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世界遺産 安芸の宮島 ~自然が生んだ奇跡の造形 その歴史に迫る~

  • 海に浮かぶ社、厳島神社で有名な広島県宮島。
    島全体が信仰の対象とされ、フェリーから降り立った瞬間、澄んだ空気に包まれます。
    今回は神が宿る島「」の歴史をたどり、その歴史と神秘性を感じるオススメのスポットを巡ります。

     

     

     

    なぜ宮島は神秘的な島となったのか

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    島全体が信仰の対象となっている宮島。
    その信仰は厳島神社があるから、ではありません。実は太古より宮島は自然崇拝の対象とされていました。
    宮島は自然崇拝からはじまった信仰の島だったのです。

     

    宮島が自然崇拝の対象となった理由に挙げられるのが、山の峰を結んだ「稜線」です。

    宮島の山々が描く稜線を遠くから眺めてみると、ひと山ひと山傾斜がきつく、谷が平行に形成されているのがわかります。この平行に整った様子が、神秘的であると崇拝されるようになりました。

     

     

    このような整った稜線と谷が生まれた背景には、「花崗岩(かこうがん)」があります。
    宮島を含めた中国地方は、マグマが地下深くで冷えて固まった岩石である花崗岩でできています。花崗岩の内部には、縦横に「節理(せつり)」と呼ばれる亀裂が入っており、そこに水や空気が入ると風化していくのです。

     

    数百万年前は宮島全体がひとつの大きな花崗岩であり、長い年月をかけ、節理に沿って風化が進み平行な稜線と谷ができました。
    花崗岩が生み出した地形が、宮島の神秘性を生み出している原点といえます。

     

     

    フェリーで宮島へ向かう際には、海に浮かぶ大鳥居はもちろん「稜線」に注目してみるツウな行き方をしてみてはいかがでしょうか。

     

     

    宮島の神秘性を 近くで 遠くで 感じる弥山のスポット

     

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    神秘的な宮島を「見て」感じるスポットを2つご紹介していきます。

     

     

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    まずは花崗岩が風化して生まれた奇跡の産物「くぐり岩」です。
    宮島中央に位置する弥山(みせん)の登山道終盤に現れます。自然にできたとは思えない、岩と岩が重なり合った形になっているくぐり岩。年々地震の影響で、低くなってきていると言われています。
    自然によって生まれ、自然によって変化しているのは興味深いですね。
    くぐり岩以外にも、弥山の登山道沿いには、花崗岩ならではの「奇岩」がたくさん存在しています。自然の芸術作品を鑑賞しながら登山をすれば、おもしろいかもしれませんね。

    「近く」で見たら、次は「遠く」から見て、神秘的な宮島を感じましょう。
    花崗岩が生み出した稜線と谷を一望できる「弥山展望台(みせんてんぼうだい)」です。
    弥山展望台は、一つ目のくぐり岩を抜けた先、標高535mを誇る弥山の頂上にあります。
    ロープウェイを降り、約30分の登山を経てたどり着くのですが、疲れも忘れる展望台からの絶景を求めて訪れる人々が後を絶ちません。

     

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    360°のパノラマ。岩国や市街地まで見渡すことができます。
    この弥山山頂から見る景色は、初代内閣総理大臣 伊藤博文が「日本三景の一の真価は頂上の眺めにあり」と絶賛したほど。
    お手洗いや休憩スペースもあるので、ゆっくりと眺めを楽しめますよ。

     

    1200年燃え続ける 弥山霊火堂 きえずの火

     

    <写真07_霊火堂>

     

     

    弥山は古来より「自然崇拝」の対象として、人々から崇められてきました。
    その宮島の神秘性に魅せられた一人に、空海がいます。

     

     

    <写真08_護摩>

     

     

    空海は806年に唐から京都へと帰る道中、宮島を見て「霊場に違いない」と感じ、お堂を建てたと伝わります。現在は再建された美しい弥山本堂が見られますが、空海が創建したお堂は草案のようなものであったそうです。
    空海はそこで100日も記憶力を向上させる修行「求聞持(ぐもんじ)」を行いました。

     

     

    その際に使われた火は、1200年経ったいまも「きえずの火」として、弥山本堂の向かいにある弥山霊火堂で燃え続けています。
    広島市にある平和公園の「平和の灯」も、もとはきえずの火だそうです。
    弥山霊火堂では、きえずの火で沸かした湯で淹れた、お茶をいただくことができます。あらゆる病に効く・幸せがやってくると言われる、きえずの火で沸かした湯を求めて足を運ぶ人もいるのだとか。
    訪れた際には、健やかな未来を願い一杯いただいてみてください。

     

     

    <写真12_ろうそく>

     

    また弥山霊火堂の前にある献灯に、きえずの火を灯すこともできます。
    空海の開山以後、足利義尚・福島正則・伊藤博文といった歴史に名を残した著名人が篤く信仰した弥山。
    勢いよく燃えるきえずの火から、多くの人々の信仰心を感じることができます。

     

    伊藤博文も崇拝した三鬼堂の三鬼大権現

     

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    弥山霊火堂からすこし登ると、日本で唯一「鬼」が祀られている三鬼堂(さんきどう)があります。
    三鬼堂は空海が弥山を開山した際に、三鬼大権現(さんきだいごんげん)を勧請してお堂に祀ったのがはじまりです。
    三鬼大権現は、天狗を従え、神通力で生きるものすべてを救うと言われ、「福徳」を司る追帳鬼神(ついちょうきしん)・「知恵」を司る時眉鬼神(じびきしん)・「降伏」を司る魔羅鬼神(まらきしん)の三神を指します。

     

    そんな三鬼堂には、ある伝説が語り継がれています。
    ときは江戸時代、弥山には天狗が出ると言われておりました。それを聞いた、当時の安芸国大名 福島正則は、弥山の天狗退治へと出向きます。道中に山伏が横になっており、正則は道を開けるように怒鳴ります。
    すると山伏は天狗に変化したのです。
    正則は恐れおののき、対抗することができません。そのとき厳島神社の神主が現れて、天狗を説得しました。
    そして天狗は「邪念なくば通す」と言います。それを聞いた正則は心から弥山を崇めて目を開くと、天狗の姿はありませんでした。
    その後正則は立派な三鬼堂を建て、二度と天狗が現れなくなったという伝説です。
    三鬼大権現の偉大な力を感じる伝説ですね。

     

     

    ちなみに三鬼堂に掛けられている額に書かれた文字は、伊藤博文の直筆。
    伊藤博文は、三鬼大権現を篤く信仰した人物のひとりで、弥山の山道を整備した人物でもあります。

    帰り天狗に襲われぬよう、手を合わせて三鬼大権現にお祈りしてみては。

     

     

    宮島がもともとひとつの花崗岩であったのは驚きですね。
    そこから何百万年という年月をかけて、いまの神秘的な宮島ができたと思うと、自然の生み出す圧倒的なパワーに感服します。
    一歩宮島の地に足を踏み入れると、その自然の力や神秘性に魅せられることでしょう。

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