日本最古の浦島伝説が残る京都・伊根町本圧で時空を感じ伝説の旅へ
重伝建地区に指定された京都の「舟屋」からバスで約25分のところにある「伊根町」。
小学校からチャイムの音が響き、のどかな田園が広がるこの地は、日本最古の「浦島伝説」ゆらいの地です。
時代や地域により語り継がれている浦島の伝説を、ここ伊根町では原型を変えずに伝承されています。
今回はそんな浦島伝説を巡る歴史旅を紹介します。
この記事の目次
雨天の時だけ姿を現す?伊根・雲竜山の幻の滝「布引の滝」に出会う
京都丹後鉄道宮福線天橋立駅から丹後海陸バスに乗車し約1時間、「浦嶋神社前」で下車すると、目の前には田園が広がっています。
伊根町本圧地区は伊根唯一の平野で稲作などの農業が盛んに行われています。
山に囲まれた本圧地区は時間の流れが止まったかのような静かな場所です。
車の通りも少なく見渡す限りの雄大な田園風景にまるで時空を超えてタイムスリップをしかたのような地区です。
田園が広がる先に、玉手箱を模った「浦島館」が見えてきますが、そのまま歩き始める前に、是非後ろを振り返ってみてください。
振り返ると「山のふもとの里から浦嶋太郎は小舟で釣りに出た」と言われている「雲竜山」(うんりゅうざん)を一望できます。
雲竜山には、雨量の多い時にしか現れない幻の滝「布引の滝」(標高358メートル・落差100メートル)があります。
天候の条件が合えば現れるので、浦嶋神社や浦嶋館に行く前に、一度布引の滝を探してみましょう。
この日はしっかり見ることができました。
山の山頂から零れ落ちる滝は圧巻です。
浦島太郎と乙姫様の見つめる先~時空を超える水の江里浦嶋公園~
浦嶋館を目指して約3分歩いていると、左手に見えてくるのが「水の江浦嶋公園」です。
水の江浦嶋公園には、浦嶋太郎伝説を象徴する銅像が点在していて、浦島太郎や乙姫や亀の像があります!
そしてこれらの銅像で大きな輪を作っています。
輪の東の方角には乙姫が、輪の西の方角には浦嶋太郎がいます。
一体この輪は何を表しているのか考えてみてください。
答えは「悠々時空」(ふりがな)と書かれた碑に書いてありました。
浦島太郎と乙姫の間にある大きな輪は「時空」を表現しているそうです。
石碑には「この時空の輪を潜り抜ける時、過去と現在を自由に行き来することができる、この体現は人々の心の中で響き合い、新しい未来の豊かな感性の創出を約束する」と書かれています。
この時空の輪をくぐると本当に時空の旅に行けるのではないか、となんとも言えない時の流れを感じます。
物語の中の浦島太郎へ想いを馳せてみると、なんだか浦島太郎の顔が寂しそうに見えてくるのではないでしょうか。
浦島伝説が眠る神社「浦島神社」で日本最古の浦島伝説の真相を発見!
次に訪れたのは浦島太郎を筒川大明神として祀る神社、「浦嶋神社、(宇良神社)」(うらのかむやしろ)です。
浦嶋神社は水の江里浦嶋公園から徒歩で約2分、水の江里浦嶋公園の奥にあります。
伊根町本圧にひっそりと佇む浦嶋神社ですが、歴史は古く創祀825年の平安時代だと言われています。
浦嶋神社の本殿は茅葺の神明造で、拝殿は権現造となっており、2013年11月15日に国の登録有形文化財に指定されました。
浦嶋神社の拝殿の四方には、北近畿で活躍された中井権次一統による彫刻をみることもでき、今にも動き出しそうな龍の彫刻が必見です。
日本各地に伝わる浦島伝説ですが、伊根町に伝わる日本最古の「浦島伝説」はどのような物語でしょうか。浦島太郎は478年に乙姫に誘われ、常世の国へ行きます。
そして347年間の時間が流れ、825年、淳和天皇の825年に戻ってきたと言われています。
伊根では浦嶋太郎は竜宮城ではなく、常世の国へ行ってしまうそうです。
その常世の国というのが竹取物語で登場する蓬莱の山になります。
知っている話と随分違っていますよね。
京都・伊根に伝わる最古の浦島伝説は、「浦島が雲竜山から釣りに出かけ五色の大亀を釣り、眺めていると居眠りをしてしまいます。
目覚めると亀が乙姫に変身し常世の国へ共に向かいます。
常世の国で楽しい日々を乙姫と過ごし夫婦となった浦島ですが、だんだん故郷へ帰りたくなります。
そんな浦島に乙姫が玉手箱を渡し、「再開がしたかったら蓋をあけてはならない」と告げます。
現実の世界に浦島が戻った時は浦島が知る人はおらず、『300年間行方不明の浦島という人がいる』と自分の伝説を聞きます。
その後10日間ほど生き、乙姫を思い続けたそうですが乙姫との約束を破り、蓋を開けてしまいます。
すると蘭の香りがする紫の煙が立ち上り、けむりを追っていると浦島は白髪のお爺さんとなり、亡くなった」そうです。
なぜ話が変わって伝承したのか、ぜひ浦嶋神社へ足を運び、最古の浦島伝説を確認してみてください。
浦嶋神社では「浦島まち歩きMAP」を配布しています。
ぜひMAPを見ながら浦島太郎のゆかりの地に訪れてみてはいかがでしょうか。
そこはまるで竜宮城?!蓬莱山をイメージして作られた蓬莱の庭
浦嶋神社を正面にして左手には庭園「蓬山(とこよ)の庭」があります。
浦島太郎物語で浦島太郎は乙姫に誘われ、「水の江里より蓬山に渡る」という場面があります。
蓬山の庭は、丹後国風土逸文及び浦嶋明神絵巻に基づいて蓬山(=竜宮城)を作られました。
大きな石がいくつも並んでいたり、波模様の付けられた、静寂な神社の一角に佇む蓬山の庭を見つめると、浦島太郎がどんな場所で乙姫と過ごし、どのような人生を送ったのか、想像を掻き立てられます。
また、蓬山の庭の近くには、「力石の事」があります。
浦嶋風土記によると、円石の欠けている石は重さ120㎏もあるそうです。
元治の頃、森下仲右衛門は軽々とこの石を肩に乗せ、1000メートルほど歩いたという言い伝えが残されています。
車などがない時代に山に囲まれた伊根町では人の力が頼りだったのではないでしょうか。
浦嶋神社は、様々な伝説と当時の生活の様子が詰まった場所です。
生命の神、人生の導く神として古くから信仰がある浦島神社で参拝をして、自分の人生を一度思い返してみても良いかもしれません。
竜宮城からの帰り道が今も残る、時空を感じられる神秘的な体験を!
浦嶋神社からさらに東北へ約5分ほど歩いたところに突然、人がしゃがんでやっと入れる大きさの穴「龍穴」(りゅうけつ)が現れます。
この龍穴は浦嶋太郎が常世の国(=竜宮城)から帰る際に通ってきた穴と言われています。
竜宮城へ通じる穴や浦島太郎が竜宮城から帰郷した際に休息した穴だとも言われており、様々な説があります。
また1696年の浦嶋口伝記によると「小船に乗りて水の江の湖中、龍穴の辺りに釣良して遊ぶ。」と龍穴が出てくるそうです。
穴に近づき覗こうとすると、ひんやりと風が吹いてきます。
夏でも涼しい風が穴から吹いてくるそうです。
もしや、竜宮城から吹く風ではないのか・・・そんな考えが頭に過ります。
昔、白い犬をこの龍穴で放したところ、隠れ里の洞窟から出てきたという説もあるそうです。
1841年の「丹哥府志」や1780年の「丹後州宮津志捨遺」にも龍穴の記載があります。
いつの時代も龍穴の繋がる先を想像し、夢を馳せていました。
今は立ち入り禁止になっていますが、ぜひ涼しい風を感じに現地を訪れてみてください。
京都府「伊根」と聞くと、重伝建地区の舟屋を想像する方が多いと思いますが、今回は伊根町本圧に残る日本最古の伝説「浦島伝説」を巡る名所を紹介しました。
家族で旅する方は是非お子様と一緒に訪れてほしいと思います。子どもの頃にこの浦島太郎伝説を巡ってみてはいかがでしょうか。