豊かな氷見の里山に舞い響くいのちの賛歌 氷見市民の絆は祭りに凝縮
川のせせらぎや潮彩、のどかな田園風景の広がる氷見市。
そんな美しき故郷を愛する氷見市民の心を象徴するのは、江戸時代より長く長く受け継がれる祭りにありました。
祭りの時期になると各家庭の一族が集結します。
今回はそんな氷見の絆を探る旅へご案内いたします。
この記事の目次
江戸より氷見市民の愛す「ごんごん祭り」 傷んだ鐘は文化財の理由?
駅前のレトロな商店街を散策しながら北へ進むこと約15分、雨ごいの満願成就を祝う、朝日山の上日寺で毎春行われる祭礼の舞台へ到着です。
江戸時代初期に起こった大日照りのための雨ごい行法が成就したことで、農民たちは狂喜乱舞し上日寺の鐘を打ち鳴らして喜びを祝いました。
それ以来、報恩と厄除けの法会とともに、力自慢の若者らが長大な松の生木の丸太で、釣り鐘を「ゴンゴン」と強打。
これが「ごんごん祭り」の由縁です。
今では氷見をあげての大きなお祭りとなっており、県内各地の力自慢が集結し鐘をを取り囲む様子は圧巻です。
ごんごん祭りは「早鐘祭り」とも呼ばれていました。祭りの舞台はこちらの梵鐘(ぼんしょう)です。
美しい木々に囲まれ、隅の方にあるのにも関わらず大きな存在感を放っています。
1688年、金沢の鋳造師・平井但馬守家長により鋳造され、320年以上愛され続けるこちらは、氷見市指定の文化財にも指定されています。
江戸当時から毎年お祭りの度、なんと50㎏もの重さの丸太で力いっぱいに突かれ続ける鐘。
近づいてみると、他のお寺のものとは違いところどころに傷やへこみが見られました。
それこそがまさに長い歴史と伝統を象徴する証なのでしょう。
きれいに残された文化財も勿論素晴らしいですが、この梵鐘のように親しまれ、少し傷んでしまった姿こそが本来あるべき歴史・文化の象徴だといえるのではないでしょうか。
ちょうど紅葉シーズンにいらっしゃれば、琥珀色に輝く絨毯をカサカサと踏みしめながらの散策も素敵です。
江戸から続く伝統、機会があればこの世界に浸ってみてくださいね。
1350年の歴史誇る氷見の上日寺 観音堂への道には心地よき違和感
上日寺の長い石段を登り、まず見えるのが手入れの行き届いた、美しい紅葉に包まれた観音堂です。
進む最中には右手に紅葉、左手には文化財の梵鐘が見受けられ、木々のせせらぎと贅沢な景色を満喫できます。
石畳を一歩一歩進むごとに感じるのは、空気が冷たくなるような心地よい違和感。神聖な地へ足を踏み入れる時には、何か不思議な感覚を覚えるものです。
本尊である闇浮檀金の千手観音菩薩は竜宮から現れたと言い伝えられ、上日寺創建当時の670年からのものだそうです。
上を見上げると少し色の落ちた武者絵が歴史の古さを物語っていました。
今も市民に根付く歴史深き上日寺の観音堂は、大きく堂々と、静かに、そこに佇んでいました。
こちらの上日寺を訪れた際には、建築や樹木を楽しむのと共に、是非歴史伝統の重みを感じながら参拝してくださいね。
時を超えて伝えられる獅子舞の宝庫 「氷見獅子舞ミュージアム」へ
「今日は獅子舞だから」
そう言うと学校も試験も仕事も、休めてしまうこの氷見市。獅子舞の時期になると外へ出た大人たちが、この故郷へ戻ってきます。
それほどまでに氷見の獅子舞は市民の心に根付き、郷土の絆を象徴しています。
大漁豊作を祈願する春夏と豊作に感謝する秋、この氷見市内だけでも110か所以上で行われます。
氷見の獅子舞の特徴は天狗と対峙する、テンポの速い活発な踊り。
老若男女問わず声を張り上げ、手をたたく姿は江戸時代より受け継がれる伝統です。
今も変わらず息づく歴史文化の力強さに感動してしまいました。
そんな獅子舞の魅力を凝縮した「氷見獅子舞ミュージアム」は駅から車で約15分のところにあります。
氷見駅前の少し道幅の狭い商店街を北へ進み、幸町交差点を左折して少しすると見えてきます。
地域地域で異なる獅子や天狗をもつこの郷の舞は、それぞれの個性がぶつかり合います。
こちらには地域ごとに異なる天狗が展示されており、絶妙な光がこの伝統の重さを表現するかのようでした。
また、希望すれば自由に獅子舞の映像を見せていただくことができます。
大画面で見る人々の叫び声、歌声、獅子の迫力に私は鳥肌が立ちました。
獅子舞が繰り広げられるのは4~5月と9月の毎週末。是非見の地域の架け橋、郷土愛の魂をご自身の目と、肌で体感してみてください。
歴史とは最初からそこにあったものではなく、生きた人々の痕跡が「歴史」となるものです。
今、氷見に受け継がれるこの祭りたちも立派な伝統、生きる歴史です。
あと50年後、このような文化は日本にどれだけ残っているのでしょうか。
今を息づく伝統を、生で体験できるうちに、あなた自身で触れてみるのはいかがでしょうか。