佐原の街が博物館に!? 佐原の歴史が凝縮された「佐原まちぐるみ博物館」
千葉県香取市佐原(さわら)は江戸時代に利根川の水運業で栄え、水郷の町として名を馳せました。
そんな佐原にある「佐原まちぐるみ博物館」は、街全体を「博物館」とした新しい形の博物館です。
当時の店構えを残す店舗や当時の道具類を大切に引き継いでいる家々が、自慢のお宝や代々伝わる伝統の品々を展示しています。
今回は43館あるうちの3館を巡ります。
この記事の目次
佐原の老舗「福新呉服店」 今なお人々の生活と共に生きる有形文化財
佐原へは成田空港からが非常に便利です。
成田空港から京成本線に乗って京成成田まで向かい、JRに乗り換えてJR佐原駅まで向かいます。
なんと成田空港からはわずか約38分となっています。
JR東京駅からはJR千葉駅で乗り換えてJR佐原駅へと向かいます。
こちらの行き方だと約1時間43分でJR佐原駅に到着します。
駅から約11分歩くと、佐原まちぐるみ博物館1号館の「福新呉服店」が見えてきます。
この福新呉服店がある通りは、かつて香取神宮への参詣道として使われていた香取街道にあります。
1580年に月に六回定期市を開く「六斎市」が許可されていた場所であることから、日用品を扱うお店が多かったとされています。
福新呉服店は1804年創業の老舗です。
店舗は1895年に建てられた切妻平入(きりづまひらいり)となっています。
切妻とは屋根の最頂部の棟から二つの斜面がある山形の屋根のことを指しており、平入は屋根の棟と平行な面に出入り口がある建物を指します。
そして、この店舗に平屋、中庭、土蔵と続いています。
明治初年に建築された土蔵は、東日本大震災の際に屋根の瓦がたくさん落ちてしまうなど被害を受けましたが、修復した後、現在でもこの土蔵を使っているそうです。
これらは佐原の町屋の伝統的な造りだそうです。
お店の中へ入ると、当時使われていた商いの道具や生活用品がたくさん並んでいます。
こちらは、売買の勘定を記す元帳である「大福帳」です。時代劇でよく目にしますが、店先では顧客と金銭出納をする帳場とを帳場格子で仕切り、帳場机の上にはこの大福帳などが置かれていました。
これは「火のし」といって、炭を運ぶ道具です。朝、火を起こしてこの中に炭を入れ、各部屋に置いて暖をとるために使われていました。
こちらはお店のおかみさんが、「明治時代の自動ドア」といって紹介してくれました。
引き戸ですが、上下が斜めになっているのが分かります。
というのも、わざと斜めにすることで荷物を持って出ていくときに自然と戸が閉まるように作られているからです。
大きい荷物を運ぶときは、全体が開けられるように二重の造りになっています。
こちらは一つ一つデザインが異なる棚です。
今は何でも便利なものが溢れる時代ですが、昔の人は不自由さの中で知恵を絞り、工夫を凝らして生活していたことが分かります。
こちらも土蔵と同様、今も使っているそうです。
宝物をとっておくだけではなくて、今も生活の中で使っている、「生きている文化財」なのですね。
お店では、江戸時代の型紙で染めた「佐原 小江戸手ぬぐい」やちりめん和小物などの商品が売られています。
こちらも、昔から家に残る家具の上に商品が並んでいます。
博物館を楽しんだ後はお気に入りのお土産を探してみてはいかがでしょうか。
所在地:「福新呉服店」千葉県香取市佐原イ505
公式HP : 福新呉服店
250年の歴史を持つ「植田屋荒物店」で当時の人々の生活を感じよう
お次は、4号店の「植田屋荒物店」です。
先ほどの福新呉服店からほど近く、小野川と香取街道の交差する場所にあります。
1759年創業で、250年程の長い歴史がある荒物屋(あらものや)です。
荒物屋とは、今でいう日用雑貨店のことです。
主屋は明治に襲った大火の翌年1893年に建てられたもので、佐原の伝統的な町屋形式となっています。
通り土間を抜けると中庭があり、その奥には切妻平入の2階建ての土蔵があります。
1階には明治時代の嫁入り道具や、大正時代にかつての店主が夜7時から10時まで夜な夜な勉強したことを伝える時間割や教科書などが展示されています。
当時の佐原は文学者も数多く訪れたそうで、中でも有名なのが明治のベストセラー作家徳冨蘆花(とくとみろか)。
徳冨蘆花は二度佐原の町を訪れ、著書に残しています。
食べることが精一杯であった時代に、そういった勉強を教える文学者たちがいたということは、それほど町が豊かで文化レベルが高かったことが伺えます。
蔵の中へ足を踏み入れると、木の優しい香りに包まれます。建築当時のまま残る階段を上っていくと、飯台などの料理道具や手ぬぐい、雑貨などが売られています。問屋から仕入れるため他のところよりも安い値段で買えるそうです。
かつては荒物などの他に畳表を九州や岡山の産地から買い付け、佐原の畳屋に卸売りをしていたといいます。
当時は商品を船で運んでおり、国内の仕入れであっても、これを「輸入」といったそうです。
奥には、かつて店の前に出ていた看板があり、「産地直輸入 大分県 青筵(あおむしろ)特約販売」と書かれています。
今でも、この頃から取引のある仕入れ先から日本全国の商品を揃えているそうです。
また、漆喰壁をよく見てみると、墨で何か書かれています。名前や学歴、「火の用心」などのいわゆる落書きが書いてあります。
ローマ字で書かれた「NIHE」は、代々受け継がれている名前だそうです。
当時の人々の生活に思いを巡らせてみるのも面白いですね。
所在地 : 287-0003 千葉県香取市佐原イ1901
公式HP : 植田屋荒物店
佐原の町がお店の中に お土産にもうれしい「佐伯洋品店」の切り絵
最後に訪れたまちぐるみ博物館は、植田屋荒物店から徒歩3分の場所にある7号館の佐伯洋品店です。
一見普通の洋品店のようですが、お店の壁にはご主人の作品の切り絵がズラリと並んでいます。
切り絵は佐原の風物や仏様をモデルにしたものが多いそうです。
ご主人の野口さんは切り絵をはじめて約20年というベテランで、切り絵教室を3つもされているとのことで納得の腕前です。
切り絵の下書きから、すべてをおひとりでされているそうです。
切り絵からは写真とはまた違い、作り手の魂を感じられました。
佐原のおみやげにいかがでしょうか。
家に帰って見ると、歩いた佐原の町並みが思い浮かぶかもしれませんね。
所在地:千葉県香取市佐原イ606
佐原は一角に古い建物が残っているわけではなく町全体がそのまま残っており、佇まい全体がお宝となっています。
当時を伝えるものが、佐原にはたくさんあります。
長い年月を経た今でも人々の生活の中に生き続けるお宝に触れ、歴史の重みを感じてみてはいかがですか?