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過去・現在・未来 三世の安穏を祈る 滋賀県「甲賀三大佛」を巡る旅

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    滋賀県甲賀市と聞くと、甲賀流忍者や信楽焼などをイメージされる方が多いかと思います。
    今回は甲賀の新たな魅力「甲賀三大佛」をご紹介します。
    甲賀市内にある、十楽寺(じゅうらくじ)・櫟野寺(らくやじ)・大池寺(だいちじ)の3つのお寺に安置されている大仏と出会い、過去・現在・未来に思いを馳せてみましょう。

     

     

    過去の悪行もすべて包み込む 甲賀三大佛 丈六阿弥陀如来座像<写真01_alt:十楽寺 案内>

    <写真02_alt:十楽寺 外観>

    甲賀三大佛のひとつ「丈六阿弥陀如来座像(じょうろくあみだにょらいざぞう)」を安置する十楽寺。
    平安時代から室町時代にかけて造られた仏像、「なんでも相談室」という予約制のお悩み相談を受けられるサービスもあります。

     

    十楽寺はもともと織田信長の戦火によって消失した、天台宗のお寺がはじまりとされています。1661年から巡化僧広誉可厭大和尚が、浄土に往生するために「南無阿弥陀仏」とただひたすら念仏を唱える「専修念仏」を提唱しようと考えました。
    多くの人々の力を借りて、本堂や茶所を設け「清浄山二尊院十楽寺」として開創しました。また十楽寺六世 寂誉上人(じゃくよしょうにん)は、江戸時代を代表する呪術師とも言われる祐天上人(ゆうてんしょうにん)の兄弟弟子であったそうです。
    現在は京都にある、浄土宗総本山知恩院の末寺となっています。開運祈願・病気平癒・厄除け・縁結びなどのご利益があります。

     

    本尊は甲賀三大佛である、日本最大級の丈六阿弥陀如来坐像。丈六とは仏像の背丈を表しています。
    仏は身長が1丈6尺 (約 4.85m)であると伝わり、仏像は1丈6尺 を基準に造られています。
    坐像は座っているため、半分の8尺 (約2.43m)です。
    阿弥陀如来は、仏教における聖域・西方極楽浄土(さいほうごくらくじょうど)の教主で、無量寿仏(むりょうじゅぶつ)・無量光仏(むりょうこうぶつ)とも呼ばれています。
    たとえ悪行をした者でも救ってくださる仏様で、極楽往生のご利益があります。丈六阿弥陀如来坐像の前で、過去の過ちや悪行を反省し、心新たにしましょう。

     

     

    過去の悪行もすべて包み込む 甲賀三大佛 丈六阿弥陀如来座像

     

     

    <写真05_alt:櫟野寺 外観>

     
    十楽寺から車で約15分のところに位置する櫟野寺(らくやじ)。
    天台宗の寺院で、宝物殿には国重要文化財に指定された20体の仏像が安置されています。

     

    櫟野寺の歴史は平安時代に遡ります。792年最澄が、比叡山延暦寺「根本中堂」を建てるための用材を探しに甲賀を訪れていました。
    そのときに最澄は悪夢を感じて、櫟(くぬぎ)に一彫りしては三度礼拝する「一刀三礼(いっこくさんらい)」をしながら、彫刻していきました。
    そうして日本最大坐仏・十一面観音菩薩を完成させ、安置したのがはじまりです。802年には鈴鹿山山賊追討の任についていた坂上田村麻呂が祈祷に訪れ、無事に平定。そのことがきっかけで、坂上田村麻呂は櫟野寺を祈願寺とし、806年に七堂伽藍を建立・毘沙門天の尊像を彫刻・国技の相撲を奉納するなどしました。
    現在も相撲は秋まつりで奉納されており、約1200年続く伝統行事となっています。

     

    甲賀三大佛となっているのは、木造薬師如来坐像。
    平安時代後期の制作と伝えられ、複数の木材を合わせてつくる「寄木造(よせぎづくり)」が用いられています。大きさは「周丈六」と呼ばれるもので、十楽寺で出てきた「丈六」よりも短く、1丈2尺(約3.636m)です。
    医薬をつかさどる仏であり、医王仏とも呼ばれています。手には薬つぼを持ち、この世において心身の病を除き、安楽を与えてくださる仏様です。健康な日々を送れるように、ご自身はもちろん、ご家族やご友人の健康を祈りに、櫟野寺を訪れてみては。

     

     

    <写真06_alt:本堂へ進む道の横でいつも見守っているたくさんの小さな仏様>

     

    苦しみのない未来へと誘う 甲賀三大佛 釈迦如来坐像

     

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    十楽寺・櫟野寺からはすこし離れた甲賀市水口にある、大池寺(だいちじ)。サツキが咲き誇る「(ほうらいていえん)」が有名な臨済宗妙心寺派のお寺です。

     

    甲賀三大佛を安置するお寺の中では、もっとも古い歴史を有します。約1250年前、行基が水口を訪れたことにはじまります。日照りに悩んでいた農民を救うために、灌漑(かんがい)用水として、「心」という字の形に4つの池を掘りました。
    そして4つの池の真ん中に寺を建て、一刀三礼の下で「釈迦丈六坐像」を制作・安置したと伝わります。
    1577年には戦火によって、境内全域が焼き払われてしまいましたが、奇跡的に行基の釈迦丈六坐像は無事であったそうです。
    その後約90年間、釈迦丈六坐像は草庵に安置されていました。1667年に京都花園妙心寺の丈巌慈航禅師が草庵の仏像を見て、寺の再興を決意します。
    そして1670年に後水尾天皇、伊達宗房や織田主水正信らの助けを得て、仏殿、庫裡が完成。江戸初期には小掘遠州が枯山水庭園を手掛けたとされています。
    甲賀三大佛の釈迦如来坐像は本堂に安置されています。大きさは十楽寺の丈六阿弥陀如来坐像と同じ「丈六」です。人々を苦しみの世界から苦しみのない世界へ導くために教えを説かれ、仏の世界にお送り下さる仏様です。仏教の開祖であり、大恩教主、発遺教主とも呼ばれます。

     

    もう一つの見どころ、蓬莱(ほうらい)庭園は、サツキの大刈込み鑑賞式枯山水(かれさんすい)庭園です。
    江戸時代に水口城を築城した小堀遠州(こぼりえんしゅう)が作庭したと伝えられています。
    正面にある2段大刈込みは、海の大小の波を表し、真っ白な砂の上に宝船が浮かんでいる姿を表現しています。
    その中にさまざまな刈込みを用いて、七福神が乗っているように象徴しているそうです。言葉を発することも忘れて、その美しさに見とれてしまうこと間違いなしですよ。

     

    ぜひ釈迦如来坐像の包み込むようなやさしさを感じ、庭園で心を安らげてみてください。

     

     

    甲賀市の新たな魅力「甲賀三大佛」はいかがでしたか。
    十楽寺、櫟野寺、大池寺を1日で巡りたい方には、車での移動がオススメです。
    公共交通機関をご検討の方は、余裕をもって一泊されるといいですね。

     

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