和歌山県伊都郡かつらぎ町にある 世界遺産 丹生都比売神社の旅
紀ノ川が流れ山々に囲まれている和歌山県伊都郡かつらぎ町。
その豊かな自然の中には、かつて高野山の参詣道としてよく使われた三谷坂をはじめ、高野山と深いつながりのある史跡が多く残ります。
今回は天野の自然にひっそりとたたずむ世界遺産丹生都比売神社を散策し、神仏融合という宗教観のはじまりをのぞいてみましょう。
この記事の目次
かつらぎの妙寺駅から高野山へと続くもう一つの参詣道「三谷坂」とは
JR和歌山線妙寺駅で電車を降りると、目に入るのが赤い柱。
上の看板を見ると、「三谷坂 参詣道入口」と書かれています。
こちらは高野山へと続く参詣道のはじまりです。
この参詣道は丹生酒殿神社(にうさかどのじんじゃ)、丹生都比売神社(にうつひめじんじゃ)を通り、二ツ鳥居で町石道に合流します。
高野山への道と言えば、九度山から続く「町石道」を思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
かつて三谷坂は町石道よりも整備された高野山への近道として広く利用されていました。
また近いだけではなく、高野山参詣の前には弘法大師を高野山へと導いた丹生都比売大神が祀られている丹生都比売神社への参詣が慣例だったことから、よく通られた道であったとされています。
なかなかの急勾配な坂が続くため、体力や時間に余裕のある時には、のどかな景色を眺めながらゆっくりと参詣道を歩くのもいいですね。
かつらぎにある 神仏融合はじまりの社「丹生都比売神社」を知る
今回はJR和歌山線笠田駅からバスで丹生都比売神社へと向かいます。
自然豊かな天野の地を窓から眺めること約30分、丹生都比売神社に着きました。
丹生都比売神社に着いて、まず目に入るのが外鳥居と中鳥居。
この二つの鳥居は、「両部鳥居」と呼ばれる形式となっています。
両部鳥居とは、本柱の前後にそれぞれ低い控柱(ひかえばしら)を設けて貫(ぬき)で本柱とつないだものです。
「両部」は密教の金部両部のことで、密教の両部と神道の鳥居を合わせて神仏融合を示しています。
さすが「神仏融合のはじまりの社」と呼ばれる丹生都比売神社の鳥居です。
丹生都比売神社の神仏融合は、今から約1400年前に丹生都比売大神の御子である高野御子大神(たかのみこのおおかみ)と弘法大師の出会いが始まりです。高野御子に高野山へ導かれた弘法大師は、丹生都比売大神より高野山を借り受けて真言密教の総本山高野山を開き、神道と仏教が共存することとなりました。そこから丹生都比売神社は「神仏融合のはじまりの社」と呼ばれています。
そしてこの鳥居の向こう側に見えるのが淀君が寄進したと伝えられる大きな太鼓橋。
上って周りを見渡すと、とても澄んだ空気に包まれます。
横から見ても迫力があり、池には太鼓橋の姿が反射して風情ある景色も楽しめます。
神仏融合のはじまりを丹生都比売神社で感じてみましょう!
楼門横から拝観しよう! かつらぎの世界遺産 丹生都比売神社 本殿
いよいよ橋を渡って本殿へと向かいます。
「日本書紀」には1700年以上前に創建されたと伝えられている丹生都比売神社。
現在の本殿は室町時代に建てれたものですが、日本一の規模である一間春日づくりは非常に美しく、楼門とともに重要文化財に指定されています。
楼門までは入ることができますが、そこから本殿まで行くことはできません。
そのため楼門の横に本殿を見られる場所が設けられています。
そこから見える横並びになった本殿は、正面からではなくともその美しい造形に心が奪われました。
楼門は室町時代の1499に建てられた、入母屋造(いりもやづくり)・檜皮葺(ひわだぶき)・三間一戸(さんけんいっこ)の室町時代を代表する楼門形式となっています。
これらの建物を含め、2004年に「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として丹生都比売神社は世界遺産に登録されました。
天野の自然にひっそりとたたずむ世界遺産を訪れてみましょう!
神仏融合はじまりの社、丹生都比売神社の旅はいかがでしたでしょうか。
かつらぎの豊かな自然の中にある神秘的な空間は立ち去り難いくらいに心安らぎます。
澄んだ空気の中で、名高い高野山につながる歴史と神仏融合の神髄を見てみませんか。