ひがし茶屋街の3歩先 400年前が残る寺の町「卯辰山山麓寺院群」
石川県金沢のひがし茶屋街にある卯辰山は50以上の寺が密集する「寺のまち」。国の重要伝統的建造物群保存地区として大切に保護される金沢の宝が詰まっています。
加賀藩ゆかりの寺院が特に多く集まるこちらは、地元民にはしばしば「心の道」とも呼ばれています。今回は厳選した寺院を辿りながら、その名の由縁を探っていきましょう。
この記事の目次
金沢ひがし茶屋街に来たら絶対に立ち寄りたい!加賀藩ゆかりの円長寺
金沢駅から橋場町方面へ、百万石通りを歩くこと約15分でひがし茶屋街へ到着します。
ひがし茶屋街の入り口にドンッと構えるお寺「円長寺」。お寺の門の前には人力車のお兄さんがいらっしゃり、威勢よく声をかけてくださりました。周りにはお抹茶にソフトクリームに…カフェもたくさん。
そんな活気あふれる街の中に不思議と馴染んでいるの円長寺を訪れました。
茶屋の街並みに誘われて、ついつい見落とされがちな円長寺は、実は加賀藩ゆかりの貴重な寺院。卯辰山山麓寺院群の中で一番初めに出会う、「心の道」の入り口でもあります。
円長寺は加賀藩三代藩主の名君と呼ばれた前田利常が、卯辰山へ鷹狩りに行った際によく立ち寄ったお寺でした。400年経った今も利常公の位が安置され、前田家の家紋である剣梅鉢の袈裟使用が認められています。
そんな加賀藩の足跡は屋根瓦に門に、至る所に見つけることができ、見ごたえも十分です。
立派な銀杏の木から降り注ぐ黄金色の葉は、真っ黒な瓦に良く映え美しい。その葉はまるで金箔のようにキラキラと輝き、忘れられない情景です。
観光名所ひがし茶屋街でのショップ巡りを楽しむ前に、こちらのお寺で一息つくのはいかがでしょうか。
お蔵を回すとあなたに幸運が舞い降りる 金沢の隠れパワースポットへ
そんな円長寺にはまだまだ見逃せないスポットがあります。
門をくぐると、金沢城そっくりの海鼠壁(なまこかべ)が目を惹く立派なお堂が見つかります。
さらに扉を開くと香の薫りと共に、八角造りの立派な一切経蔵がお出迎えしてくれました。真ん中にいるのが庶民に経蔵を広めたお坊様、そして隣には指をさす二人の息子たちが佇みます。
こちらは1865年に御輪堂として作られ、中の輪蔵はなんと回転式!まわすことができるのです。よく見てみると、それぞれの角にはたくさんの書架が積まれていました。この書架は仏教のすべての経典である一切経のほとんどが収められており、輪蔵を一周回しきると、
書架を全部読んだのと同じ徳が得られると言われています。
私も回してみました。見た目以上にずっしりと重く、堂内にカタカタと鳴り響く木の音と充満するお香の薫りが相まって、思っていた以上の緊張感。
これが徳を得るための重みなのでしょうか。
このお堂まで入れることを知っている方はなかなかおらず、いつも扉は閉まっているそうです。
是非、こちらの穴場スポットまでしっかり満喫してから円長寺を出てくださいね。
石像と五本松に覆われた金沢の沈黙の寺院山 前田利家眠る「宝泉寺」
ひがし茶屋街をまっすぐに奥まで進むと、細い路地、急な坂があちらこちらで見受けられるようになります。
茶屋街突き当たりにある右わきにある宇多須神社を越え、坂を上りきり、石段を上がると約5分で宝泉寺に到着します。
寺の起こりは1606年。加賀百万石の金沢城下の鬼門を封じるため、3代藩主前田利常により創建されました。本尊の摩利支天は加賀藩祖前田利家の守本尊で日本三摩利支天の一つ。そんな宝泉寺は金沢を代表する寺院です。
金沢ゆかりの作家、泉鏡花の小説にも登場する「五本松」に囲まれる本殿はは静かでいて力強く、見ているだけでパワーを貰えそうでした。
こちらのお寺には他の寺院に類を見ないほど石仏もたくさんあり、様々な表情、立ち姿の仏様がズラッと立ち並ぶ様子は圧巻です。
金沢を一望できる絶景スポットとしても有名なこちらからの眺めも見逃せません。天気が良ければ日本海、金沢城に兼六園を望むことができ、今を生きる城下町を堪能していただけます。
その昔、寛政の大火で金沢城が焼失した際の火元はこちらの宝泉寺だったそうです。歩いて15分もの範囲に燃え広がったのは、こちらからお城まで町屋が連なっていたからなのでしょうか。
美しさだけでなく、金沢城までの当時の町を想像しながらこの景色を眺めると、いつもとは違う発見があるのではないでしょうか。是非、金沢の細路地や寺々にも注目しながら景色をお楽しみください。
風の音、鳥のさえずりだけが響き渡り、まだ観光客には知られぬ寺の山。
こちらには江戸から続く加賀百万石の歴史が色濃く残っています。
市民の愛する金澤の姿に触れながら、仏様と自身の心と向かい合う。
この「心の道」でそんな時間を過ごしてみるのはいかがでしょうか。