比叡山の門前町として栄えた坂本 歴史を感じる里坊のまちをめぐる
延暦寺(えんりゃくじ)や日吉大社(ひよしたいしゃ)で有名ですが、門前町として栄えた街並みも有名な滋賀県大津市坂本。
坂本のまちは重要伝統的建造物群保存地区に指定されており、穴太衆積み(あのおしゅうづみ)の石垣と里坊(さとぼう)の街並みは歴史を感じられます。
歴史を今に伝える建物と四季折々で違う姿を見せる庭園の景色にきっと魅了されることでしょう。
この記事の目次
名城の石垣に用いられる伝統技法 穴太衆積みの石垣と坂本のまち
JR湖西線 比叡山坂本(ひえいざんさかもと)駅を出て徒歩約10分。
日吉大社へと続く一本道の参道の脇には穴太衆積み(あのおしゅうづみ)の石垣と小川が流れます。
この穴太衆積みの石垣は坂本のまちを歩くといたる所で目にすることができます。
穴太衆積みの名前の由来は、この地域にいた穴太衆(あのおしゅう)という石工集団からきています。
穴太衆積みは自然のままの形の石を積み上げて作るため高度な技術が必要です。
大きな石を組み合わせるだけでなく、奥に栗石(ぐりいし)と呼ばれる小さめの石を詰めて
水はけを良くするなど、工夫され頑丈な石垣になっています。
織田信長が安土城築城の際に初めて城郭を穴太衆積みの石垣で囲い、強靭(きょうじん)な城を築きました。
これにより、以後の築城ブームでは城郭を石垣で囲うようになり、強固な穴太衆積みが広まったと言われています。
今では、安土桃山時代以降に築かれた現存する城郭のうち8割にも上る城の石垣が、「穴太衆」たちによって築かれたものといわれています。
穴太衆が加わった主な城は彦根城や二条城、大阪城、江戸城、名古屋城、姫路城、熊本城など東は東京、西は熊本まで及びます。
全国各地の名城にも用いられるこの伝統技法はほとんど口伝で受け継がれてきたといいます。
坂本のまちを歩けば誇り高い歴史を肌で感じます。
坂本のまちを歩く際は、周りの石垣にもぜひ注目してみて下さい。
坂本のまち 所在地 :滋賀県大津市坂本
僧侶の住まい里坊のまち坂本 元里坊旧竹林院に残る歴史と日本庭園
参道を進み、日吉大社の赤い鳥居が近づいてくると手前に元里坊(もとさとぼう)の「旧竹林院(きゅうちくりんいん)」があります。
旧竹林院は約430年前に建てられ、国指定の名勝庭園・景観重要建造物に指定されています。
「里坊」とは、比叡山で修行を積んだ僧侶たちが住み込む隠居坊のことです。
日吉大社の参道の左右に並ぶ寺々はすべて延暦寺の里坊であり、坂本には50余りの里坊が現存しています。
里坊の中には立派な桃山様式の庭園をもつものも多く、旧竹林院でも美しい庭園を目にすることができます。
里坊に庭園がある理由は、「心を落ち着けて景色を見ることで悟りの境地に達する」という教えがあるからだそうです。
旧竹林院の庭園は、大宮川の清流が駆け巡る曲水庭園(きょくすいていえん)です。
庭園の中を歩くこともできますが、縁側に座って眺める景色がたまりません。
有料でお抹茶をいただくこともできるので、一服しながら心を休めてみるのはいかがですか。
旧竹林院 所在地 :滋賀県大津市坂本五丁目2番13号
断食修行を終えた僧侶が食べた 坂本で約300年続く本家鶴喜そば
里坊のまちを歩き疲れてお腹が空いたら、お蕎麦はいかがでしょうか。
古くから比叡山で修行を終えた僧侶が栄養価の高く、消化に良い蕎麦を食べたそうです。
そんな比叡山坂本で最も歴史のある蕎麦のお店が、「本家鶴喜そば(ほんけつるきそば)」さんです。
鶴喜そばさんは日吉大社の石造りの鳥居の手前、坂本観光案内所を過ぎた通りを左に入るとすぐ見えます。
初代「鶴屋 喜八(つるや きはち)」さんの名前が店名の由来となっているそうで、現在で9代目になり、約300年の歴史があります。
今回は天ざる蕎麦をいただきました。
新そばの時期だったので、とても香りが良く、美味しくいただきました。
比叡山との関わりも深い本家鶴喜そばさんで、ぜひお蕎麦を召し上がってみてください。
本家鶴喜そば 所在地 :滋賀県大津市坂本4-11-40
比叡山の門前町として栄えた坂本のまちをめぐる歴史旅はいかがでしたか。
比叡山にある延暦寺や日吉大社を訪れるだけでは物足りないというあなた!
その眼下に広がる里坊のまちをめぐり、穴太衆積みや日本庭園にも目を向けてみてはいかがでしょうか。