国宝の梵鐘・巨大な仏像がズラリ 九州寺院の中心・観世音寺を訪ねる
ここ福岡県太宰府市は古来大宰府政庁がおかれ九州政治の中心でありましたが、同時に大陸文化受容の最先端でもありました。
創建当時、奈良の法隆寺と規模を競ったとも言われる観世音寺へ、その仏教芸術の粋を訪ねていきます。
この記事の目次
全仏像が重要文化財 仏教芸術の殿堂である観世音寺宝蔵に行ってみよう
観光バスまほろば号に乗り、「観世音寺」を降りると北に道が伸びています。
道を辿っていき約2分、右手に観世音寺(かんぜおんじ)宝蔵が見えました。
中に入ると圧倒されるスケールの仏像がずらりと並んでいます。
四方から仏像に見つめられているとなんとなく身が引き締まる思いがします。
最も大きな仏像はこちらの馬頭観世音菩薩立像(ばとうかんぜおんぼさつりゅうぞう)。
その高さは5.03mにもなります。
驚くべきは、この並んでいる仏像や四天王像、狛犬は全て国の重要文化財に指定されていることです。
さらに講堂に安置されている現本尊、九州国立博物館にある阿弥陀如来立像も加えると、実に観世音寺に所蔵されていた18体が重要文化財ということになります。
仏像の他にもこの宝蔵には地方寺院としては稀有な史資料が多数保存されています。
古都太宰府の歴史を宗教の側面から辿ってみませんか?
所在地 : 観世音寺宝蔵 福岡県太宰府市観世音寺5丁目6−1
http://www.dazaifu.org/map/tanbo/tourismmap/4.html
日本の音風景100選にも入る日本最古の鐘声 国宝の梵鐘を見る
観世音寺宝蔵を出て、約1分直進すると木々に囲まれた中に鐘楼が見えてきました。
京都妙心寺の兄弟鐘と言われるこの梵鐘は日本最古のものとして国宝に指定されています。
火災や台風によって多くが失われている観世音寺(かんぜおんじ)の中で、この梵鐘のみが唯一創建当時の姿をとどめています。
その音色は約1300年前と変わらずこの太宰府のまちに響いており、日本の音風景100瀬にも選ばれています。
菅原道真も左遷された当時、榎社にてこの観世音寺の鐘の音を聞いたと言われています。
曰く、
「都府楼は纔(わず)かに瓦色を看る観音寺は唯(ただ)鐘声を聴く」
と詠みました。
地元の方によれば、数十年前までこの梵鐘も柵に囲われることなく普通に触ったりできたそうです。
文化財としての重要性だけでなく、この地の人々にとってその鐘声がどう聞こえていたのか、そんなことを考えさせられる旅でした。
観世音寺梵鐘 所在地: 福岡県太宰府市観世音寺5丁目6−1 観世音寺内
http://www.dazaifu.org/map/tanbo/tourismmap/4.html
『源氏物語』にもその名が登場した観世音寺 その講堂と金堂を訪れる
鐘楼を後にしてさらに約2分行くと、講堂・金堂が置かれる広場に出ます。
現在の講堂は江戸時代当時の藩主黒田光之によって再建されました。
装飾に鬼瓦が見られます。
こちらの金堂は講堂よりも50年程前に同じく当時藩主黒田忠之によって建てられたそうです。
この観世音寺は斉明天皇の冥福を祈るため天智天皇により発願され、聖武天皇の時代に完成されました。
当時その大きさは奈良の法隆寺と規模を競ったとされ多くのお堂が立ち並んでいたそうです。
しかし、度重なる災害と律令体制の崩壊によって、今日では講堂と金堂の二堂が残るのみとなりました。
涼しく静かな境内では、その後太宰府の町の中で観音寺として根付いてきた観世音寺の歴史を肌で感じることができます。
観世音寺 所在地 : 福岡県太宰府市観世音寺5-6-1
http://www.dazaifu.org/map/tanbo/tourismmap/4.html
番外編 重要文化財・廬舎那仏を本尊とする戒壇院にも足をのばす
観世音寺の南西には元々観世音寺の境内に位置した戒壇院(かいだんいん)があります。
奈良時代、日本仏教の質を向上させるため唐の僧・鑑真が招かれました。
彼は五度の失敗を経て日本に来日し、東大寺に戒壇を設け戒律を伝えました。
後に地方出身者のために設置されたのが栃木県下野薬師寺(しもつけやくしじ)とこの筑紫観世音寺に設置された東西の戒壇です。
現在は観世音寺を離れ臨済宗の寺となっています。
本尊は重要文化財でもある廬舎那仏(るしゃなぶつ)で、声をかければ見学することも可能です。
境内には鑑真が植えたとされる菩提樹もあり、観世音寺とはまた違った静けさが感じられます。
観世音寺が九州寺院の中心であったことが伺える戒壇院、観世音寺と共にぜひ訪ねてみてください。
戒壇院 所在地 : 福岡県太宰府市観世音寺5丁目7−10
http://www.dazaifu.org/map/tanbo/tourismmap/5.html
音で、美術でその歴史を伝えてきた観世音寺。
宗教芸術や信仰といったまた違った角度からこのまちが九州において占めてきた位置を知ることが出来ました。
歴史ある寺院独特のその静けさは、自然の中でゆっくりと思いをはせたい方におすすめです。