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在原業平作の百人一首「ちはやふる」の舞台、斑鳩竜田川を観光

  • 奈良県斑鳩町にある竜田川と三室山。
    百人一首に収められている名歌で詠まれた紅葉の名所です。
    今回は竜田川と三室山を詠んだ2首の和歌をたしなみながら、風流を感じます。

     

     

    斑鳩の自然スポットといえば 竜田川と三室山

     

     

    まず訪れたのは斑鳩で名高い桜の名所、竜田川です。
    竜田川は、奈良県の生駒山(いこまやま)東麓を源として斑鳩町で大和川に合流します。

     

    〈③11_ikaruga竜田川 紅葉橋〉

     

    〈③12_ikaruga竜田川 堂山橋〉

     

    竜田川には二つの橋が架かり、一枚目の橋は「紅葉橋」、二枚目の橋は「堂山橋」と呼ばれています。
    朱色の二つの橋が山川にアクセントを加えて、風情ある景色ですね。

    遠くから見ると一見同じ橋のようですが、柱部分にご注目ください。
    堂山橋の柱が金色で、高貴な感じがしますね。

     

    〈③13_ikaruga竜田川&山〉
    竜田川の水は近くで見るととても澄んでおり、鏡のように川沿いの景色を映し出します。
    桜や紅葉の時期には、水面に映る色めく斑鳩の自然を楽しめますよ。また、竜田川沿いには都市公園の竜田公園があります。
    園内の遊歩道を歩きながら、斑鳩の自然を感じることができます。
    秋にはモミジやカエデが散りばめられ、紅葉狩りの方でにぎわっています。

     

    〈③07_ikaruga竜田公園 広場〉

    美しい斑鳩の自然を写真に収めたい方は、イチオシの撮影スポット、園内の広場へ!
    空の青に三室山の緑、そして竜田川が写真に動きを付けてくれます。
    旅の思い出に一枚、ぜひ撮ってください。

    休憩所には壁がないので360度のパノラマを楽しむことができます。
    カメラにたっぷり思い出を詰めたら、ゆっくりと目で楽しんでください。

    続いてのスポットは古代より多くの和歌に詠まれた斑鳩にある三室山。

     

    〈③02_ikaruga三室山 遠目の図〉

     

    聖徳太子が斑鳩宮を造営するにあたり、飛鳥の地を守る神が祀られたことから、三室山は古来から神の鎮座する山とされています。
    また神南備山(かんなびざん)という別名を持ち、三室山がある神南の由来ともなっています。
    ではさっそく神の鎮座する三室山に登ってみましょう。

    山道は急な坂があるので足元に気を付けて向かいましょう。
    標高82mと小さな山なので、階段を上って約3分で頂上に到達です。

     

    〈③05_ikaruga三室山 頂上〉

    頂上にある休憩所でひと休み。
    木々から差しこむ陽がやさしく、古来より親しまれてきた理由がわかります。

    和歌のイメージから紅葉の名所として知られていますが、桜の名所でもあります。
    山の半分がピンクに染まり、紅葉とはまた違った美しさですよ。

     

     

    「ちはやふる~」の和歌に託された在原業平の想いとは

     

     

    〈③01_ikaruga三室山 歌碑〉

     

    「千早ふる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」
    百人一首の17番、在原業平の一首です。
    「不思議なことが起こっていた神代でさえ、このようなことは聞いたことがない。竜田川が川の水を真っ赤な紅色にしぼり染めにしているとは。」と詠っています。
    竜田川が川の水を染める、というのは比喩表現で、紅葉が竜田川の水面に落ちて真っ赤になっているということ。
    この歌は「屏風歌」といって、屏風に描かれている絵に合わせて作られた歌です。
    古今集などによると、二条の后が持っていた屏風を見て付けた歌とされています。

     

    二条の后は清和天皇の側室で、かつては業平と恋人同士でした。
    絶世の美男子で、恋のうわさも絶えなかった業平ですが、二条の后のことは別れた後も忘れられなかったそうです。
    古今集には屏風歌と記されていますが、一説にはそんな二条の后との恋を描いたとも言われています。
    業平の二条の后に対する熱い思いを、紅葉が浮かんだ真っ赤な竜田川に重ねたんですね。
    読み手によって様々な解釈ができるのも和歌の一つです。
    みなさんはこの歌をどう読み解きますか。

     

    「嵐吹く~」に隠された能田法師の粋な計らい

     

     

    03_ikaruga

     

    「嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 竜田の川の 錦なりけり」 
    和歌に親しみのある方はご存知かもしれない、三室山と竜田川の紅葉を詠んだ一首。
    「風に吹かれた三室山の紅葉が竜田川に舞い散り、錦のように美しい光景を生み出している」と詠っています。

     

    1049年11月に内裏で行われた「歌合わせ」で能田法師が詠んだ歌です。
    歌合わせとは歌人が2チームに分かれて、事前に伝えられているお題に沿って歌を詠み、優劣を競う遊び。
    能田法師は藤原道長の孫・藤原祐家と「紅葉」のお題で対戦することになり、
    「散りまがふ 嵐の山の もみぢ葉は ふもとの里の 秋にざりける」
    歌意:舞い散る嵐山の紅葉は、ふもとの里に秋をもたらした
    という嵐山の紅葉を詠んだ、祐家の和歌に勝利します。

     

    両者ともすばらしい和歌に思えます。
    なぜ能田法師の歌に軍配が上がったのでしょう。
    その理由のひとつに、「能田法師の粋な計らい」があると言われています。
    和歌において、紅葉で詠まれる場所は時代によって違います。
    能田法師が詠んだ三室山と竜田川は、先ほどの在原業平が活躍していた時代~約100年前に流行した紅葉の場所。
    そして能田法師と祐家が参加したのは、約90年ぶりに行われた内裏歌合わせでした。
    約90年ぶりの内裏歌合わせを意識し、能田法師は三室山と竜田川を選び、歌合わせを祝して、華やかな印象の「錦」を付けています。
    こうした能田法師の粋な計らいが評価されたと考えられているんですね。

     

     

     

     

     

     

    竜田川と三室山、そして2首の和歌、お楽しみいただけましたか。
    百人一首は歌い手が目の前の情景を詠んだものだけではなく、歌合わせや屏風歌など様々な形式があります。
    詠われた場所で、歌の背景を思い浮かべながら、自分なりの歌意を考えてみては。

     

     

     

     

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