竹原瀬戸内海に浮かぶ大久野島 芸予要塞からうさぎ島へ転換の謎
700羽のうさぎが住み、広島県竹原市に属するリゾート島として人気の大久野島(おおくのしま)。
周囲4.3キロメートルの瀬戸内海に浮かぶ小さな島には、ゆったりとした時間が流れています。
しかし反面に毒ガス島として地図から消えていた過去もあります。
うさぎ島として再出発した大久野島の秘密を紐解きましょう。
この記事の目次
人懐っこさに癒されるひととき 竹原大久野島のうさぎが増えた謎とは
忠海港からフェリーに乗り、約15分で到着する大久野島を訪れました。
大久野島は日本中世の瀬戸内海で活動した村上水軍の末裔が住んでいた島としても知られています。
また松の木が多いことから松茸が取れ、浜はさざえや貝などが豊富に取れ、農作物がよく育つ平和な島だったといいます。
日清戦争後に軍都広島と軍港呉を守るため周囲の島々や岬には要塞が築かれた際、大久野島にも1902年に砲台16門が設置されました。
そんな要塞としての過去をもつ大久野島ですが、いまでは上陸すると迎えてくれるのは沢山のかわいらしいうさぎたち。
どのウサギも本当に人懐っこく、すぐに足元に近寄ってきてくれ、前足を上げて愛らしい表情を見せてくれます。
ゆったりとした時間が流れ、過去の暗い歴史を一見感じられません。
大久野島散策の道中では、たくさんのウサギと触れ合うことができます!
そもそも、いつから大久野島はウサギの島になったのでしょう。
これには所説ありますが、戦後に地元の小学校で飼われていた数匹のウサギを大久野島に放したのが始まりとされています。
ウサギはストレスに弱いので、追いかけまわしたり、抱っこすることはルール違反とされています。
しかし、忠海港のフェリー券売所で専用のエサが販売されているので、ウサギとの触れあいを楽しむこともできます。
本来は毒ガスの実験の島としての機能を持っていた大久野島。
なんと1945年頃に、GHQによってガスの除毒処理をした後の大久野島は、荒れ果て生物が住み着くことができる状態ではありませんでした。
その状況下の中、700羽になるまで繁殖することができたその繁殖力をもってしてうさぎ島となったのです。
また、ウサギだけでなく、島から眺めることができる瀬戸内海の美しい景色にも心を癒されました。
季節によって、花々を楽しむこともできるので、一年を通して訪れることができます。
元陸軍の要塞としての機能をもつ広島竹原の大久野島 遺構を巡る旅
大久野島は、国民休暇村に選定されています。
国民休暇村とは、国立公園や国定公園の集団施設地区に設置された総合的休養施設です。旧厚生省により、1961年度から整備が始められました。
島にある複合施設の休暇村では、レンタサイクルを借りることができます。さっそくレンタサイクルで大久野島を散策します。
自転車で走ること約10分。
少し急な坂を上ると、「北部砲台跡」にたどり着きます。
北部砲台跡は、日露戦争開戦前の1902年に設置されました。
大久野島は、芸予要塞(げいよようさい)といい、忠海海峡と来島海峡の間に設置された陸軍の元要塞でした。
当時は、島の北部・中部・南部の3箇所に、合計22台の大砲が置かれており、その一部が今も遺構として残っています。
毒ガスタンクが置かれていた台座、12cm速射カノン砲が設置されていたという跡地などが細かく残されています。
のどかな島に、要塞としての過去があったことに驚き、歴史を体感することができました。
広島県大久野島 散策は歴史発見の連続!軍事上重要だった秘密を体感
先ほどの北部砲台跡から、さらに自転車で約10分ほどのところにある「火薬庫跡」も訪れました。
砲台の弾薬や火薬を保管するために作られた倉庫です。
火薬庫の標識から徒歩で約2分ほど、島の内部へ入った場所にあるため、探検するような気分で歩みを進めました。
火薬庫の前には人工的に盛土がされていて、海や対岸から倉庫が見えないようになっていました。
現在は周りの壁だけが残っていますが、屋根は万が一火薬が爆発したときに、爆弾が抜けるよう簡単に作られていたそうです。
朝鮮戦争時に米軍が弾薬庫として使用した倉庫も残っていました。
MAG2やMAG1の文字がところどころに残っています。
これは、MAGAZINE1の略で、MAGAZINEとは軍用の弾薬庫を意味します。
今は穏やな南国の雰囲気さえ感じられる大久野島に、忘れてはならない戦争の歴史を学ぶことができました。
所在地 : 広島県竹原市忠海町大久野島
四季折々の自然を感じながら、可愛らしく駆け回るウサギと触れ合うことができる大久野島。
戦争当時の様子を伝える遺構と、現在に流れる平和な時間とのギャップが、歴史を知ることの大切さを教えてくれているようです。
ウォーキングでは約70分、サイクリングでは約30~40分で楽しむことができる大久野島をぜひ訪れてみてください。