斑鳩の神社仏閣 世界遺産法隆寺の見どころを徹底分析
奈良旅には外せない世界遺産 法隆寺。
敷地面積約18万7千平方メートルという広大な法隆寺をすべて見ようと思うと半日ほどかかります。そこで法隆寺の見どころを徹底分析しご紹介します。
きっとあなたの知らない法隆寺がありますよ。
この記事の目次
斑鳩の名所 世界遺産 法隆寺とは
607年斑鳩の町に建てられた法隆寺。
聖徳太子が父・用明天皇のために創建したと伝わっています。
仏教が日本に伝来して間もない創建当時、仏教をめぐり中央は排仏派と崇仏派の二派に分かれていました。用明天皇は、流行していた天然痘にかかった際に「仏教を信仰する」と表明します。
叔父の蘇我馬子が仏教に帰依して病を治し、義兄の敏達天皇が排仏を掲げたら亡くなったことが、仏教を信仰するきっかけとなったと考えられています。天然痘と闘っていた用明天皇は、「寺を建て、薬師像をお祀りしたい」という願いを、用明天皇の姉・推古天皇と聖徳太子に託しました。
その願いを受けた推古天皇と聖徳太子が建立したのが「法隆寺」です。
法隆寺は西院伽藍(さいいんがらん)と東院伽藍(とういんがらん)の東西で大きくふたつに分かれます。
「日本書紀」の記述によると、670年に法隆寺は全焼する被害にあっていたとされており、現在残されている建造物はすべて再建されたものです。創建された飛鳥時代の様式で奈良時代初頭までに再建されたのが西院伽藍。
西院伽藍には日本最古の五重塔や金堂があります。対して東院伽藍は、739年に僧・行信が聖徳太子の菩提を弔う目的で建てた夢殿を中心に形成されている、比較的新しい伽藍です。
1993年には日本初のユネスコ世界遺産に登録。
現在は世界各地から観光客が訪れる奈良屈指の観光名所となっています。
まずは王道 法隆寺金堂・五重塔がある西院伽藍の見どころをチェック
法隆寺に着いたら、「西院伽藍・大宝蔵院・東院伽藍」共通のチケットを買いましょう。
大人は1500円、子供(小学生)は750円で購入できます。
法隆寺で必ず訪れるのが日本最古の木造建築が並ぶ西院伽藍です。
中門、五重塔、金堂、大講堂などから構成されています。
西院伽藍の入口・中門(現在工事中)をくぐると、前方中央にのれんが掛かった大きな建物が見えます。
こちらは大講堂(だいこうどう)といい、主に法要や行事で使われるお堂です。
創建時の大講堂は925年落雷によって焼失したため、現存しているのは990年に再建されたものです。
大講堂(だいこうどう)の中に置かれている薬師三尊像および四天王像も再建を機に造られています。
大講堂では1119年から約900年続く「仏生会」などの行事が催されます。
法隆寺の伝統を伝える大切な場所。荘厳とした雰囲気が漂っていました。
次に大講堂から見て左手にある金堂へ。
まずは中に入るまでにじっくりと外観を楽しみましょう。瓦屋根と板葺きの裳階のバランスがなんとも絶妙ですね。軒下には火災から法隆寺を守るために造られた雲斗・雲肘木が見えます。
まだ防火設備が整っていない時代、法隆寺を守ろうとする宮大工の温かい心を感じました。上に向かって細くなるエンタシスの柱は古代ギリシアの建築様式。シルクロードを通って中国に伝わり、中国から渡来人によって日本へと伝来したのでしょう。
日本を代表する法隆寺金堂の建築には、歴史や文化が詰まっているのを感じました。
中に入れば、国宝 釈迦三尊像、薬師如来像といった仏像を見ることができます。釈迦三尊像の光背の裏面には、等身大で聖徳太子の像が刻まれているそうです。
お釈迦さまに手を合わせながら、創建者である聖徳太子への思いも込めて祈ります。
西院伽藍最後に拝見するのは五重塔。
お釈迦さまの遺骨を奉安するためのものであり、仏教寺院においてもっとも重要な建物とされています。高さはなんと32.5メートル(基壇上より)で、日本最古の五重塔です。
「五重」は仏教の世界観からきており、初層は地(基礎)を、二層は水(塔身)、三層は火(笠)、四層は風(請花)、五層は空(宝珠)の世界を表しています。
普段何気なく生活している中では考えることのない世界。五重塔の前に立ち、仏教の世界観を感じてみてください。
御朱印集めをされている方は西院伽藍を見た後に聖霊院(しょうりょういん)で書いて頂きましょう。
仏教美術が集結する法隆寺大宝蔵院で玉虫厨子や百済観音像を拝観
続いての見どころは大宝蔵院です。
名前の通り、法隆寺の社宝が収められています。
大宝蔵院に収められている社宝の中でも有名なのが「玉虫厨子」と「百済観音像」です。非常に細やかな装飾がなされている玉虫厨子。玉虫の羽がほとんど無くなっているため虹色の輝く姿は見られませんが、現在でも透かし彫りや絵は見事ですよ。
そして大宝蔵院中央に安置されているのが百済観音像です。
優しく微笑む顔に心が癒されます。春と秋には通常非公開の社宝も展示されるので、要チェックですよ。
法隆寺の見どころメイン2つを見終えたら、少し疲れてくるかと思います。
休憩所ですこし足を休めましょう!
盆地のため夏場はかなり気温が上がりますので、水分補給も忘れずに。
ちなみに法隆寺境内にある3つの手水舎はそれぞれ違うんです。
龍に、謎の生物、そして鳳凰をかたどった手水舎が同じお寺の境内にあるなんて不思議ですよね。
西院伽藍(さいいんがらん)、大宝蔵院(たいほうぞういん)、東院伽藍(とういんがらん)の入口にそれぞれあるので、建造物や社宝以外にも目を凝らして観てみてください。
聖徳太子信仰はじまりの地 法隆寺夢殿で思いを馳せる
法隆寺の締めは東院伽藍です。
東院伽藍の中心となるのが夢殿(ゆめどの)。目を引く八角形のお堂となっています。八角円堂は故人を弔う形。この夢殿には聖徳太子が供養されています。
夢殿の建立を進めたのは、僧・行信。
聖徳太子がお亡くなりになってから、かつて住まわれていた斑鳩宮は荒廃していきます。その荒れた斑鳩宮を見た行信は悲嘆し、夢殿を含む上宮王院を創建しました。
そして仏教が日本に浸透していくとともに、聖徳太子は「仏教の祖」として信仰を集めます。その中で夢殿は「太子信仰のはじまりの地」とされ、多くの人々が訪れました。
平安時代に法隆寺と統合し、現在に至っています。
最後に少し小話を。「法隆寺に伝わる七不思議」をご存知でしょうか。
1 法隆寺にはクモの巣がない
2 雨だれで地面に穴が開かない
3 五重塔の九輪には4本の鎌がある
4 境内に3つの秘密の蔵がある
5 因可池(よるかのいけ)に片目しかないカエルがいる
6 南大門の前に「鯛石(たいいし)」がある
7 夢殿の礼盤(らいばん)の裏は水が滴る
七不思議を確かめながら境内を散策してみると、おもしろいかもしれませんね。
法隆寺の見どころ、深い深いところまでお楽しみいただけましたでしょうか。
あらためて世界遺産 法隆寺の魅力を感じていただけたら幸いです。法隆寺を訪れる際には、境内全体を満喫するためにも時間には余裕をもってくださいね。