京都府伊根で舟屋の生活を覗き見 舟屋の歴史と建築を探訪しよう
大阪から2時間半、特急電車を乗り継ぎ、丹後海陸バス「伊根行き」に揺られてたどり着く京都丹後・伊根。舟屋の歴史や伊根の人々の生活に触れる旅を紹介します。都会から離れ、忙しい日常を忘れ、時間も気にせず、たっぷりと伊根の舟屋に浸かってみてはいかがでしょうか。
この記事の目次
重要伝統的建造物保存地区に認定された京都・伊根に残る「舟屋」の歴史
「舟屋」と聞いて何をイメージしますか。一度は聞いたことや見たことがある方も多いと思いますが、重要伝統的建造物群保存地区に指定された舟屋にはさまざまなタイプがあります。
舟屋は江戸後期から存在すると言われていますが、舟屋の材料は背後の山で採れる木材が使われています。屋根は茅葺だった舟屋ですが、明治から現在にかけて多くの舟屋を瓦の屋根に変更し、全体の90%が瓦屋根でできており、外観の統一を与える存在になっています!
舟屋のタイプは主に5つに分けることができ、船を雨風から守るだけの簡易や造りから1925年(大正14年)に建設された駒型の形状の造りまで様々です。また、タイプだけでなく、舟屋2層目の開口部は6つのタイプがあり、舟屋の中でも地区によってタイプが異なるようです。
2階建ての舟屋が明治時代から主流になり、その用途は様々でした。現在は昔のように釣り道具や作業場として使う舟屋は減少し、全体の4%もありません。伊根の町も高齢化が進み、空いている舟屋が多い中、2階を住居や宿泊にする割合は年々増加しています。
少しでも舟屋の歴史やタイプを知ったうえで、伊根の町並みや海から臨む舟屋の景色を楽しんでください。きっと歴史を知っているから溢れる感動があるのではないでしょうか。
重伝建地区 伊根の舟屋のお家は一世帯に「舟屋・蔵・母屋」を所有
舟屋は約230軒あると言われています。町を歩き、舟屋やその裏手にある道を歩いれいると、舟屋や周辺の歴史深い建物や漁で使う道具も見ることができます。舟屋以外に蔵と普通の民家も混在しています。舟屋や蔵には表札はなく、人の住んでいる気配はありません。どこで伊根の人々は生活しているのかというと、道路を挟んだ山側に母屋があり、そこで生活されています。伊根の町の人は3軒をセットで所有し、「舟屋・蔵・母屋」を持っている方が多いそうです。舟屋の1階は船のガレージ、2階は漁の道具置き場、蔵、生活をする母屋があります。
今では舟屋の2階を道具置場として使うことがなくなり、人口減少や高齢化に伴い空き家の舟屋が増えています。「美しい舟屋を残したい」、「舟屋をより多くの人に知ってもらいたい」そんな思いから舟屋の2階部分を宿泊施設にリノベーションしている舟屋を多く見かけます。3軒で生活を過ごしてきた町の人々の暮らしに変化があるようですね。
大勢で訪れても大丈夫!舟屋群を一望し生活を体感するならこの旅館で
舟屋の中でも伊根湾を一望し、水平線上に舟屋を見ることができる宿が舟屋の中心地、旧役場跡から徒歩約2分の場所にあります。「WATERFRONT INN与謝荘」です。1日1組の小さい宿が多い中、与謝荘は8部屋あるので大勢で泊まることができます。
現在の店主のおじいさんの頃から続く歴史ある宿です。目の前に広がる舟屋群を一望しながらお食事が楽しめるレストランも完備されています。伊根の新鮮な魚介を堪能しながら目の前に広がる景色にうっとりしてしまう、そんな優雅な1日を送ってみませんか。
どのお地蔵様よりセンスが光る「化粧地蔵」に心がほっこり和む瞬間
伊根町漁港のさらに東に徒歩で約10分のところに伊根郵便局があります。郵便局の近くを歩いたらぜひ探して会ってほしいお地蔵様がいます。伊根郵便局の周辺に2か所とてもかわいらしい個性的なお地蔵様を見かけることができます。色とりどりでカラフルな着物を羽織られ、表情もなんだか凛々しいお地蔵様ではありませんか。このお地蔵様は誰かのイタズラにあったのではありません。このお地蔵様は「化粧地蔵」と言われているものです。元々のルーツは京都と言われ、今では日本各地でみられるようですが、今もなお京都北部では数多く残っていると言われています。化粧地蔵は、毎年地蔵盆になると伊根の子どもたちがお地蔵様に色塗りを行うそうです。毎年表情が変わるお地蔵様です。今年のお地蔵様はセンスの良く、少し驚かれた様子ですね。子どもたちの自由な発想と感性が表れているお地蔵様に心がほっこり親近感を覚えます。来年の着物とどのような表情に変化するのか楽しみです。
京都・伊根の町を歩き、舟屋と共に生活をしてきた人々の知識や発想を知ることができる旅をご紹介いたしました。時間を気にせず、どこを見ても絵になる舟屋で日々の疲れを癒してください。