国の重要伝統的建造物群保存地区 美山のかやぶき民家について知る
「美山かやぶきの里」のシンボルであるかやぶき民家。
どのような作りになっているのか。
基本的な構造の仕組みから、保存・維持の仕方、工夫。
さらには防災的な観点から設置された「放水銃」。
これら全てがかやぶき民家を作る上で欠かせないものです。
京都府南丹市美山町に残る国が誇る重伝建を巡ります。
この記事の目次
美山の茅葺民家の構造に迫る!普段見ることができない裏側を探検
JR山陰本線の日吉駅(ひよしえき)から南丹市営バスに乗ること約50分、かやぶきの里にやってきました。
美山のかやぶき民家は北山型と言われる作りをしています。
北山型の主な特徴は、山村の農家住宅で
入母屋造り
土間は上げ庭で狭い
中央の棟木の筋で部屋を分ける
板壁、板戸
などの大きく4つの特徴があります。
実際に見学した際に感じた特徴はもっとたくさんありました。
壁や戸は全て木でできており、家内の庭は「上げ庭」と呼ばれ、外より一段高い作りになっています。
屋根の上には千木(馬のり)が5本、もしくは7本、雪割り(烏どまり)という木がクロスされ、屋根の下地で八の字型に組み合わせた丸太(たる木)があります。
夏は風通しが良く、冷房が入らないほどだそうです。
玄関の横にうまやを設け、牛を飼っていたそうです。
当時使用されていた備品も見ることができます。
また、各家には一家の称号である「屋号」が表示されています。
茅葺屋根の保存・維持を学ぶ旅 受け継がれ続ける美山の茅葺屋根
かやぶき屋根の保存・維持方法とはどのようなものなのでしょうか。
かやぶき屋根の暑さは約35センチ。
それが時が経つにつれ25年で10センチほどにすり減ってしまいます。
昔は室内の囲炉裏で日を焚き、屋根の中の虫を殺していたので、屋根の寿命は材料によって変わりますが、約45年ほどだったそうです。
すり減った屋根は表面に凹凸があり、苔が生えます。
かやぶきの里では、25年〜30年ごとに2件ずつ、傷んだ箇所をかやぶき職人さんによって葺き替えするそうです。
ちなみに茅とは屋根を葺く草の総称のことで、茅という植物はないそうです。
茅の材料には、すすきの他に葦(ヨシ)、かりやす、かるかや、しまがや、ちがや等のイネ科の多年草が使用されます。
美山の茅葺集落を守る仕組みとは 一家に一台ある放水銃と放水日
かやぶき民家の課題として消防対策が挙げられます。
類焼を防ぐために、一家に一つ放水銃が設けられています。
そして毎年、5月20日と12月1日の13時30分から、地域住民の火災予防として、かやぶきの里内では放水銃の一斉放水が行われます。
もともとは、放水銃の点検のために行っていたので時間などは一般には公開されていなかったそうですが、今ではこの一斉放水を見るために、たくさんの人々がかやぶきの里に訪れるようになりました。
国の文化財であるかやぶき民家を守るためにこうした取り組みが行われています。
こうして先人たちが紡いできた茅葺の民家を守る活動を現代まで紡ぎ続ける、美山町北の人々の想いを感じました。
ぜひ年に二回の一斉放水に訪れてみたいと感じました。
ぜひ美山の集落の人々が様々な工夫をこらし、守り続ける美山の「かやぶきの里」に訪れてみてはいかがでしょうか。
人々の知恵や工夫がつまった美山のシンボル、かやぶき民家。
写真では見たことがあっても屋根の構造にや、維持の方法、また防災的な取り組みなど、違った角度からかやぶき集落を見つめてみるのもオススメです。
実際に、自分の目で確かめてみるといろんな発見があるかもしれませんよ。