偉人、歴史物語の一場面など、様々な人形や作りものが山車を飾っています。
身の丈はなんと4~5mにも及び、日本最大級の大きさを誇ります。山車全体の高さは8m近くにもなるそうです。
これらの人形は、人形町の江戸~昭和までの名工たちによるもので、とても貴重で珍しいものとなっています。
2階がガラス窓になっているため、普段のお祭りとはまた異なった角度から、人形の表情を間近で見てみてください。
また、一風変わった大人形もあります。こちらの八日市場の鯉は、数年毎に地区住民の手によって町内総出で作られます。
鯉が町内民芸として山車の飾り物として乗ったのは、文久年間からだといわれています。
各町内、昔からの伝統が今も受け継がれていることが分かります。
今なお職人の技が息づく佐原型の山車 繊細な彫刻は一見の価値あり
そしてぜひ山車を見るときに是非注目していただきたいのが、「関東彫り」と呼ばれる山車を飾っている彫刻です。
商業の町として栄えた佐原の商人たちは、商売を通して得た豊富な経済力をもとに新宿、本宿互いに競い合いながら、山車の細部にまでこだわりを見せるようになったといいます。
彫刻師のほとんどが江戸の職人で、後藤茂右衛門、石川三之助などの名工たちの手によって名作が数多く残されました。
中には彫刻に名が刻まれたものもあり、江戸時代から歴史を重ねてきているのを実感します。
彫刻は日本神話などの伝記物や、太平記などの軍記物、昔話の名場面などが施されています。
同じ一つの山車の中にも様々な彫刻が施されており、力強さを感じるものもあれば、繊細で優しいものまで、表情豊かに表現されています。
お祭りのときには見られない当時の職人たちの誇りとこだわりをじっくりと見ることができます。
また、館内には佐原の大祭に欠かせない「佐原囃子(さわらばやし)」の独特な情緒ある響きが流れています。
佐原囃子は、囃子方のリズムよりも笛方の旋律の方が前面に出る、他の祭囃子には類を見ない独自の形をつくりあげたといいます。
一般的なお囃子は里神楽をベースとしているため、笛・太鼓・金属製の打楽器である鉦(かね)で構成されます。
ですが、佐原囃子には一般的なお囃子には無い「鼓(つづみ)」が入るため、全国的にも非常に稀で、大変優雅なお囃子となっています。
目でみるだけでなく、この独特な美しい音色にも耳を傾けてみてください。
1階のビデオシアターでは、優雅な佐原囃子と共に豪華な山車がゆったりと曳き廻される様子を大画面で見ることができます。
佐原へ訪れた際は是非、「水郷佐原山車会館」で佐原の大祭の迫力と熱気を体感しに来てはいかがですか?
所在地:「水郷佐原山車会館」千葉県香取市佐原イ3368
町のあちらこちらに見る山車のモチーフ 佐原が誇る「佐原の大祭」
もともとは今のような形のお祭りではなく、一般的な練物中心のお祭りだった佐原の大祭。
江戸後期から佐原の町で独自に発展して、佐原の大祭となりました。
舟運で栄えた江戸時代に、その繁栄を表すかのように大きな人形を飾った独特な山車ができたことを思うと、町とともにあるお祭りであると感じます。
そんな佐原の町を歩いていると、あちこちにお祭りにまつわるものを見かけます。
たとえばこちらの小野川沿いの街灯。
大人形を乗せた山車だけでなく、山車を曳き廻している人や、お囃子を奏でている人たちも表現されています。この街灯が、佐原の町にお祭りが欠かせないものだと物語っているようです。
街灯に注目すると佐原の町並みも繊細で伝統溢れる町としての歴史を感じます。あちこちのお店でもこのような小さな山車が置かれているのに気が付きます。
お店に置いてある山車の模型は町の人が趣味で作り、お店やお家に持ってきてくれるそうです。そういった人が一人ではなく何人もいるそうで、そのため置かれている山車は全く同じではなく少しずつ違います。
その違いを見つけながら町を歩くのも面白いかもしれませんね。雛祭りの時期には、山車の上にお雛様を飾ることもあるそうなので、また違った雰囲気を楽しむことができます。
佐原の人はお祭りが生活の一部になっているといいます。
町の人にお祭りに関することを聞くと、とても嬉しそうに、そして楽しそうにお話ししてくれます。
お祭りの期間でなくても、町を歩いて、町の人とお話をして、佐原が誇る「佐原の大祭」に触れてみてはいかがですか。