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奇跡の復活を遂げた!北野異人館のシンボル「風見鶏の館」

  • 兵庫県神戸市にある歴史的な多くの異人館を有するまち、北野。そんな北野の異人館の中でも最も有名な異人館の一つが、NHKの連続テレビ小説で一躍注目を集めた風見鶏の館です。
    今回はその風見鶏の館の歴史や魅力に迫ります。

     

    波乱万丈!ドイツの貿易商人トーマス一家と風見鶏の館の歴史とは

     

     

    <01_kitano:外観の写真>

     

    風見鶏の館を建てたゴットフリート・トーマス氏は、ライン河沿いにあるドイツ・コブレンツというまちで生まれました。20歳の時に来日して横浜で貿易の仕事を始めます。
    地元が同じであったクリステルさんと結婚し、二人の間に一人娘であるエルゼさんが誕生します。10年余り横浜で過ごした後、神戸に移住しました。

     

     

    トーマス氏が住宅を建てようとしたところ、当時の北野には既に多くの外国人の邸宅があり、広い場所がなかったようです。そのため、池を埋め立て、その場所に建築をしました。その名残で風見鶏の館の前は窪地で、現在は階段のついた公園になっています。
    そして1905年頃にトーマス氏の個人住宅として風見鶏の館が完成しました。設計者は三代目のオリエンタルホテルなどを手がけたゲオルグ・デ・ラランデ氏です。

     

     

     

    <04_kitano:公園の写真>

     

     
    門には「レナニア」と書かれています。レナニアとは、トーマス氏の出身であるライン河周辺のことを指しているそうです。当時トーマス氏は出身地にちなみ、レナニア合資会社を経営していたこともあり、門にこの「レナニア」の文字が書かれているのです。

     

     

    <06_kitano:ジトーマスの表札>

     

     

     

    <07_kitano:風見鶏の館の門の写真>

     

     

    1914年に一家は数ヶ月の予定でドイツに一時帰国をしました。その後第一次世界大戦が勃発し、一家は日本に戻ることはなく、消息は不明になってしまい、トーマス邸は取り壊しの危機もありました。
    しかし、1977年に転機が訪れます。NHKの連続テレビ小説「風見鶏」が放映され、瞬く間に人気になったのです。
    そこで神戸市は風見鶏の館を観光のために活用することを決めました。そのことをドイツで知ったエルゼ・カルボー(旧姓エルゼ・トーマス)婦人が幼少の頃に過ごした家だと申し出たのです。

    <09_kitano:エルゼ婦人の写真>

     

    そのために、館内には当時のお部屋の写真や住まれていた頃のトーマス一家の写真がたくさん並べられています。
    風見鶏の館は当時とほぼ同じ内装であり、詳しい歴史が判明しており、今でもこうして保存されている数少ない異人館です。これは「トーマス氏が貿易商であり多くの写真を撮っていたこと、『風見鶏』が放映されて注目を集めたこと、エルゼさんが申し出てくださり写真提供してくださったこと等の偶然が重なったおかげです。」と副館長の明星さんは仰っていました。

     

     

    部屋ごとに異なる趣き ショールームと迎賓館を兼ねた風見鶏の館1階

     

    それでは風見鶏の館の館内を見ていきましょう。

    まずは1階です。

     

    <11_kitano:1Fホールの当時の写真>

     

    玄関ホールを囲むように各部屋があるつくりになっています。

     

    <12_kitano:食堂の写真>

     

    食堂であったお部屋はドイツのお城のような城館風のつくりになっています。壁の飾りは城壁をイメージしています。

     

    <15_kitano:シャンデリアの写真>

     

    シャンデリアの上には王冠がデザインされています。この食堂は重厚で華やかな内装が特徴です。書斎には、エルゼ婦人が寄贈してくださった当時使用されていた家具が展示されています。

    この机とテーブルは中国風の彫刻が特徴的ですが、日本製であるそうです。

     

    <16_kitano:書斎の椅子机の写真>

     

    通常こうした家具には通し番号が振られているそうですが、こちらには見られないため、ショールームのためのサンプル品だったのではと推測されます。

    このついたてやソファも当時のものです。

     

     

    <18_kitano:ソファの写真>

     

    この飾りはアール・ヌーヴォー調で、フランスの有名な画家のロートレックの影響を受けて描かれてた風刺画です。裏にも同じように描かれていますが、この絵の意味については現在研究中であるそうです。

     

    <19_kitano:飾りの写真>

     

    このように凝ったつくりのドアノブもあります。

     

    <20_kitano:ドアノブの写真>

     

    このように1階は、お部屋ごとにテーマがあり、非常に華美で意匠を凝らしています。また、生活しやすさよりはパーティーを催すのに適したつくりです。

    これはトーマス氏が貿易商のお仕事をしていたため、この館の1階をショールームや迎賓館のようにして使っていたからではないかということです。

     

     

     

    抜群の眺めが望める 実用的な生活のスペースだった風見鶏の館2階

     

     

    それでは次に階段を上り、2階のお部屋を見ていきましょう。

     

    <21_kitano:2階のホールの当時の写真>

     

    1階と同じくホールを中心に各部屋があるつくりになっています。当時はホールの真ん中にビリヤード台がありました。

    現在、ビリヤード台はありませんが、ビリヤード専用のライトはそのまま使用されています。

     

    <22_kitano:ビリヤード照明の写真>

     

    先ほどの凝ったつくりのドアノブと違ってシンプルなつくりのドアノブです。

     

    <23_kitano:ドアノブの写真>

     

    こうしたドアノブやドアの細工、照明などから、2階は1階とは打って変わって簡素で住みやすそうなお部屋です。ここからドイツの方の堅実な性格がうかがえます。

    エルゼさんが当時使用しており、この館で最も広いお部屋です。トーマス氏はかわいい一人娘のために大きなお部屋を用意したのでしょうか。

     

    <24_kitano:子ども部屋の写真>

     

    東向きに窓がついている、朝食の間と名づけられた部屋です。とはいえ、朝食時以外にも使用されていたそうです。

     

    <25_kitano:朝食の間の写真>

     

    夫婦の寝室であったお部屋ですが、現在はお土産物屋さんになっています。このお部屋の壁紙は当時のままのものが残されている貴重なものです。

     

    <26_kitano:夫婦の寝室の写真>

     

    こちらはベランダの窓ガラスです。直接目で見ると少し波打っており、ゆがんだガラスであることがわかります。これは当時と同じ窓ガラスがそのまま使われているからです。

    この頃の窓ガラスは技術が未熟で真っ直ぐにできなかったそうです。

     

    <27_kitano:ベランダ窓ガラスの写真>

     

    ベランダからは港の様子などを見ることができます。

     

    <28_kitano:ベランダの写真>

     

    また、他の異人館が門前からは見えにくい構造であるのに対し、この風見鶏の館は見えやすいようになっています。この見渡しやすく、見られやすいつくりは、貿易のお仕事のためだったようです。ここでトーマス氏はこの館から港の様子を確認したり、周囲の人々からショールームをしている家だとわかりやすくしたかったのでしょう。

    風見鶏の原寸大のレプリカが館内に飾られています。風見鶏には風向きを知る役目だけでなく、魔除けの意味などもあったそうです。

     

    <29_kitano:風見鶏のレプリカの写真>

     

    しかし、周囲から目立つ家にしたかったトーマス氏なので、ランドマークのような意味合いもありそうです。トーマス一家の歴史を踏まえたうえであると、風見鶏の館を今までとまた違った視点から見ることができ、より深く知ることができます。

     

    所在地 : 兵庫県神戸市中央区北野町3-13-3

    http://www.kobe-kazamidori.com/kazamidori/

     

     

     

    今回は北野の有名な異人館である風見鶏の館をご紹介しました。
    館内を見学したことのない方は、ぜひ風見鶏の館で歴史を感じてみてはいかがでしょうか。
    また、館内見学をされたことのある方でも、イベントで普段は入れない屋根裏部屋や地下のお部屋に入る機会がありますので、ぜひ足を運んでみてください。

     

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