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日本唯一!三朝バイオリン美術館でバイオリンについて学ぶ旅へ

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    鳥取県三朝の温泉街に合掌造りの形をした美術館があります。
    それは日本で唯一無二のバイオリンの美術館、三朝バイオリン美術館です。
    普段見ることのないバイオリンの製作過程や技術者の姿を見れば、きっと心掴まれることでしょう。

     

    日本でバイオリンが有名になるまで

     

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    バイオリンがはじめて日本に伝えられたのは、1860~1870年代頃。
    諸説ありますが、外国人居留地の音楽イベントで使われ、日本にバイオリンという楽器が伝来したと考えられています。
    1887年、三味線職人であった鈴木政吉がバイオリンを製作し、1890年に工場を建てて本格的な国産バイオリンの生産が始まりました。
    大量生産されるようになったバイオリンは、日本に普及していきましたが、もうひとり違う形でバイオリンに向き合った人物がいました。

     

     

    その人物とは「日本におけるバイオリン製作の歴史にこの人あり」と言われる、無量塔蔵六(むらたぞうろく)です。
    無量塔氏は、ドイツにあるミッテンヴァルト国立弦楽器製作学校に留学し、1962年に日本初となる「ガイゲンバウ・マイスター」の資格を得た偉人。
    マイスターとはドイツにおける技術者の国家資格を指し、ガイゲンバウ・マイスターは弦楽器技術者の国家資格をもつ人のことです。
    帰国した無量塔氏は、自らバイオリン製作・修繕をするだけでなく、東京ヴァイオリン製作学校を設立し、数多くのバイオリン製作家を育てました。

     

     

    そんな弦楽器製作のプロフェッショナルとなる道を切り開いた無量塔氏のもとに、弟子入りを懇願する中学生が。
    無量塔氏は「バイオリンを弾けるのか」と尋ねたところ、彼は断念します。
    ところが数年後、バイオリンを弾けるようになって、東京ヴァイオリン製作学校へと入学したのです。
    その中学生こそ、三朝バイオリン美術館館長の岡野壮人。
    岡野氏もまた蔵六と同じく、バイオリン製作家であるとともに違った一面を持っています。

     

     

    今回は岡野氏が館長を務める三朝バイオリン美術館へと参ります。
    バイオリンになじみのない方も、わくわくするような新しい発見や、技術者の熱い思いに、心が掴まれること間違いなしです。

     

     

    日本唯一 三朝バイオリン美術館ってどんな場所?

     

     

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    岡野氏が館長を務める三朝バイオリン美術館は、もともと「町立みささ美術館」という別の施設でした。
    運営の資金繰りが難しくなったことから町立みささ美術館は、2004年に閉館する運びとなります。
    町民からは「施設を残して利活用してほしい」という声もあり、文化交流拠点として様々なイベントを開催する施設として再スタートを切りました。

     
    そのイベントのひとつに、岡野氏が主催した「弦展」がありました。
    弦楽器の展示やコンサートを行った弦展には、2000人を超える来場者が訪れ、三朝の町がにぎわいます。
    そして弦展をきっかけに、岡野氏が代表を務める「株式会社みささ弦楽プロジェクト」が町立みささ美術館の建物を預かることとなったのです。
    「音楽が豊かな町は人間も町も豊かになる」という思いのもと、2013年に町立みささ美術館は三朝バイオリン美術館へと生まれ変わりました。

     

     

     

    三朝バイオリン美術館は吹き抜けの2階建てで、1階は展示スペース、2階はホールになっています。

     

     

     

     

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    こちらは展示室1にあるバイオリンの製作過程を表したもので、どのようにバイオリンが組み立てられているのかを知ることができます。
    年数を重ねて、修理が必要となったときのために、59個の部品を天然素材の接着剤「膠(にかわ)」でくっつけているそうです。
    演奏者でも、バラバラになったバイオリンを目にすることはめったにないのだとか。

    2階のホールでは、月に数回コンサートが行われています。
    「ランチタイムコンサートforキッズ」という、赤ちゃんから参加できるコンサートもあります。
    訪れる際は、HPでコンサートのスケジュールを確認していきましょう。

     

    鳥取バイオリン製作学校でバイオリン製作を見学&

     

    三朝バイオリン美術館で知られざるバイオリンの世界に触れたら、ぜひバイオリン製作を「生で」見て、技術者の熱を感じてみませんか。
    三朝バイオリン美術館の横にある「鳥取バイオリン製作学校」は、岡野氏が校長を務め、バイオリン製作の基礎と人間力を身につけるための学校。

     

     

    4年間かけてバイオリンの製作から修理に至るまでの、基礎を学ぶにとどまらず、岡野氏の「能力が高くても考え方が良くなくては、素晴らしい職人には絶対になりえない」という考えのもと、「精神修行」も行われます。
    まだ卒業生はいませんが、現在修行中の方がいらっしゃるそうです。
    かつて無量塔氏から受けたように、次は岡野氏が教える立場となって次の世代へと技術が紡がれていく。
    このような師弟関係から受け継がれる技術には、製作技術にとどまらない技術者としての心が含まれているのかもしれません。
    鳥取バイオリン制作学校に入ると、その技術者の心を感じる空間が広がっています。
    ぜひ展示やコンサートでは感じることのできない、技術者の心を感じてみてください。

     

     

    また見ているだけでは物足りないという方には、2日間でバイオリン製作の仕上げを体験することができるコースもあるので、要チェックですよ。
    初心者でも気軽に申し込みができるので、気になる方は事前に電話でご予約を。

     

     

    おそらくほとんどの方が踏み入れたことのない、バイオリンの世界。
    三朝バイオリン美術館では展示やコンサート、体験とバイオリンをいろんな角度から楽しむことができます。
    三朝への旅に温泉だけではなく、三朝バイオリン美術館で音楽をたしなんでみては。

     

     

     

     

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