大内という名に隠された伝説〜以仁王と桜木姫をめぐる悲劇の物語〜
江戸時代の宿場町の街並みが残る福島県下郷町の大内宿。
大内宿には、平安時代から今なお残る高倉宮以仁王の伝説があります。
平氏に追われ逃げてきた以仁王がこの村に数日間潜伏していたと伝えられているのです。
また以仁王の側室・桜木姫の悲しき最期を迎えたところとも言われています。
そんな歴史を感じる大内宿を旅してみませんか?
この記事の目次
神秘的!喧騒から離れひっそりと佇む高倉神社に伝わる歴史を感じよう
まず最初に紹介する高倉神社は、大内宿内に存在する唯一の神社であり、古くから高倉宮以仁王(たかくらのみやもちひとおう)を祀っています。
高倉神社へは大内宿中央にある鳥居をくぐり、約5分ほど歩きます。ひっそりとした森の中に鎮座し、大内宿を守っています。
茅葺き屋根が並ぶ街並みの中央には大きな一の鳥居が佇み、この鳥居が高倉神社への入り口になっています。
鳥居の奥には一本の参道が伸びており、ここを歩いていきます。
5分ほど歩いて行くと、右手に二の鳥居が見えてきます。
鳥居をくぐると辺りは静かで、どこか神秘的な雰囲気が伝わってきます。
少し歩くと目の前に小川が見えます。
これが手水舎となっています。
透き通っている水は冷たくてとても気持ちが良かったです。
三の鳥居です。ここを抜けると高倉神社が見えてきます。
大内宿から離れているため昼間でも騒音が一切なく、聞こえるのは水の流れる音、風のざわめき、鳥のさえずりだけで非常に癒されるところでした。
この高倉神社が村人と高倉宮を繋いでいるのだと実感します。
本殿の奥には樹齢800年以上の大スギがあります。
以仁王と桜木姫もこの木を眺めていたのでしょうか。
さらに奥に進むと「王三段」と書かれた石碑があります。
ここから先は地形が三段になっており、一番高いところに以仁王が居処を構えたといわれています。
帰りに鳥居から見渡せる蕎麦畑の景色も、非常に綺麗でした。
8月にはこの畑にたくさんの蛍が見ることができるそうです。
また、8月1日には「半夏祭り」という、町をあげての大きな祭りがここ高倉神社で行われます。
所在地: 福島県南会津郡下郷町大内山本
今もなお高倉宮以仁王を信仰し続ける大内宿の人々を繋ぐものとは?
大内宿の奥に店を構える本家玉屋(佐藤家)は平氏に追われ、逃げてきた高倉宮以仁王が休息をとり、草鞋を脱がれたと言い伝えられています。
中に入ると囲炉裏があり、とても暖かいです。囲炉裏の煙が立ち込める古民家の雰囲気はとても落ち着きます。
奥はお食事処になっていて、ねぎそばやオリジナル商品のきんつばなど、大内宿の名物を食べることができます。
2階は資料館となっていて本家玉屋に伝わる数多くの歴史的遺品があり、中を自由に見学することができます。
玉屋に代々伝わる「高倉宮御伝記」です。これは大内宿で以仁王にまつわる唯一の資料で、半夏の7月2日にしか開帳されていません。
本家玉屋のみなさんは本当に親切で、たくさんのお話を聞かせていただきました。ここに住む方々の高倉宮以仁王に対する強い思いを感じますね。
みなさんも大内宿に訪れた際はぜひ本家玉屋さんへ行ってみてください!
所在地:福島県南会津郡下郷町大内山本3
大自然の中に鎮座する桜木姫と彼女の悲しき最期のラブストーリー
大内宿の奥を右に進むと旧道になっているので、そこを道のりに沿って5分ほど歩きます。
道中には多くの石碑や石仏があり、大内宿の特色の一つである根強い民間信仰が伺えます。
江戸時代、大内宿では荷物の運搬や農耕のためにたくさんの馬が飼われていたということもあり、下郷町では馬頭観音(ばとうかんのん)が所々にみられます。
5分ほど歩くと道が二股に分かれているので、ここを右に進みます。
ちなみに左へ行くと下野街道、右へ行くと桜木姫の墓や大内ダム、戊辰戦争の古戦場へ行くことができます。
この地蔵像が目印です。
緑が広がり、ひらけていてとても気持ちが良いです。
この旧道をさらに5分ほど進むと、石に記された標識があります。
ここが桜木姫の墓の入口です。
階段を登ります。
この墓標が桜木姫の墓です。
桜木姫は高倉宮以仁王の正室である紅梅御前の側室でした。
彼女たちは以仁王の後を追ってここ大内まで辿り着きましたが、桜木姫は長旅の疲れから病に伏し、虚しくも18歳という若さで亡くなったといわれています。
桜木姫という名は、病で倒れた姫のつく杖から桜が咲いたということから付けられ、現在は墓の傍に桜の木が植えられています。
春になると姫の死を哀れむかのように、可憐な花が咲き誇るそうです。
大内宿への帰り道には国道もあります。
ここを抜けると会津若松へ行くことができます。
その国道の脇には薬水(やくすい)と呼ばれる湧き水があります。
その味は都の水に劣らず、様々な病に効くと伝えられています。
また、伝説によると桜木姫が病に伏した際、回復を願ってこの水を飲んだといわれています。
透明で透き通った水は冷たくて、とても新鮮でした。
桜木姫も以仁王を思って病に侵されながらも回復を願い、この水を飲んでいたのでしょうか。
以仁王と桜木姫の結ばれることのなかった悲しきラブストーリが胸にしみます。
所在地:福島県南会津郡下郷町大内
大内宿には、高倉宮以仁王にまつわる伝説がいたるところに残っています。
しかし、それは以仁王と桜木姫の実ることのなかった悲しきラブストーリー。
そんな心に響く2人の切ない物語を巡る歴史旅に、あなたもぜひ行ってみませんか?