HISTRIP(ヒストリップ)|歴史的建造物に泊まろう

HISTRIP MAGAZINE icon HISTRIP MAGAZINE

和歌山県九度山 千年の時を超えて息づく伝統 高野紙を体感する旅

  •  

     

    弘法大師が開いた真言密教の聖地高野山にほど近く、戦国武将真田幸村ゆかりの地としても知られる和歌山県九度山。
    かつてそこは高野山の僧侶たちの修行を支えた「高野紙」の生産地でした。
    今回はその高野紙を学び、体験できる施設「」を訪ねます。

     

     

     

    高野紙の伝統を伝える 九度山 高野紙伝承体験資料館 紙遊苑へ

     

     
    九度山で作られる手漉きの和紙「高野紙」は硬くて凹凸が少ないことから、筆記具としてはもちろん和傘や障子にも用いられていました。
    しかし洋紙の普及によって次第に使われなくなり、高野紙を手掛ける職人も少なくなってきます。
    そんな中「高野紙の伝統をこの先も伝えていきたい」という思いのもとに、1999年に建てられたのが高野紙伝承体験資料館「紙遊苑」です。
    紙遊苑は慈尊院から金剛峯寺へと続く世界遺産 高野山町石道沿いに建っており、長屋門の美しい白壁が迎えてくれました。
    門をくぐって中へ入ると、苑内には高野紙の製作過程を再現したジオラマや高野紙を用いた作品が並んでいます。
    ふと天井を見上げると、大きな凧が浮かんでいました。
    高野紙の上に鮮やかな彩色で描かれた凧は非常に力強いものでした。
    一度歴史ある高野紙の作品を眺めながら、歴史と伝統を感じてみませんか。

     

     

     

    ユネスコ無形文化遺産 細川紙のルーツは九度山で作られた高野紙?

     

     
    紙遊苑の中でひときわ大きな作品があります。
    それは細川紙で作られた「七夕雪洞(たなばたぼんぼり)」です。
    細川紙は2014年11月27日に「和紙:日本の手漉(てすき)和紙技術」としてユネスコ無形文化遺産に登録され、いま注目が集まっています。
    ではなぜ高野紙の伝統を伝える紙遊苑に、細川紙があるのでしょうか。
    それは決定的な確証はないものの、細川紙のルーツが高野紙であるという説があり、細川紙の産地である埼玉県小川町から寄贈されたそうです。

    ではここで少し高野紙と細川紙のルーツに迫ってみましょう。
    唐に渡り真言密教の教えを受けて帰国した空海は、今から約1200年前の816年に高野山を開きます。
    真言密教の聖地となった高野山では、日々の写経や文書を作るために紙が必要不可欠でした。
    しかし開山当時、高野山の寺院から都までの道は遠く険しく、紙は簡単に手に入るものではありません。
    そこで空海が唐で学んだ紙漉き(かみすき)の技術を高野山の麓にあった集落に伝え、現在の高野町から九度山にかけての10集落で紙の生産が始まります。
    これが高野紙のはじまりです。
    そしてこの10集落のうちのひとつに「細川村」という村があり、細川村で作られていた細川奉書の技術が小川町へと伝わったという説があります。

    結婚までも厳しく制限され、門外不出としていた高野紙の技術がなぜ遠く離れた小川町へと伝わったのでしょうか。
    細川紙と高野紙の関係はいまだ謎に包まれています。
    ぜひ高野紙を手に取り、その不思議なお話に考えを巡らせてみてください。

     

     

     

    千年の伝統技術を肌で感じる 九度山 紙遊苑で高野紙の紙漉き体験

     
    さて高野紙の歴史を学んだ後は、いよいよ紙漉き体験です。

    高野紙製作は大きく分けて7つの工程があります。
    まず原料となる楮(こうぞ)を採取し、次にその楮を蒸します。
    そして温かいうちに黒い皮を剥がし、繊維を柔らかくするために煮ていきます。
    柔らかくなったら叩いて繊維を美しく整え、漉き上げます。
    最後にしっかりと天日で干したら完成です。
    体験では、これらの工程のうち「漉き上げ」を中心に行います。
    はじめに丸く繊維状になった楮を「すき舟」という容器に入れ、水と混ぜます。
    すると丸まっていた楮が水中に広がっていき、一気に水が白くなりました。

     

     

     

    <02_kudoyama>

     

     
    これに「トロロアオイ」という植物から採った粘液を加えます。
    ここから紙漉き開始です。
    水をすくっては揺らして水を切る、この作業を繰り返して繊維を均一にしていきます。
    単純なように聞こえますが、なかなか均一にすることができません。
    苦戦しながらも、何とか紙漉きを終えてそっと木の板に移します。
    約2時間ほど干して、ついに高野紙が完成しました。

    日に照らせば薄く透け、独特の手触りがあります。
    旅の思い出に世界にひとつだけの高野紙を作ってみてはいかがでしょうか。

     
    九度山の伝統 高野紙を感じる紙遊苑の旅はいかがでしたか。
    実際に高野紙を手に取ると、普段ふれる洋紙とは違い、固く強い紙の中に素朴な温かみを感じました。
    まるでそこにはかつて高野紙にのせた僧侶たちの心が生きているようです。

     

     

     

    このマガジンにおすすめの目的地