雲仙で感じる 長崎から始まった西洋文化と古き良き日本文化の融合
鎖国政策をとっていた江戸時代に、海外との貿易が行われていた長崎県。
今回訪れた長崎県・雲仙には、鎖国時代に日本に入ってきた西洋文化を学べる美術館や日本の温泉地ならではの銘菓・昔懐かしの遊びについて知ることができる名所があります。
九州温泉コンテスト2016でも1位に輝いた雲仙の魅力を紹介します。
この記事の目次
華々しき西洋文化の伝来 九州随一!雲仙ビードロ美術館を訪れる
島鉄バスで雲仙お山の情報館停留所下車、徒歩約2分の雲仙ビードロ美術館を訪れました。
今回はビードロ美術館の支配人・生駒さんに館内を案内していただきました。
今でこそ、私たちの日常生活で当たり前に使っているガラスですが、ヨーロッパから伝来したガラスはそのほとんどが長崎県の出島から入ってきたと言われています。
そんな長崎は日本のガラスの発祥地でもあります。
入口に展示されている大正時代につくられたかき氷用の「氷コップ」。
レトロで懐かしい風合いが素敵です。
大正時代にバラエティーに富んだ器が続々と誕生したことは、世界のガラス工芸史にも類例がなく日本近代史が生んだユニークなガラス器となっています。
しかし、このような日本独自のガラス文化が生まれるまでには、長い歴史がありました。
「ビードロ」とは、ポルトガル語でガラスを意味し、「ギヤマン」とも呼ばれました。
ビードロは南蛮貿易時にポルトガルから輸入されたタバコや葡萄酒などとともに日本に入ってきましたが、日本に着くまでに様々な経由地があったことからも時間と船の燃料を要したため、当時は財力のあるごく限られた大名たちしか手にすることはできないとても高価なものでした。
貴重な高級品から現代の私たちの日用品へ 長崎から始まった歴史
当時いかにビードロが高価だったかを物語るのは、この写真左側にあるジンボトルです。
私たちが見ると何の変哲もないボトルかもしれませんが、実はこのボトルは長崎を訪れた西洋の船員たちが海辺に捨てたボトルだそうです。
捨てられたガラスボトルを思わず拾うほど、ガラスがなかなか手にできないものだったことがよく伝わってきました。
館内をめぐると時代の変化しながら洗練されてきた美しいベネチアンガラスやボヘミヤンガラスなど、アンティーク品を楽しむことができます。
幕末から電気の普及へと時代が移るまでに使われた、日本の和室に合う和のオイルランプもありました。
これらも昔は裕福な商家などでしか取り入れられなかったのでしょう。
ポルトガル人が長崎で伝えたガラス製法は、長崎から大坂・江戸へと伝わり、ガラス表面にカッティングを施す江戸切子(えどきりこ)など現代につづく高い技術が発展していくこととなりました。
明治時代以降、安いガラスが日本国内で流通するようになり、手に入れられないほど高価なものである認識を持つ人は今は少ないかもしれません。
支配人の生駒さんは、「それでも、ガラスのように堅い素材に繊細な細工を施すのは大変な作業で簡単につくれるものではない」とその魅力を語ってくださいました。
私たちの日常に溶け込むまでにあった長い歴史に、当たり前のものは一つもないと感じる時間を過ごすことができました。
雲仙ビードロ美術館 所在地:長崎県雲仙市小浜町雲仙320
夢とロマンが詰まった雲仙のおもちゃ博物館 遊び心が弾むひととき
続いて訪れたのは、雲仙ビードロ美術館から徒歩約8分、島鉄バス雲仙停留所からは徒歩約1分の「雲仙駄菓子屋・おもちゃ博物館」です。
入口からガラス戸の中を少し覗くだけでも、早く入ってみたい!とわくわくしてきました。
1階は昔懐かしの駄菓子屋になっていて、今では珍しくなったアタリクジや所狭しと並べられた駄菓子を買うことができます。
レジの横にある料金箱に200円を投入すると、仕掛けが動き出し遊び心満載!の博物館入口。
2階の展示室に上がると、そこは夢のような空間でした。
1945年以降、駄菓子屋に並んでいたおもちゃなどが約5000点以上も展示されており、今にも動き出しそうな雰囲気です。
昔遊んだブリキのおもちゃやリカちゃん人形、セルロイドのお面、メンコ、ステッカーなどなど、懐かしい世界観に心が躍り幼い頃の思い出がよみがえってきました!
懐かしのおもちゃで遊ぶこともできるので、おもちゃ博物館を訪れた際は童心に返って楽しんでみてください。
おもちゃ博物館 所在地:雲仙市小浜町雲仙310
今も昔も変わらない製法を守り続ける 優しい味わい雲仙湯せんぺい
最後に、雲仙停留所から歩いてすぐの「遠江屋本舗」(とおとうみやほんぽ)を訪れました。
温泉街を訪れると不思議と食べたくなる素朴な銘菓と言えば、湯せんぺいではないでしょうか。
ここ遠江屋本舗では、雲仙名物の手焼き湯せんぺいを楽しむことができます。
「せんべい」ではなく「せんぺい」と呼ばれているのは、方言だそうです。
素材にこだわって1枚1枚手焼きでつくられる湯せんぺいは、土日であれば9:45頃から焼きたてをいただくことができます。
シンプルなお煎餅に見えて、ガス釜の火入れから焼きつけまで実はとても手がかかる湯せんぺいは、週末で300枚ほどが製造の限度だそうで、すぐ売り切れてしまう日もあるそうです。
軽やかな口当たりで、ほんのり甘い湯せんぺいは何枚でも食べられる美味しさでした。
3~5月と9~11月の期間限定・要予約(1,000円)で湯せんぺいの手焼き体験も出来るそうです。
焼き立てが一番!と笑顔で仰るあたたかいお店に、是非足を運んでみてください。
遠江屋本舗 所在地:雲仙市小浜町雲仙317
私たちにとって身近なガラス製品の歴史や、古き良き日本の文化・伝統を感じていただけましたか。
今回紹介したビードロ美術館やおもちゃ博物館、遠江屋本舗以外にも沢山の名所がある雲仙を是非訪れてみてください。