羽黒山の自然を堪能 一の坂から山頂「羽黒山合祭殿」までの道を辿る
西の伊勢参りに対して、東の奥参りと言われるほど、古くより信仰を集めて来た山形県の出羽三山。
今回は、出羽三山のうちの一つである羽黒山参道の途中、一の坂から山頂・三神合祭殿までを旅します。
この記事の目次
ミシュラン三ツ星に輝く壮大な光景 山深い羽黒山に続く美しき杉並木
国宝羽黒五重塔を過ぎるとまもなく、一の坂がはじまります。
羽黒山表参道には「一の坂」「二の坂」「三の坂」と呼ばれる、参道の中でも特に長くて急な坂が3つあります。
こちらの一の坂は他の二の坂と三の坂と比べて比較的緩やかで、登っていて多少息が上がるものの、周囲の景色や足元の山菜に目をやる余裕がありました。
石段や木々の根元のあちらこちらに苔が生えており、その鮮やかな緑色が目を引きます。
一の坂を上っている途中、「火石」と書かれたものを見つけました。
修験道では火は万物の基本で、最も重要とされる要素だといいます。
その昔、この石は光を放ち、麓がまだ浜だった頃に漁師が灯台の代わりに火石を頼りにしていたという言い伝えが残っているそうです。
そして、何といっても参道の中ではずせないのが、参道の両側に並ぶ羽黒山の杉並木です。
山深い自然に包まれた中、山頂まで続く表参道に沿って見渡す限り杉の木が立ち並ぶ光景は美しく、まさに絶景です。
樹齢350~500年の杉並木が580以上続き、これらは国の特別天然記念物に指定されています。
上を見上げると、太くてしっかりとした幾本もの杉の木が空に向かって真っすぐと伸びており、そのたくましさに生命力を感じます。
羽黒山杉並木は、その美しさからミシュラングリーンガイド・ジャポン三ツ星に輝いており、「わざわざ旅行する価値がある」と評価されています。
是非一度、実際に訪れてその美しさを体感してみてはいかがでしょうか。
所在地 : 997-0211 山形県鶴岡市羽黒町手向
羽黒山名物「力餅」 庄内平野を眺望できる二ノ坂茶屋でちょっと一息
一の坂を上り始めてから約20分、「二の坂」の道標が見えました。
二の坂は参道の中で一番急な坂と言われており、目先の参道を見上げただけでもその勾配さがわかります。
何でもこの二の坂は、武蔵坊弁慶があまりの勾配さに奉納する油をこぼしてしまったことから、別名油溢し(あぶらこぼし)といわれるそうです。
実際に上ってみると確かに一の坂より傾斜が大分急で、すぐに息が上がってしまいました。
訪れた時期が夏ということもあり沢山汗をかきながらも、登り切った先には参拝者に人気の二ノ坂茶屋がありました。
「二の坂は一番急な坂だ」と言われると、上るのがどれだけ大変なのかと覚悟してしまいますが、実は二の坂の登り口からこの茶店が見えるほど距離が短く、以外とすぐに登り切ることができました。
二の坂茶屋は、江戸時代、石段ができてから一番最初にできた茶店だそうです。
そしてお店の方が知る限り、以前は他に5軒ほど茶店があったそうですが、二の坂茶屋は最後に残った一軒だといいます。
二ノ坂茶屋の名物は、こちらの「力餅」。
お店には電気が通っていないため、何と90歳近いお店のおばあちゃんが毎日約5㎏のもち米を羽黒山の麓から背負ってきてお餅を作っているといいます。
毎朝臼でお餅をついているということもあり、しっかりとしたコシがあってとっても美味しいです。
お味は、あんこと黄な粉の2種類です。
黄色の黄な粉は珍しいですが、これは大豆本来の色味で、庄内でとれた大豆が原料の黄な粉だといいます。
風味も香りも良く、素材の甘みがでています。
また、お茶をいただきながら庄内平野を望むことができます。
訪れた日は雲がかかっていましたが、緑が綺麗な田園の先には日本海も見え、美しい景色に見とれてしまいます。
時折吹く風が気持ちよく、その居心地の良さに心が安らぎます。
沢山歩いた後は、こちらの二の坂茶屋で疲れを癒してみてはいかがでしょう。
所在地 : 997-0211 山形県鶴岡市羽黒町手向73-1
羽黒山山頂までもう一踏ん張り 最後の難所三の坂~格式ある斎館まで
二の坂を過ぎると間もなく、芭蕉塚(ばしょうづか)と御本坊跡(ごほんぼうあと)があります。
松尾芭蕉は「おくのほそ道」の旅で出羽三山に訪れた際、「涼しさや ほの三日月の 羽黒山」という句を残しています。
夏の夕暮れに羽黒山を登ってきたときに詠われた句で、日中の暑さが嘘のように去り、ふと振り返ると杉の木の間から三日月がすーっと輝いて見えたときの情景を表しています。
当時は今のように杉の木が植えられていなかったため、木の間から月を見ることができたそうです。
また写真中の鳥居の後ろには宿坊が建っていたそうで、昔は宿坊集落以外に山中にも30余りの宿坊があったといいます。
そして、いよいよ三の坂がはじまります。
ニの坂ほど急ではありませんが、距離が長いため三の坂が一番大変な箇所かもしれません。
参道を歩いていると、時折法螺貝の音が響き渡ります。
昔から修験道では法螺貝は欠かせないもので、魔除けや居場所の発信のために吹かれてきました。
いでは文化記念館では羽黒山のガイドツアーを行っており、法螺貝を持った山伏姿のガイドさんに羽黒山の魅力を教えてもらうことも出来ます。
こちらは1週間前に予約が必要なので気を付けてくださいね。
疲れながらも三の坂を登り切ると、ついに赤い鳥居が見えてきました。
山頂へ近づくほど気温が下がり、夏でも少しひんやりとした風が吹いてきます。
ここまで沢山汗をかきましたが、気持ちのいい汗をかくことができました。
三の坂を登り切ったところに、羽黒山斎館があります。
明治時代までは「華蔵院(けぞういん)」というお寺で、神仏分離の際に残された唯一の建物です。
こちらは市の有形文化財に指定されており、今もなお格式高い佇まいを残しています。
現在は参拝者の宿泊所、精進料理を味わえる食事処として多くの人々が訪れています。(要予約です)
斎館から見える庄内平野の景色は美しく羽黒山八景にもあげられています。
三神合祭殿を参拝する前に、こちらで伝統の精進料理と雄大な景色を味わってみてはいかがでしょう。
所在地 : 997-0211 山形県鶴岡市羽黒町手向羽黒山33
公式HP : 羽黒山参籠所「斎館」
東の奥参り「出羽三山」 古くより信仰を集める羽黒山三神合祭殿
鳥居をくぐると、羽黒山・月山・湯殿山の神を祀る荘厳な造りの「羽黒山三神合祭殿」が出迎えてくれます。
三神合祭殿は3つ全部一緒にお参りするのではなく、一つ一つ階段を上ってお参りするのが良いそうですよ。
昔、人々の間では「一生一度は伊勢参り」と言われていました。
しかしその当時はまだ交通の便が整っていなかったため、関東含む東北全体がお伊勢さんに行けなかった時代でした。
そんな時代、この出羽三山をお参りすればお伊勢さんをお参りしたことになるとされていたそうです。
西の伊勢参りに対して東の奥参りといわれるほど、出羽三山をお参りすることは人々に重要視されていました。
また、お伊勢さんは太陽の神である天照大神(あまてらすおおみかみ)を祀っているのに対し、月山は月の神である月読命(つきよみのみこと)を祀っています。
つまり太陽と月、陽と隠の関係であるというわけです。
今も「伊勢もうで 出羽まいる」という言葉が残っていますが、伊勢神宮と出羽三山には昔からそのような深い関係があったのですね。
山頂には、重要文化財に指定されている鐘楼と大鐘や末社など他にも見どころが沢山あるので、時間をかけて見て回ってみてはいかがでしょう。
所在地 : 997-0211 山形県鶴岡市羽黒町手向7番地 内
公式HP : 出羽神社(三神合祭殿)
一の坂から山頂までの道のりを辿ってきましたがいかがでしたか?
羽黒山には、ここではご紹介できなかった見どころもまだまだあります。
羽黒山の清らかな空気と美しい自然に包まれて、歴史ある史跡を辿る旅に出かけてみてはいかがでしょうか。