重伝建佐原の町並みに残る伝統 小野川沿いの歴史ある醸造を訪ねる旅
かつて、その華やぎが「江戸まさり」と歌に歌われたほど、利根川の水運で栄えた町、佐原。
町なかには今もなお、江戸時代から明治、大正、昭和の初めころにわたる歴史的な建造物が数多く建ち並びます。
今回はその中でも、佐原の発展には欠かせなかった醸造関係の建造物をご紹介します。
この記事の目次
有形文化財「正上」 今もなお江戸時代の店構えを残す佐原の老舗商家
成田空港から京成本線に乗って京成成田まで向かい、JRに乗り換えてJR佐原駅へ。
なんと成田空港からはわずか約38分となっています。
JR東京駅からはJR千葉駅で乗り換えてJR佐原駅へと向かいます。
こちらの行き方では約1時間43分でJR佐原駅に到着します。
かつて、利根川には江戸の人たちが食べるための米や日用品を運ぶ「高瀬舟」という大きな舟が行き来していました。
佐原の町を流れる小野川の下降にも、荷物を積んだり降ろしたりする「だし」ができて、米や醤油、酒が江戸に運ばれるようになりました。
小野川沿いには、米や酒、醤油をつくるための店や、倉庫として使うための蔵ができるようになったといいます。
小野川と川に沿って並ぶ商屋やだしが、かつての水郷都市の面影を残しています。
こちらは、佐原を代表する老舗の「正上」(しょうじょう)です。小野川沿いに面し、佐原駅から徒歩約10分ほどの場所にあります。
だし、店舗、蔵が並ぶ大きな商屋です。
1800年に油屋を創業し、1832年から醤油業を営み、戦後は佃煮の製造販売が主となりました。
店舗は1832年の建築、隣の袖蔵は明治初年の建築となっており、建物はほとんど建築当初のままで、江戸時代の店構えを残しています。
店舗の中には、よろい戸や千本格子などが当時のまま残されています。
当時の戸締り方法であるこちらのよろい戸は、下まで戸を下げることで盗賊対策をしたといいます。今は店の表の千本格子が残っているのは半分だけですが、昔はもう半分もあり、戸締りをする時は千本格子の外側にさらに板を一枚立掛けたそうです。
よく見ると、千本格子の上部にコの字型の金具がついてありますが、この金具で板を留めていたそうです。
このようなことからも、当時は盗賊が多かったことが伺えます。
また、店の中には金庫があったりと、昔の商家の造りがそのまま残されています。
上部を見ると、壁の隅に小さな四角い窓のようなものがあります。これは、店の様子を見るための「様子窓」と呼ばれるものです。
当時、店の表には番頭と何人かの小僧がいて、旦那はほとんど表に出ることはありませんでした。
もちろん昔は電話が無かったため、お客さんが来たら小僧が旦那を呼びに行きました。
旦那は直接表へ出てきたら、会いたくない客にも会うことになってしまいますから、一度この様子窓から覗いて、もし会いたくない客であったら「いないといってくれ」と言って居留守を使ったといいます。
商家ならではの工夫が建物に表れていることがよくわかります。
所在地:「いかだ焼本舗 正上」千葉県香取市佐原イ3406
公式HP:いかだ焼本舗 正上 http://www.m-macs.com/33551/shoujyou/
伊能家から譲り受けた伝統の味 長い歴史を誇る佐原の「東薫酒造」
次に訪れたのは、正上から徒歩約5分の場所にある「東薫酒造」(とうくんしゅぞう)です。
1825年創業で、舟便と水郷地帯の良質な早場米という、酒造りに好適な条件のもとで、190年余りの歴史がある酒造です。
あの日本地図を作った偉人、伊能忠敬が人生の大半を過ごした町が佐原であり、その伊能家からお酒の造り方など、お酒に関する様々な事を譲り受けたといいます。
当時、江戸と佐原は利根川の水運で結ばれており、江戸の生活物資を担っていました。
味噌、醤油、みりんなど醸造関係が盛んでした。というのも、お米で持っていくよりも醸造化して持って行った方が利益になったからです。
昔は小さな町の中に40軒近くも醸造関係の店がありましたが、現在残っている酒造は2軒だけだといいます。
こちらの木造の酒蔵は、明治末期~大正にかけての建築だと言われています。木のくすみ具合が歴史を感じさせます。
東薫酒造の代表的なお酒は、芳醇な香りが特徴の大吟醸酒、「叶」です。
兵庫県産の山田錦という酒造好適米を35%に精白し、低温でじっくりと仕込んだお酒になります。
全国新酒鑑評会で4年連続16回目の金賞受賞など数々の賞を受賞しており、地元の方はもちろん、全国の方から愛されています。
この丸い杉玉は「酒林」ともいって、新酒ができると吊るされます。
「今年も新酒ができました。皆さんよろしくお願いします」という意味を込めて、酒の魔除け、守り神として吊るされるそうです。
東薫酒造では無料の見学を行っているので、是非足を運んで伝統的な酒蔵建築や、酒造りという日本の伝統文化に触れてみてはいかがでしょうか?
所在地:「東薫酒造」千葉県香取市佐原イ627
公式HP:東薫酒造 http://www.tokun.co.jp/
佐原の醸造の名店「馬場本店酒造」 江戸時代から続く数少ない酒造
東薫酒造の道を挟んで隣には、煉瓦の煙突が特徴の趣ある建築があります。
こちらは、佐原に2軒残る酒造のうちのもう1軒、「馬場本店酒造」(ばばほんてんしゅぞう)です。
馬場本店酒造は、天和年間(1681~1683年)に初代が大和国(奈良県)葛下郡馬場村から出て、幕府直轄地として繁栄していたこの佐原の地において糀屋を開いたことから始まりました。酒造りを始めたのは、1842年、5代目のときで、江戸時代後期にはみりん、さらに明治には醤油の醸造も始めたといいます。
蔵は自由に見学することができ、当時使われていた道具なども見ることができます。
こちらは機関蔵といって、昔、石炭を焚き蒸気をつくった場所だそうです。
江戸時代後期、1866年の建物になります。東関東大震災で屋根などが被害を受けたことを機に修繕しましたが、古い柱や梁などはそのままにし、主に昔ながらの工法を駆使して元の形を残しています。
これは甑(こしき)と呼ばれる蒸し器の上に載せる丸形の蒸籠(せいろう)型焼酎蒸留器で、大正から昭和の初めころまで使用されていました。上に水を流し、内側の焼酎の気体を液体にする古い仕組みだそうです。全国で数台しかないと言われており、大変貴重なものとなっています。
こちらにも酒林が吊るされています。先ほどの東薫酒造のものは吊るされたばかりで蒼々としていましたが、1年もするとこのように褐色になるそうです。
この色の変化が、新酒の熟成具合を物語るのですね。
所在地:「馬場本店酒造」千葉県香取市佐原イ614
公式HP:馬場本店酒造 http://www.babahonten.com/
かつて、江戸へ食糧を運ぶ一大穀倉地帯として、米作、味噌、醤油、日本酒などの醸造業が盛んであった佐原の商業の歴史旅はいかがでしたか。
昔の栄華が今なお語り継がれる佐原へ足を運んで、歴史を学びに訪れてみてはいかがでしょうか。
所在地 : 287-0003 千葉県香取市佐原イ614
公式HP : 株式会社馬場本店酒造
かつて、江戸へ食糧を運ぶ一大穀倉地帯として、米作、味噌、醤油、日本酒などの醸造業が盛んであった佐原の商業の歴史旅はいかがでしたか。
昔の栄華が今なお語り継がれる佐原へ足を運んで、歴史を学びに訪れてみてはいかがでしょうか。