京都で三番目の重伝建 嵯峨鳥居本の古き良き町並みを感じ歩く歴史旅
京都・嵯峨鳥居本(さがとりいもと)の地は、国に認められた京都で三番目となる重要伝統的建造物群保存地区です。
全国でも珍しい、町家と農家の共存を見ることができます。
不思議な町並み形成の歴史を歩いて辿る、歴史旅に出かけませんか。
この記事の目次
町家風家屋と農家風家屋の共存する嵯峨鳥居本の情緒感じる町並み
JR嵯峨嵐山駅から歩いて30分。
嵯峨鳥居本地区の始まりの地点には、八体地蔵が道行く人々を見守っています。
ここから、京都で三番目の重要伝統的建造物群保存地区である嵯峨鳥居本の美しい町並みが続いていきます。
歩いていくとまず現れるのは、下地区にある瓦葺屋根が美しい町家風家屋。
もとは農林業や川漁業として栄えた町に、今から350年ほど前に愛宕(あたご)神社の門前町としての機能を備えるようになった際に建ち並んだ家屋が今もなお残っているようです。
さらに奥へ進むと瓦葺きの屋根が目立つようになります。
これらは、農林業や川漁業で栄えていた当時の町並みを色濃く残しているといえます。
嵯峨鳥居本の有名な老舗料亭である鮎の宿つたやと平野屋も農家風家屋であり、自然の情景に溶け込み、美しい景観を見ることができます。
全国的にも珍しい、茅葺き屋根と瓦葺き屋根が連なる嵯峨鳥居本の町並みは、家屋やそれを取り囲む自然のどこを切り取っても美しく、心を奪われます。
茅葺き屋根と瓦屋根が合体した家屋 嵯峨鳥居本の角屋葺き家屋とは
さて、嵯峨鳥居本の町並みを歩いて散策していると、ちょうど町並みの中心に化野念仏寺(あだしのねんぶつじ)があり、その少し奥へ歩くと立派な家屋が姿を現します。
この家屋は、400年この嵯峨鳥居本の地に残り続け、今も人が住んでいる家屋です。
屋根は立派な茅葺で、正面は町家風になっています。
400年前から庄屋をやっていたお家だったため、このような立派な家屋を持つことができたのだそうです。
また、この立派な茅葺き屋根の真ん中には大きく「水」と書いた文字があります。
これは、茅葺きが火に弱く燃えてしまいやすいことから、おまじないとして書いてあるそうです。
さらに、この家には嵯峨鳥居本が街道であったことを示す、駒寄もありました。
かつては、ここで馬や牛をくくりつけ休ませるとともに、人々も休憩をとっていたそうです。
この家に住む方は、400年続いたこの家屋を大事に、住み続けることが大切だと思っているとお話ししてくださいました。
素敵な想いをもって、日本の歴史が紡いできた立派な家屋を守っている住民の方々が嵯峨鳥居本の良さをより一層引き立てているように感じます。
京都でただ一つの博物館 嵯峨鳥居本の歴史を学べる町並み保存館
嵯峨鳥居本地区を歩き、角屋葺きの家屋を過ぎたあたりに、町並み保存館があります。
ここは、明治初め頃に建てられた民家を京都市が借り受け、1993年に保存館として開設したものです。
保存館の中には、嵯峨鳥居本に関する資料や模型だけでなく、おくどさんや京火鉢などのかつての民家を思わせるような品が置かれています。
保存館は、一階には格子、ばったり床几に駒寄せ、中二階にはむしこ窓、大屋根には煙出しを備える町家風の瓦葺の切妻平入り形式の建物です。
この博物館は、建物自体も伝統的な建造物として眺めることのできる京都でただ一つの博物館です。
実際にお家に上がり、見学することができるので当時の暮らしをより身近に感じることができます。
保存館には、私たちが生まれるずっと前に生きていた人々の、たくさんの生活の知恵が詰まっていました。
生活をより良くしようと考えたはるか昔の人々の思いが、今も博物館として形を残していることに、ただただ感嘆するばかりです。
毎週月曜日以外は、嵯峨鳥居本に住む住民の方々で組まれる保勝会の会員さんが交代で保存館の番をしておられるそうなので、
嵯峨鳥居本の町の魅力を新たに自分自身で発掘できるかもしれません。
嵯峨鳥居本町並み保存館 所在地 :京都府京都市右京区嵯峨鳥居本仙翁町8
京都・嵐山の奥には、まだまだ知られざる美しく、情緒ある町並みが広がっています。
当時の人々の暮らしを感じながら、重要伝統的建造物群保存地区を散策する歴史旅はいかがでしょうか。
京都の良さはまだまだ奥が深い!ぜひ、嵯峨鳥居本まで足を伸ばしてみませんか。