愛らしい表情がたまらない 佐原で昔から人々の心を掴む佐原張子
千葉県佐原には日本で初めて実測による全国地図を作ったことで知られる伊能忠敬が、30年余りを過ごした旧宅をはじめとした歴史ある建物が数多く残り、その風情ある景観が注目を浴びています。今回は、そんな佐原で昔から愛され続けている伝統的工芸品や、人々の生活を彩る和小物を扱った古民家のお店を紹介します。
この記事の目次
佐原で明治時代から続く「三浦屋」 昔から受け継がれる伝統の技
佐原には「佐原張子」と呼ばれる、千葉県指定の伝統的工芸品である郷土玩具があります。
その何とも言えない愛らしい表情が、手に取る人々の心を和らげでくれます。
佐原張子を唯一制作しているのが、1918年創業の「三浦屋」さんです。
3代目鎌田芳朗さんの祖父が明治の末期に、香取神宮の境内で達磨や、ゴム動力を用いた亀車を売り始めたことから佐原張子は始まったといいます。
鎌田さんは生まれつき図画や工作が苦手でずっと他の仕事に就きたかったといいますが、高校卒業後、これから達磨づくりが忙しくなるという時期におじいさんが体調を崩してしまい、鎌田さんはおじいさんの枕元へ行って、作り方を教えてもらいながら何とか達磨を作り上げました。
そのことがきっかけで張子作りを始めたそうです。
その後も本当は学校の先生になりたいと思っていたそうです。
ですが、1987年に県の伝統的工芸品に指定され、1999年には鎌田さんが作った張子「もちつきうさぎ」が年賀切手の図案に採用されたことから、天職なのでは、と思うようになったといいます。
現在は、鎌田さんの内弟子の大谷未起生さんが佐原張子を継承しています。
他の技術を要する竹細工などとは違って、絵が苦手な人でもみんなで笑い合いながらできる、そんな佐原張子の温かさに魅了されたそうです。
鎌田さんから佐原張子を終わりにしようという話を聞いたときに、そういった貴重な工芸品を残したい、広めたいと思い、今も佐原張り子の継承と更なる発展を目指しているといいます。
所在地 : 287-0003 千葉県香取市佐原イ1978
伝統的工芸品「佐原張子」 素朴で愛らしい昔から伝わる郷土玩具
こちらは売り物ではありませんが、童謡唱歌の一場面を張子で表現したものです。
鎌田さんは唱歌が好きということで、仕事を始めた頃から、童謡唱歌をモチーフにした張子ができないかと常に考えていたそうです。
張子の優しい雰囲気と童謡が見事に合っていて、どこか懐かしさを感じます。
張子は中国から伝わったとされていて、古い歴史があります。
奈良時代に木の仏像に麻の葉を貼って抜き取り、漆を固めたものが起源だと言われています。
江戸時代になると和紙が庶民にも安く手に入るようになり、各地で張子が作られるようになりました。
郷土玩具はもともと、昔、子どもにおもちゃを買い与えられなかった親が、トウモロコシでとうきび人形など、身近にあるもので工夫して作ったものを子どもに与えたのが始まりだと言われています。
鎌田さんの作品もどこか素朴で、ぬくもりや優しさを感じ、作った人の人柄が出ているようです。
佐原にある古民家のお店「やまゆ」 心和らぐ手作り小物をお土産に
先ほどの三浦屋さんの佐原張子は、佐原にある「素顔屋(すっぴんや)」さんや、「ギャラリー卯兵衛」さんなどのお店で買うことができます。
今回は、小野川沿いにある「やまゆ」さんを訪ねました。こちらは、佐原駅から約10分歩いたところにあります。
こちらのお店では、佐原張子の他にもポーチなどの和風の小物や、服などが売られています。
そのほとんどが手作りだそうで、どれも手作りならではの温かみがあり、つい手に取りたくなってしまいます。
お店の方は、佐原が好きで、ご両親がかつて同じく小野川沿いのお店で商売をやっていたこともあり、ずっと佐原で何か商売ができないかと考えていたといいます。
町を元気にしようと佐原のことをよく考えていらっしゃる方で、気さくにお話しをしてくださりました。
小野川を歩く際はこちらのお店に立ち寄ると、何か耳寄りな情報をいただけるかもしれません。
物を販売するだけではなく、布ぞうりや季節ごとに合ったリースなどの手作りワークショップ、他にも、以前は笑点にも出ていたという三遊亭圓窓師匠を招いての落語の勉強会など、町の人の力を引き出すようなイベントもお店の中で行っているそうです。
佐原へ来たら、是非「やまゆ」さんで同じものは一つと無い手作りのお土産を探しに来ませんか?
所在地 : 287-0003 千葉県香取市 486 佐原イ
佐原には旅する人を魅了するものが沢山あります。
佐原に来る際は昔ながらの景観だけでなく、歴史や伝統文化、町の人に沢山触れてみてください。
そうすればきっと、その町から生み出される魅力に気付かされるのではないでしょうか。