200年続く工芸品 宮島しゃもじをご紹介
木製しゃもじの生産日本一を誇る広島県宮島。
友人から宮島のお土産にもらったことがある方も、いらっしゃるかと思います。
今回は宮島におけるしゃもじの起源から、木製しゃもじの制作過程、魅力、買える場所まで一挙にご紹介します。
なぜ宮島は木製しゃもじの生産が日本一なのか
フェリーを降りて、厳島神社へと向かう表参道商店街には、土産物屋が立ち並びます。
そのほとんどの土産物屋で売られているのが、「しゃもじ」です。なぜ宮島でしゃもじなのでしょうか。
その謎を解くために、まずは宮島しゃもじの歴史を見ていきましょう。
いまから約200年前、宮島の光明院(こうみょういん)に誓真(せいしん)という僧がいました。
光明院は室町時代に創建された浄土宗のお寺です。古来より神聖な地と崇められてきた宮島には、主たる産業が存在しませんでした。そこで誓真は「宮島になにか産業を」と考えていたら、夢に弁財天が現れました。
誓真は弁財天の持っている「琵琶(びわ)」が目に留まります。そして琵琶に似た「しゃもじ」を神木で作ってみることに。その後、誓真は島民へ宮島参拝のお土産にしようと提案し、制作方法を教えました。
宮島のしゃもじは、神木から作られていることから、使えば「幸運・好運に恵まれる」と名声が広がっていきます。宮島のしゃもじが有名になっていくにつれて、しゃもじの生産も本格化していき、宮島の一大産業へと発展していきました。
戦時中には、しゃもじが「飯を取る」ことから「敵を召し取る」と言われ、縁起物としての人気が高まったそうです。現在販売されている、お土産用の飾りしゃもじには、「必勝」や「商売繁盛」といった筆文字が入れられていますよ。
宮島しゃもじはどうやって作られるのか 倉本杓子工場に潜入
宮島しゃもじの歴史を知ったら、次は宮島しゃもじの工場に潜入。
宮島しゃもじができるまで、を学びましょう。
今回訪れたのは、JR宮島口駅より徒歩約17分の閑静な住宅街にたたずむ「倉本杓子工場」(くらもとしゃくしこうじょう)です。こちらで生産されているのは、お土産用のしゃもじではなく、実用のもの。
すべての工程が手作業で行われ、まさに職人技が光る宮島の工芸品といえます。
倉本杓子工場でのしゃもじ制作過程を追っていくと、どれほどの技と手間が必要かがわかります。
【制作過程】
1.かんなで形をつくる:これが一番の難所。宮島しゃもじならではの「曲線」を出すのが難しいそうです。
2.やすりで磨き上げる:目が粗いやすりから細かいものまで6種類を使用。磨けば磨くほど艶が出てきます。
3.焼き印を押す:コテでひとつひとつ焼き印を押していきます。同じ濃さ、同じ位置に押す職人技。
こうしてできた倉本杓子工場のしゃもじは、ひとつとして同じものはありません。
木目や色味の違いはもちろん、使い込んでいくとさらに個性や味わいが増していきます。
現在、プラスチックを筆頭に合成樹脂の「便利な」しゃもじが人気となっています。
すくったときにごはんの量がわかるしゃもじや、くっつかないようにエンボス加工されたしゃもじ、立つしゃもじといった、「道具」としての便利さを追求したもの。
もちろん現代社会のニーズにあったものばかりですが、あくまでも「道具」で愛着がわくようなものではないと思います。
一方倉本杓子工場でつくられた宮島しゃもじは、使えば使うほど味が出てくることから愛着がわいてくるのです。
お値段は1000円台からと、リーズナブル。
企業やお客様の用途に合わせてつくるオーダーしゃもじや、ノベルティ商品の開発なども手掛けていらっしゃいます。
最後に「米離れなどの食文化の変化や、時代のニーズに合わせていかに新しいものを取り入れつつも、伝統の文化を残していくかを日々考えています」と教えてくださいました。
時代の流れとともに姿を少しずつ変えながらも、伝統を守る倉本杓子工場。
ぜひ伝統の技をご家庭でお楽しみいただけたらと思います。
所在地 : 広島県廿日市市深江1丁目1-18
公式HP : 倉本杓子工場
お土産にオススメの文字入りしゃもじを買うなら 杓子の家へ
倉本杓子工場のしゃもじと合わせてご紹介したいのが、お土産用の筆文字入りしゃもじを取り揃える「杓子の家」です。
宮島の表参道商店街に位置し、店前の商品台にはしゃもじがズラリと並びます。
筆文字入りのしゃもじは、ひとつひとつ手書きで文字入れをされています。書かれている言葉は、鉄板フレーズから、かなりユニークなものまで。「◯◯バカ」や「一◯入魂」などは、送る相手を考えながら選べて、選ぶのも楽しいですね。
またサイズも豊富で、応援用の特大サイズ、使うこともできる通常のサイズ、小さな根付サイズなどがあります。キーホルダーにできる根付のものが、お土産に人気だそうです。
オーダーメイドも承っており、披露宴の引出物やファーストバイト、定年祝などの注文が多いのだとか。
なにか記念日や特別な日には、オーダーメイドもいいですね。
ひとりの僧から生まれた宮島しゃもじが、約200年続く伝統工芸、そして人気の土産物になりました。
使えば使うほど味が出る、木のしゃもじの魅力を伝える、倉本杓子工場に、ユニークな商品が多い杓子の家。
宮島観光のお帰りには、ご家庭用に、お土産用に、しゃもじをじっくりと選んでみてはいかがでしょうか。