~亀山市関町「桶重」~ 県指定伝統工芸品の「桶」の魅力に迫る旅
「桶」と聞くと、皆さんは何をイメージしますか。
今回は、1882年から「桶」を作り続ける三重県亀山市関町にある「桶重」を訪れます。
県指定伝統工芸品にも指定された、その「桶」とはいったいどのようなものなのでしょうか。
この記事の目次
重伝建 亀山関町で受け継がれる伝統工芸品「桶」の工房~「桶重」~
JR関駅からゆっくりと歩いて約8分。
重要伝統的建造物群保存地区の関宿の町並みにひっそりとたたずむ、「桶重」に着きました。
桶重の前に立って少し目線を上げてみると、瓦には「器」の文字が見えます。
外観から細部のこだわりを感じさせられました。
そっと扉を開けて中に入ってみましょう。
入って右側にはお土産用の鍋敷きや、花手桶などが置かれています。
奥には「三重県指定伝統工芸品」の盾も見えます。
そして左側は工房になっています。
全国から注文を受けた比較的小さい桶がこちらの工房で作られているそうです。
また、桶重で作られた桶以外の修理もされているそうで、普段目にすることのない珍しい桶の依頼もあるとのこと。
小さい桶を作る工房部分はガラス張りのため、外から作業されているところを見ることができますよ。
~亀山関町「桶重」の歴史は時代とともに~ 昔の写真で見る桶の種類
1882年創業の「桶重」。
今回は桶職人の服部健さんにお話を伺いました。
「私で四代目になります。」
と先代の写真を見せていただきました。
大きな桶の上で作業をされています。
「昔は京都の千枚漬けやお餅を作るときの大きな桶も多かったけど、今はこだわってるところ以外はみんなプラスチックやな。」
右上に足が付いた桶が見えます。
「これは、女性が髪の毛を洗ったりするのに使った桶や。今はシャワーとかあるけどなぁ、昔はそんなんなかったから。」
昔の桶の写真を眺めながら、時代の移り変わりを感じます。
そして、工房にあった桶を見せていただきました。
「これは、きつね桶言うんや。」
私はなかなか勘が鈍く、桶を見るだけでまったく名前の由来が出てきません。
「よう見てみ。ほれ、きつねの顔しとるやろ。」
なるほど。ここでまた一つの疑問が出てきました。用途です。
「他の桶と違って、きつね桶は先が曲がっとるやろ。昔はこれで醤油をすくったりしとったんや。」
「桶」と言っても様々な種類があり、それぞれ違った使い道があります。
歴史ある桶の世界を少し知ることができました。
~桶の命は組輪にあり~亀山関町「桶重」で桶に欠かせない組輪の実演
桶重四代目の服部さん。
桶の制作について詳しくお話をしていただきました。
「これが、桶で一番大事な【たが】、組輪や。」
「これを桶の外側にはめてしっかりと絞めると、固くなる。」
木の板をつなぎ合わせた桶にたがを付けることで、板同士をしっかりと結んでいるのです。
「この竹で作るんや。」
と組輪になる前の状態を見せていただきました。
触ると固く、これを編むという工程がまったく想像できません。
それを読み取ってしまわれたのか、服部さんがさっと竹を取り、作業台へ向かいました。
「ちょっとやって見せようか。」
と優しいお言葉に甘えて、一つ実演していただきました。
見事な職人技に圧倒されます。
竹を自在に操る姿はまさに職人。
ものの数分で完成しました。
「桶にしっかりはめ込んだら、簡単には取れん。」
はめられた組輪を手で押してもびくともしませんでした。
普通に売っている桶で、組輪が外れた桶の修理もされているそうです。
~明治から続く亀山関町「桶重」~ 受け継がれる職人の技と道具
続いて、桶の材料や工具などを説明していただきました。
「これは、桶作るときに使う4つの木の種類で、左からサワラ、杉、高野槙、ネズコ。」
近くに寄ってみると、それぞれ色や匂いの違いが分かります。
「サワラはお寿司のひつとか、杉は漬物とか味噌とかの漬け込むような桶に使ったり、桶によって変わる。」
桶の種類によって、木材もまた変わってくるのです。
工房の奥には、多くの工具が並んでいます。
かなり使い込まれていそうなものも見えます。
「これは、木の曲がりを見るやつや。」
「この上に明治って書いとるやろ。」
なんと、明治から使われている道具がありました。
こちらも実演していただきました。
一つ一つ曲がりを見て、かんなで削っていく。
職人の目と技がものをいいます。
本当に出来上がるまでのすべての工程が職人の手作業で作られるのを実感しました。
ぜひ一度「桶重」で職人が織りなす世界に一つだけの桶を手に入れてみませんか。
所在地 : 三重県亀山市関町中町474-1
桶重の「桶」を知る旅はいかがでしたか。
普段見ることのできない職人技は、実際に目の当たりにすると本当に圧巻です。
明治から続く技術で職人が一つ一つ手作業で生み出す、自分だけの桶をぜひ作ってみてください。