姫路城下・野里商店街で穏やかなひと時を かつて栄華を誇った町は今
姫路城から北東へ徒歩約10分。そこに野里商店街があります。
すぐ横の大通りから一本入るだけで、町の様子はがらりと変わります。
かつては姫路城下として、また鋳物の町として栄えたこの町は、今では古民家の立ち並ぶ静かな町になっています。
町全体にゆったりとした時間が流れ、その歴史、町並み、そして人は、私たちを日常の忙しい時間から連れ出してくれます。
歴史を感じるもよし。夫婦でのんびり過ごすもよし。自由気ままに一人旅もよし。
どんな人でも野里の町は暖かく迎え入れてくれます。
地元の人同士がすれ違うたびに、「おお!○○さん!最近絵は描いてるの?」というような会話が。
ご近所さんとのつながりが強い、まさに「古き良き町」の様子が野里にはありました。
今回はそんな魅力たっぷりの野里商店街についてお伝えします。
この記事の目次
大坂夏の陣 京都方広寺と野里の鋳物師たちとのつながりを発見!
姫路城が建てられる以前より、鋳物の町として栄えていた野里の町。
芥田家はここ一帯の鋳物師たちの元締めであり、ルーツは室町時代にまでさかのぼることができるといいます。
そんな芥田家は、歴史的に重要な人物とのつながりも多かったようで、所有物に太閤検地枡があります。
現物で残っているのは芥田家が所有しているもののみであり、国登録有形文化財に指定されています。
また、大坂夏の陣のきっかけとなった京都方広寺の梵鐘を手掛け、実質棟梁を任されていたのが芥田五郎右衛門であり、その功績を豊臣秀頼から認められました。
今でも五郎右衛門邸という町名が野里に残っています。
このように、野里には鍛冶町や鍵町など、鋳物の町らしい町名が多く残っています。これらを探してみるのも楽しいかもしれませんね。
壁には修復に使われた当時のチラシがそのまま残っています。
鋳物を作る過程で出るクズ。人々は家の塀に混ぜて使っていました。
甲冑師・明珍 虫籠窓(むしこまど)の円柱型格子のルーツとは?
古民家(町家)の作りは、間口が狭く奥行きが長い、うなぎの寝床という作りになっています。
これは家にかかる税金が間口の広さによって決まったからであり、京都の町家も同じ作りをしています。
玄関をくぐり、通り土間を抜けると、回遊式庭園という広い中庭があります。その先に蔵があるという作りです。
長いものでは敷地の奥行きが60メートル近くある家も。
虫籠窓が見られるのは野里だけではありませんが、格子が円柱型になっているのはこの地域だけのようです。
この円柱型の格子は、野里の甲冑師であった明珍に由来します。
姫路城から甲冑の注文がない時、甲冑師たちは他の物を作って商売をしていました。
明珍は鉄の棒を作っており、その棒に縄をまきつけ、上から土を塗り付けたものが格子として使われたため、野里の虫籠窓の格子は円柱型なのだそうです。
改修された格子は四角柱になっているものもあるので、見比べてみてはいかがでしょうか。
町家を楽しむ!ながーーい奥行きと小さな2階。商人は世渡り上手?
鋳物など商業で栄えたこの町にはお金持ちが多かったと言います。
その証拠に、壁が白漆喰で塗られている家をいたるところに見ることができます。
白漆喰は当時とても高価で、姫路城の壁に白漆喰が使われていたほどでした。
そんな中、道に面している部分だけ土壁を使っている家もちらほら。これはその家にお金がなかったのではなく、大名に目をつけられないための工夫だったのだとか。
土壁は、私はお金持ちじゃありませんよ~というアピールだったのです。
こちらも先ほどの土壁の家と同様、大名や偉い人に目をつけられないための工夫です。
道側の屋根を長く作ることで、2階を小さく見せる効果があります。でも実はこの2階、とても広いのです。
また、窓を低い位置につけることで、大名を窓からのぞくときに自然と頭が下がるようにという意図もありました。
身分相応に生きることが良しとされた時代、人々は工夫を凝らして上手に世を渡っていたようです。
古民家を改造!うどん屋麦 絶対試してほしい!人気の「噂の茄子」
うどん屋麦-BAKU-。
長崎県の五島列島で野宿をしながら修行先を探したという異色の経歴を持つ店主が、この古民家に一目惚れして買い取り、自ら1年かけて改修して建てたお店。
そんなとても楽しい店主とお話ししたいなら、カウンターがおすすめです。話が盛り上がること間違いなし。
店長さんの着ているおもしろTシャツにも注目です。
もちろんうどんの味も絶品です。
手打ちうどんは注文してからその場で打ち始めます。スープも店主が独自に編み出したもので、他のうどん屋さんに材料を話すと驚かれるのだとか。
そして麦でうどん以上に名物になっているのが、「噂の茄子」。
今まで数々の茄子嫌いを克服へと導いてきたそうです。何と言ってもオリジナルのたれの味が最高。
気になる方、ぜひぜひ足を運んでみてください。おいしいご飯と楽しい時間を求めるなら、ここ麦がぴったりです。
とんかつ朔 お肉も油もこだわった!姫路産豚肉・桃色吐息の豚かつ
とんかつ朔。
姫路産の豚肉「桃色吐息」を、健康に良い太白ごま油を使用した、こだわりの油で揚げた豚かつ。
国産豚も選べます。サクサクの衣に、ほんのり桃色の残ったお肉は甘くてとてもやわらかく絶品です。
まずは何も付けずに、それから塩、ソースを味わうのが店主のおすすめ。塩やソースを付けるときは、衣にではなくお肉に付けてほしいとのこと。
お味噌汁やご飯、突出しもついていて、いちばん少ない100グラムでも十分満足できます。
お店に入ると和やかな雰囲気の店主が迎えてくれました。コンテストでたまたま優勝してここにお店を出すことになったという店主。
野里の好きなところは、自分の子どもの頃にいた町と似た雰囲気を持つところだそうです。
ふんわりとした優しい方で、それがお店の雰囲気に表れていました。地元の食材とゆったりとした時間を楽しむならぜひ朔へ。
井原西鶴や近松門左衛門も注目!『お夏清十郎物語』 慶雲寺へもぜひ
粒餡がたっぷりつまった「清十郎もなか」と、生柚子ペーストを使用した「柚子もなか」が人気です。
笠型のもなかはこの地域に伝わる『お夏清十郎物語』に由来します。
物語は、商家で働く清十郎に、商家の主人の妹であるお夏が恋をして駆け落ちするが、
失敗した後、清十郎は死刑になり、お夏は狂乱してしまうというものです。笠型のもなかは、清十郎のかぶっていた笠を型取っているのです。
この物語は史実とされており、野里の慶雲寺には二人の供養塚である「お夏清十郎比翼塚」が残っていて、毎年8月には野里商店街にて「お夏清十郎まつり」が行われます。
井原西鶴や近松門左衛門にも取り上げられた『お夏清十郎物語』。名作ゆかりの地を訪れてみてはいかがでしょうか?
いかがだったでしょうか?
懐かしさと人々の暖かさが残る野里。
ぜひ一度足を運んでみてください。野里の町は、きっとあなたを優しく迎えてくれます。