兵庫県豊岡市 重伝建 出石城下町の中で出石の歴史文化に浸る旅
兵庫県豊岡市にある出石には、かつて「出石城下三千軒」と呼ばれるほど活気ある城下町が形成されていました。
町屋が立ち並び、歴史ある町並みが美しく、その魅力に見せられる人も数多いでしょう。
今回はその町並みの中にある出石の歴史文化を紡ぐ建造物と文化財を訪れます。
この記事の目次
重伝建 出石城下町のシンボル 辰鼓楼に込められた池口忠恕の思い
出石城から北へ進むと、町のシンボル辰鼓楼(しんころう)へたどり着きます。
この辰鼓楼は廃城となった出石城三の丸大手門石垣を利用し、明治時代初期に建設された時計台であり、豊岡市出石伝統的建造物群保存地区を代表する建物です。
楼閣は1871年に完成、その後1881年に医師 池口忠恕が大時計を寄付して現在の形になりました。
忠恕は出石藩の医者のもとに生まれ、大阪の適塾・東京の佐藤順天病院で西洋医学を学びます。
修業を終えた忠恕は出石に戻り、1880年に医院を開業。
薬代を払うことのできない貧しい農民たちも診ていたそうです。
しかし忠恕自身も大病を患います。
その時に忠恕のもとに多くの人々が見舞いに訪れました。
忠恕は感銘を受けて、そのお礼にと大時計を寄付したのです。
かつては辰鼓楼の上から太鼓で出石の城下町に時を知らせていました。
それにちなんで現在では午前8時・午後1時に太鼓が鳴り、夕方には瓦鐘の音が町に響き渡るそうです。
今では3代目の時計が時を刻んでいる辰鼓楼は、風情ある出石の城下町によくなじんでいました。
重伝建 出石城下町に残る 出石家老屋敷で出石の歴史文化を体感
辰鼓楼から南に歩き、突き当りを右手に曲がると、立派な長屋門が見えます。
こちらは江戸時代の武家屋敷「出石家老屋敷」です。
上流武士の居住地であった内町通りに向き合うように建っています。
1876年に町の約8割が燃える大火事がありました。
近辺の建物はほとんど全焼しましたが、外堀があった出石家老屋敷は被害を免れたそうです。
そして1990年に出石の歴史や文化を発信する館として開館しました。
正面からではわかりませんが、武士の家には珍しい2階建てです。
敵が攻めてきた際に刀が扱いにくいようにと2階の天井は低くなっています。
中は書院造の意匠が見られ、行灯が灯りをともして、温かい空間を生み出しており、仙石騒動の資料や無形民俗文化財「槍振り」といった出石藩に関する資料が展示されています。
ぜひ出石家老屋敷で出石の歴史を体感してください。
豊岡 出石お城祭りで 無形民俗文化財 大名行列「槍振り」を体験
最後に、先ほどの出石家老屋敷で展示されていた無形民俗文化財「槍振り」を体験します。
「槍振り」は1863年に出石藩主であった仙石久利(せんごくひさとし)公夫人が江戸の赤坂奴をお供に従えて、お国入りしたのが始まりです。
行列になって、長いものは全長5mの槍、重いものだと20キロの槍を片手で持ち、合図に合わせて隣の人に片手で投げます。
実際に練習用の槍で体験しましたが、思うように動かせず難しかったです。
なんと、こちらの練習用は実際の半分の重さということで、周りの小柄な人でもできていて驚きを隠せませんでした。
歴史ある出石の町並みの中で行われる「槍振り」が見られるのは、毎年11月3日に開催される「出石お城祭り」の日限定です。
この時に槍振り体験もできますので、ぜひ一度出石の文化に触れてみてください。
出石の歴史文化を感じる旅はいかがでしたか。
人々の温かい思いを感じる大時計や江戸風情残す武家屋敷を訪れると、ふっと当時の景色が目に浮かびます。
出石を訪れた際には、ぜひ歴史的な町並みの中に浸り、歴史文化を肌で感じてみてください。