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羽黒山の歴史ある門前町「手向町」 町に受け継がれる修験道の風習

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    清らかな空気に包まれた神聖な地、山形県鶴岡の羽黒山(はぐろさん)。

     

     

     

    この地域に古くより根付いた羽黒修験道は、時を経た現在も地域の人々に支えられながら、その自然と信仰の結びつきを伝えています。

     

     


    今回は、羽黒修験道が広まった歴史や、地域の人々によって受け継がれている修験道の文化を旅します。

     

     

     

    東の奥参り「出羽三山」 羽黒山手向で今もなお色濃く残る歴史文化

     

     

     

    <01_tsuruoka:羽黒山入り口と参拝者>
    今なお多くの参拝者が訪れる出羽三山(でわさんざん)ですが、古来から出羽三山は人々の信仰を集める場所としてとても重要な役割を果たしてきました。

     

     


    <02_tsuruoka:参道杉並木>
    、地域やある特定の集団が神仏を参拝をするために講をつくって何日もかけてお参りする「講中(こうちゅう)」が全国的に広まったそうです。

     

     


    この出羽三山も、宿坊に泊まり、石段を歩き山頂をお参りし、月山・湯殿山をお参りするということがブームになったといいます。

     

     


    講中は、地域の代表の人がお参りし、地域の皆さんのお札を貰うのだそうです。

     

     


    こういった講中を作ってお参りするという風習が羽黒山のふもと、手向(とうげ)町では未だに受け継がれているといいます。

     

     

    <03_tsuruoka:参道と参拝者>

    その手向町では、「雪道を 月山にのぼり 坂むかえ」といって、春一番に地区の代表の人たちが雪道を月山に上り、山の神様をお迎えに行くのだそうです。

     

     


    5月4日に登って5日に湯殿山に降りてくるのを途中まで迎えに行くことを「坂むかえ」といって、村全体でお迎えに行くそうです。

     

     


    その際、代表だけでなく村の人々みんなが5月3日あたりから、穢れを避けるための精進潔斎(しょうじんけっさい)をするのだといいます。

     

     


    つまり、お肉・お魚・卵も食べず、飲食を慎み身体を清めるそうです。

     

     


    また、自分の家の人が行く場合は、5月1日から精進潔斎をすることもあるのだそうです。

     

     


    大変な危険を伴う講中の無事を願う村の人々の心意気は、昔からの文化が途絶えることなく、しっかりと今に受け継がれていることの証ですね。

     

     


    <04_tsuruoka:参道中の空>

     

     

    所在地 : 997-0211 山形県鶴岡市羽黒町手向

     

     

     

    羽黒山信仰の町「手向町」 ゆったりとした雰囲気が漂う趣ある宿坊街

     

     

     

    少し手向町のお話しをしましたが、手向町(とうげちょう)は羽黒山の門前町として宿坊が軒を連ねる宿坊街です。

     

     


    JR鶴岡駅から庄内交通バス、羽黒・月山線で約40分走ると宿坊街に入ります。

     

     


    宿坊とは、仏教系、神道の参拝者のために作られた宿泊施設です。

     

     


    <05_tsuruoka:宿妨街の風景>
    通りのあちらこちらに「○○坊」という看板があり、これらすべてが宿坊です。

     

     


    <06_tsuruoka:宿坊>
    出羽三山は6世紀に修験道場として開かれ、江戸時代に多くの参詣者を集めました。

     

     


    すると各地から訪れる参詣者に宿泊所を提供し、道中の案内を買って出た修験者が増え、三山の入口にあたる羽黒山麓に修験者たちの集落が形成されたといいます。

     

     


    1872年の修験禁止令を期に、手向町にあった300軒もの宿坊は40軒ほどに激減しましたが、趣ある町並みは昔とあまり変わらず、今も講中や参拝者を受け入れ、歴史と文化を伝え続けています。

     

     


    <07_tsuruoka:宿坊の冠木門>
    町を歩いていると、どこの宿坊の前にも門が立っていることに気が付きます。

     

     


    宿妨街では、敷地の入り口に冠木(かぶき)門を立て、注連縄を張るのだといます。

     

     

    それが、宿坊が宗教施設であることの証になります。

     

     

    <08_tsuruoka:棟木や玄関に吊るされた廻し網>

     

     

    <09_tsuruoka:廻し網>
    また宿坊だけでなく、多くの民家でも玄関や棟木に網飾りを掛けているのを見かけました。

     

     


    これは「廻し網」といい、年越しの神事に使われた網を再利用したもので、魔除けとしてかけるのだそうです。

     

     

     

    宿坊では宿泊することはもちろん、精進料理をいただくこともできます。

     

     


    宿坊での宿泊や精進料理は予約が必須のため、事前にお電話で確認することをおすすめします。

     

     

     

    所在地 : 997-0211 山形県鶴岡市羽黒町手向

     

     

     

    羽黒修験道の風土と文化を凝縮した精進料理 宮田坊で味わう山の恵み

     

     

     

    私は今回、「宮田坊」さんで精進料理をいただきました。

     

     


    こちらは、バス停「黄金堂」下車すぐのところにあります。

     

     


    <10_tsuruoka:宮田坊>

     

     

    <11_tsuruoka:宮田坊>
    宮田坊は約150年も前から、羽黒三山信仰者の祈願を支え続けてきました。

     

     

    その外観は厳かでありながらも、どこか落ち着いた雰囲気があります。

     

     

     

    <12_tsuruoka:精進料理>
    そしていただいた精進料理がこちらです。

     

     


    精進料理は出羽三山で採れる山菜などから作られる、伝統的な料理です。

     

     


    出羽三山に参拝する人々は、精進料理をいただくことで身を清め、山へ行く準備を整えます。

     

     


    <13_tsuruoka:精進料理>
    また出羽三山に伝わる精進料理は、一皿ごとに呼び名があるといいます。それぞれが聖地ゆかりの風景を模しているそうです。

     

     


    たとえば写真左上の月山筍の煮物は「月山の掛け小屋」、右下の胡麻豆腐のあんかけは「出羽の白山島」という呼び名だそうです。

     

     


    <14_tsuruoka:胡麻豆腐>
    ちなみに「月山筍(がっさんだけ)」というのも、名前の通りこの地域ならではの食材です。

     

     


    精進料理の食材は、時期によって山で採れる旬のものを使った料理をいただくことができます。

     

     


    「食べる」行いも修行とする精進料理ですが、いかに出羽三山の自然と一体化しているかがわかります。

     

     

     

    お味は山菜を使った料理であるということもあり優しい味わいで、食材が持つ味や食感を楽しむことができます。

     

     


    <15_tsuruoka:青水の胡麻和え>

     

     

    <16_tsuruoka:参道中の青水>
    こちらは羽黒山参道に生えている山菜、青水(あおみず)ときくらげの胡麻和えです。

     

     

     

    これから入る山の食材をいただくという行為は何だか不思議な感じがしましたが、皆さんも是非出羽三山を参拝する際は精進料理をいただき、身も心も清めてみてはいかがでしょうか。

     

     

     

    所在地 : 997-0211 山形県鶴岡市羽黒町手向225番地

     

     

    公式HP : 出羽路の宿 宮田坊

     

     

     

    出羽三山への参拝が広まった歴史と、羽黒山の麓・手向町で受け継がれる修験道に関する文化をご紹介してきました。

     

     


    古くからの伝統が、今もなお村の人々によって受け継がれていることの素晴らしさは、そう簡単に語れるものではありません。

     

     


    皆さんも是非、実際に訪れて目で見て、聞いて、感じてみてはいかがでしょう。

     

     

     

     

     

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