HISTRIP(ヒストリップ)|歴史的建造物に泊まろう

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飛騨の里で白川郷の産業から学ぶ 知られざる飛騨高山の文化とは

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    岐阜県の飛騨高山市は日本列島のほぼ中央に位置します。古くは縄文時代から東西南北の文化が押し寄せ、複雑に交錯しあい発展をしてきました。
    山深く閉鎖された高山盆地では、さまざまな高山特有の文化が発展してきました。
    そんな文化を紐解く旅へ出かけてみましょう。

     

     

    急斜面に育った木をそのままに使用!先人の知恵が詰まる飛騨の建築

     
    飛騨の里は、豪雪に耐えてきた合掌造りや榑葺きの屋根など、飛騨の代表的な民家30数棟が立ち並び、昔の農山村風景を形づくる民家の博物館です。

    各民家では、農山村の生産・生活用具が展示されます。さっそく先人たちの知恵の詰まった飛騨の里へ出かけましょう。

     

     

    <01'_takayama_飛騨の里>

     
    JR飛騨高山駅から飛騨の里通り入り口までは車で約5分。また駅前のバスセンターから一日乗降り自由の循環バスが運行しています。
    飛騨の里通りを登ること約5分で飛騨の里へ到着します。

     

     

    <02_takayama_飛騨の里看板>

     
    入場口を入ってすぐ、とても美しい光景が広がっていました。
    そこでは時間がゆっくりと流れているようで、目の前に広がる池とそのほとりに並ぶ合掌造りの民家に、まるでタイムスリップしたかのような錯覚を覚えました。

     

     

    <02.5_takayama>

     

     

     

    まずはじめに世界遺産である岐阜県白川郷にあった民家を訪れます。

     

     

    <03_takayama_旧西岡家外観>

     
    ここは旧西岡家といって4階建て切妻造り平入り茅葺きです。

     

     

    <04_takayama旧西岡家看板>

     
    一階が住居部、二階より上が養蚕、物置となっていました。 元々岐阜県白川郷加須良(かずら)にあった建築物です。
    他の合掌造りとは少し違った造りになっています。

    その大きな特徴として「チョウナ梁」というものがあります。

     

     

    <05_takayama旧西岡家チョウナ梁>

     
    チョウナとは、先端が折れ曲がった荒削道具で、主に柱や梁などの建材を削り仕上げるために使用されていました。
    チョウナ梁は、急斜面に育ったため根の根本が大きく曲がった樹木をそのまま家屋の梁に利用しているもので、形がチョウナに似ているためチョウナ梁と呼ばれています。
    この自然そのままの建材で建物の構造を強固にする工夫がなされています。
    大きく曲がった木は建材として使いづらいですが、ムダにせずその特徴を活かして利用するという工夫に感動しました。

     

     

     

    寺の住職が暮らした4階建て旧西岡家で養蚕を学ぶ世界遺産白川郷

     

     
    山がちな飛騨地方は、耕地面積が少なく積雪が多い地域のため、農業以外のさまざまな生業に日々の糧の多くを依存するところが大きくありました。

     

     

     

    <06_takayama旧西岡家>

     
    その中でも飛騨地方では、換金作物として重要な養蚕、カイコの飼育は江戸時代から盛んに行われていた地域でした。
    合掌造や入母屋造りにみられる屋根裏の広い空間は、養蚕の作業場として最大限に利用するため生み出されたものとされており、当時いかに養蚕が重要な生業であったかをうかがい知ることができます。
    高い屋根裏を2階、3階と区切って設けられた作業場は、養蚕に適した湿度に自然に調整されるという効果も持ち合わせています。

     

     

    <07_takayama旧西岡家>

     

     

    ここ旧西岡家でも養蚕農業がさかんに行われていました。
    ここでは、実際の蚕の糸ができるまでの過程などを知ることができます。

     

     

    <08_takayama蚕の糸をつくる道具>

     

     

    旧西岡家は広いですが、その全体をうまくまわれるような展示がなされています。
    養蚕業と先人の生活の工夫が同時に知ることができ、その一つひとつに馴染みのないことが多くとても新鮮な気分になりました。

     

     

    イチイの木目を活かした一流木工品 一位一刀彫 日本遺産に登録

     
    飛騨の工芸品、一位一刀彫(いちいいっとうぼり)をご紹介します。

    一位一刀彫とは岐阜県飛騨地方で生産される木工品です。

     

     

    <09_takayama一位一刀彫の作品>

     

     

     

    <09_takayama一位一刀彫の作品>

     

     
    材料はいちいを使用します。
    イチイの樹木は岐阜県の位山が有名な産地で、軽くて粘りがあり、狂いもあまり見られず、弾力性に富むといった加工品の材料に必要な要素を多く持ちます。
    そのような加工性の高さから繊細な彫りに向いており、家具の装飾部分や木彫り彫刻の材料として古くから親しまれてきました。
    一位一刀彫は、いちいの木目をそのまま活かし、いちいの内側の赤みがかった赤太(あかた)といちいの外側の白みがかった白太(しろた)の色合いをうまく出しているのが特徴的な彫刻です。
    なんと表面には何も塗らずそのままだそうです。
    江戸時代に根付彫刻師の松田亮長が、イチイの木目を活かした根付を製作したのが始まりとされます。

     

     

     

    <11_takayama一位一刀彫の作品>

     
    また、使用される木材は樹齢が約300年以上のものを使用しているようです。
    木々が生きてきた歴史が詰まった贅沢な素材を利用した工芸品は特別な価値があります。

    旧小林家では一位一刀彫の工房が公開されており、目の前で彫り進められ、再びイチイの木に命が吹き込まれる瞬間を目にすることができます。

     

     

    <12_takayama一位一刀彫の作品>

     
    飛騨民俗村 所在地 : 岐阜県高山市上岡本町1−590

     
    飛騨の文化を紐解く高山市飛騨の里をめぐる旅はいかがでしたか。
    高山の深く壮大な自然が生み出した環境。先人たちがそんな自然と共存する形でさまざまな生活の工夫をなしてきました。
    いまも紡がれる文化を感じにぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。

     

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