角館の伝統的工芸品「樺細工」樺細工伝承館にて魅力と歴史を紐解く
角館には古くからさまざまな伝統的工芸品が伝わっています。
そのうちのひとつ、樺細工の魅力に迫るべく、樺細工伝承館を訪れました。
江戸時代から角館に続く樺細工の魅力と歴史に迫ります。
この記事の目次
仙北市角館の武士の内職が起源今に伝わる樺細工の製作方法と歴史に迫る
樺細工(かばざいく)とは山桜の皮を用いた伝統工芸品で、茶筒や雑貨、インテリアなど製品の種類は多岐にわたります。
江戸時代から角館に伝わる樺細工を歴史とともにご紹介します。
秋田新幹線・田沢湖線 角館駅から徒歩約15分。こちらは樺細工伝承館の薬医門になります。
重厚な造りで威厳が感じられます。
建物自体は1978年に建築されたもので、武家屋敷が並ぶ角館では、比較的新しいものになります。
樺細工は、1781年に角館の武士藤村彦六が創始したと言われています。
元は武士の内職であり、侍の妥協を許さない作風が現在にも伝わっています。
明治以降は、有力な問屋の出現により安定的な産業へと導きました。
大正期以降、日本民芸館における伝習会により、現在の樺細工の基礎が築かれたと言われています。
樺細工には主に3つの技法があります。
ペンダントなどの装飾品に使われる技法「たたみもの」
箱型の製品全般に用いられる技法「木地もの」
明治時代に、この技法が新たに確立されました。
茶筒といった筒状の製品に用いられる技法「型もの」
さらに使用する山桜の皮にも多くの種類があります。
これらの樺を組み合わせることで、模様や柄を表現するとのことです。
山桜の皮で多種多様な表現ができるなんて奥深いですね。
角館のお土産屋では必ず見かける樺細工。
その歴史や製作方法を知っていると、きっと見方が変わるのではないでしょうか。
樺細工の概要 所在地 : 秋田県仙北市角館町表町下丁10
ひとつひとつに個性がある仙北市角館で受け継がれる樺細工の展示見学
続いて樺細工伝承館の展示見学をしていきます。
こちらは実際の皮を採取した山桜です。
皮の採取には、地表からの高さと採取面積に決まりが設けられており、制限を超えると山桜が枯死するとのです。
樺細工を後世に受け継ぐためにも、資源を大切にしなければなりませんね。
続いて展示施設の見学です。
こちらは茶筒です。
光沢があり、樺の個性を引き出していますね。
ショーケースの中には水が入ったコップが置かれており、湿度管理も徹底されています。
山桜の皮とは思えない光沢に思わず見とれてしまいました。
こちらは花立です。
色味が異なる色味の樺を組み合わせ、柄を表現しています。
こちらは馬の置物です。
馬の表情から足の蹄までとても精巧に作られています。
これらの細かい作業をこなす職人の技術は素晴らしいですね。
こちらは印籠です。
使用する樺の種類により、まだら模様も表現することが出来ます。
樺細工の展示見学はいかがでいたか。
ぜひ角館に訪れた際は、樺細工伝承館に足を運んでみてください。
所在地 : 秋田県仙北市角館町表町下丁10
230年角館に伝わる樺細工の体験! 樺細工伝承館にて壁掛けの製作
樺細工の歴史、魅力について感じていただけましたか?
樺細工伝承館では、「壁掛け」と「コースター」から、どちらかを選んで樺細工の製作を体験することができます。
筆者は「壁掛け」の製作を選びました。
まず製作を始める前に、樺細工製作で用いる道具をご紹介します。
樺細工は熱したこてを用いて、接着剤であるにかわを温め木材に貼り付けます。
こちらが熱したにかわです。
にかわとは動物の骨をドロドロになるまで溶かしたもので、少々鼻に刺す臭いがあります。
使用する樺には、既ににかわが塗られており、こてで温めるだけで接着することができます。
それでは、実際に樺細工の製作を進めて行きましょう。
まずはじめに、デザインを決めます。
いくつかのデザインの中から好きなものを選び、縁のみをトレーシングペーパーに写していきます。
実際の製作には、このような行程はなく、誰でも体験できるようにするため、このような手順を踏んでいるとのことです。
筆者は比較的簡単なかえでを選びました。
ここまでは順調ですね。我ながら素晴らしい作品が完成しそうな気がします。
所在地 : 秋田県仙北市角館町表町下丁10
角館の伝統的工芸品を伝える職人技は必見!壁掛け製作の仕上げへ
ここまでの工程は上手くいきましたね。しかし油断は禁物。
気を引き締めて製作を進めていきましょう。
続いてトレーシングペーパーに移したデザインを、カーボン紙を用いて樺にデザインしていきます。
実際の樺には凹凸があり、思った以上に神経を使う行程です。
デザインを終えたら、
はさみでカットします。
こちらも細かい作業で神経を使いますが、厚紙を切っている感覚に近く、誰でも気軽に体験できそうですね。
そしてここからが本命。こてを使って土台に接着していきます。
アイロンがけの要領で、樺を温め土台に接着していきます。
このときの温度調節が重要で、温度が低いとにかわに熱が伝わらなかったり、逆に高すぎると樺が焦げてしまうとのことです。
職人の方々は、水で温度調節した際の音や、頬に近づけて温度を測ります。自身の感覚だけが頼りの、職人の世界ですね。
この作業が一番大変で、あまりにも上手くいかなかったので、筆者は職人の方に半分以上お手伝いしていただきました。
接着を終え、仕上げを終えたものがこちらです。
初めてにしてはとてもきれいにできたと、評価していただき、もしかして私には才能があるのでは?なんて思ったりもしました。
初心者でも気軽に楽しめる樺細工体験、ぜひ伝統工芸品の魅力をご自身で体感してみてはいかがでしょうか。
所在地 : 秋田県仙北市角館町表町下丁10
樺細工の魅力を知っていただけたでしょうか。
角館にはさまざまな伝統工芸品が受け継がれており、樺細工伝承館では季節ごとに、それらの伝統的工芸品の展示もしております。
角館に訪れた際は、ぜひ樺細工伝承館に足を運んでみてはいかがでしょうか。