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秀吉への愛を感じる高台寺 ねねが込めた想いに触れる京都旅行

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    京都の人気観光地「」に位置する高台寺。高台寺は、豊臣秀吉の正室である北政所ねねが秀吉を想って建てた菩提寺でした。戦国時代には珍しい恋愛結婚で結ばれた2人は、晩年までずっと仲が良かったといいます。

    ねねは秀吉が亡くなった後も、秀吉のことを思って建てた菩提寺へ毎日通いました。そんな美しい物語のある場所、高台寺を訪れてみましょう。

     

     

     

    ねねが秀吉のことを思って建てた高台寺

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    京都東山にあるねねの道。この小道を登ったさきに、高台寺はあります。石造りの階段を登ると、一段ずつ歴史をさかのぼっていくような気持ちになりました。
    正室であったねねは、1598年に京都の伏見城で亡くなった秀吉の安らかな眠りを祈って1606年に高台寺を建てました。
    高台寺の名称は、ねねが出家後に後陽成天皇より賜った「高台院(こうだいいん)」の院号にちなみます。

     

    【恋愛結婚で結ばれた秀吉とねね】
    亡き夫のために菩提寺を自ら建てるほどの愛情は、どのように育まれたのでしょうか。そこには、戦国時代に主流だった政略結婚ではなく、恋愛結婚で結ばれたという背景があります。
    当時14歳だったねねは、まだ織田信長のわらじを温めていた頃の秀吉に出会います。秀吉はねねに一目惚れし、多くの反対がある中、やっとの想いで結ばれました。ねねは秀吉に尽くし出世を支え、秀吉の部下の食事の世話をしたのも彼女だといいます。

    【高台寺は家康の支援で建てられた】

     

     

    〈01_kodaiji_高台寺正面門〉
    このように立派な高台寺。境内は優雅で広々とした造りとなっていました。その創建の背景には徳川家康が当時の政治的配慮から多くの資金を援助したと言われています。
    京都所司代である板倉勝重の指揮のもと、ねねがわが子のように可愛がっていた堀直政や、秀吉子飼いの武将であった福島正則、加藤清正、浅野長政といった武将も資金を工面しました。

     

    ところで、秀吉を祀る豊国神社など、豊臣時代の関係各所の多くには領地を没収するなど徹底して厳しくあった徳川幕府。秀吉が息子の鶴松を想って建立した祥雲禅寺などは智積院にゆずられ、取り払われてしまっています。しかし、高台寺を建てる際には、家康が資金面で多大なる援助をしたのはなぜだったのでしょうか。そこにはねねの人柄があったとされています。
    ねねを慕う武士も多く、関ヶ原後の停戦交渉など政治的にも大きな役割を果たしていました。そんな彼女を無下に扱うと、敵にまわす武士も多かったため、家康自身丁重に扱ったのではないでしょうか。

     

     

     

    高台寺各所に見られる秀吉への想い

     

    〈02_kodaiji_庭園①〉

     

    【400年の歴史を伝える名勝庭園】
    高台寺に入るとまず目に入るのは、高台寺の魅力のひとつ、国の史跡・名勝に指定されている美しい庭園です。
    庭園は、桃山時代に活躍した名作庭家で千利休の弟子でもあった小堀遠州(こぼり・えんしゅう)が手がけたものです。遠州は石組や配置に特に定評があり、得意としていました。高台寺庭園は、秀吉の好みが反映され、桃山時代らしい華やかな雰囲気のお庭になっています。
    東の「臥龍池(がりょうち)」と西の「偃月池(えんげつち)」を中心に造られた池泉回遊式庭園は、二度の大火に見舞われながらもいまも、高台寺が創建された約400年前とほぼ同じ姿を伝えているそうです。ねねが実際に見ていた景色を、現在の私たちも楽しむことができます。

     

     

     

    【ねねが秀吉を想って立った観月台】

    〈03_kodaiji_庭園②開山堂も写り込んでいるもの〉

     

    開山堂と北書院を結ぶ回廊を楼船廊、回廊の中間にある、三方に唐破風の屋根を持った建物を観月台といい、観月台は伏見城の遺構と伝えられています。境内のいたるところに秀吉が築城した伏見城の遺構があることから、秀吉への想いを感じることができることでしょう。

     

    【高台寺第一世の住持を祀る開山堂】

     

    〈04_kodaiji_開山堂〉

     

    庭園を眺めていると、回廊の奥に小さなお堂が見えました。こちらのお堂は開山堂と呼ばれ、高台寺第一世の住持(じゅうじ) 三江紹益禅師(さんこうしょうえきぜんし)が祀られています。
    三江紹益禅師とともに、ねねの兄である木下家定等の像も安置されています。天井には秀吉が使った御船と、ねねが乗っていた御所車の材料が両方とも用いられており、二人がずっと一緒にいることを示しているかのようです。

     

    【高台寺一番の見どころ方丈庭園】

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    続いて中に入ります。一番の見どころである方丈に来ました。ここからは、方丈前庭を見ることができます。枯山水の庭園には、砂盛がされていました。枝垂れ桜が美しく、思わず方丈に座って庭を見つめてしまいました。

     

    【秀吉とねねが並ぶお霊屋】

    〈05_kodaiji_お霊屋〉

     

    続いて訪れたのは、開山堂より東側にあるお霊屋。秀吉とねねを祀っている場所です。厨子内の左右に秀吉とねねの木像を安置しており、幸せそうに二人並んでいる様は微笑ましいですね。
    かつて一世を風靡した狩野永徳の絵もあるのでぜひ見逃さないでください。
    【秀吉が愛した茶を感じる傘亭・時雨亭】

     

    〈06_kodaiji_傘亭〉

     

    さらに奥へ進むと伏見城から移建したとされる傘亭・時雨亭という2つの茶室があります。
    単層で宝形造の傘亭は、”屋根裏に放射状に組まれた竹があたかも傘をひろげたように見えることから”「傘亭」と名付けられました。二層で入母屋造の高堂は、傘亭の名に因み、「時雨亭」としました。
    時雨亭はねねが大阪夏の陣の際に大阪城の落城を見ていた場所であったと言われており、どこか静寂な雰囲気を感じました。

     

    〈09_kodaiji_傘亭天井〉

     
    秀吉がお茶をこよなく愛し、しばしば茶会を催していたことから、高台寺では一年を通して、季節ごとにお茶会が開かれたそうです。

     

     

    〈10_kodaiji_時雨亭外壁〉

     

     

     

     

    【非日常を感じる竹林】

    〈11_kodaiji_高台寺竹林〉

     

    茶室を後にし出口へ向かうとそこにはなんとも美しい竹林が広がっています。

    静かで都会の喧騒を忘れさせる空間にいると、秀吉を失ったねねの切なさを感じました。

     

     

     

     

    高台寺西側を通る「ねねの道」を歩き ねねの居住地、圓徳院へ

     

     

    〈12_kodaiji_圓徳院正面門〉

     

    高台寺の西側に通る畳の道は「ねねの道」と呼ばれています。晩年、ねねが住居のある圓徳院(えんとくいん)から高台寺に毎日通ったことから「ねねの道」とつけられました。
    ねねの道は、電線が地中に埋め込まれ、人力車が走っていたり着物姿の人がいたりと、情緒ある景観を楽しみながらまち歩きができるスポットです。

     

    【ねねが秀吉を想いながら晩年を過ごした高徳院へ】
    そんなねねの道を通り高台寺から次に訪れたのは、ねねが晩年を過ごした地、圓徳院。秀吉と共に二人が過ごした伏見城から、化粧御殿や前庭を移築して建てられました。伏見城で秀吉と過ごした日々に思いを馳せながら、余生を過ごしたのでしょうか。
    そんなことを考えながら、圓徳院の長屋門をくぐります。

     

    〈13_kodaiji_秀吉公好み手水鉢〉

    方丈庭園「南庭」は見事な枯山水で、大きな岩が迫力ある景観を生み出しています。秀吉が生きていた時代は「豪華爛漫」な桃山文化でした。
    素朴な味わいある枯山水も、桃山文化の影響を受けて豪勢さが加わっているのですね。

     

     

    〈14_kodaiji_方丈庭園南庭〉

     

    【出世や勝負運に後利益!三面大黒天尊天】

     

     

    〈15_kodaiji_三面大黒天尊天〉

     

    庭園を過ぎると三面大黒天尊天(さんめんだいこくてん)が現れました。
    三面大黒天尊天は「大黒天・毘沙門天(びしゃもんてん)・弁財天(べんざいてん)」が合わさった像で、出世や金運、勝負運などにご利益があります。
    秀吉は三面大黒天尊天を身近に置き、出世を果たしたそうです。
    激しい戦国の世で出世した秀吉を支えた三面大黒天尊天。
    いまも大きな壁に立ち向かっている方の強い味方となってくださっているかもしれませんね。

    【おすすめの楽しみ方】
    圓徳院の拝観には通常大人500円の拝観料が必要になります。
    もし圓徳院と合わせて高台寺・掌美術館へ足を運ばれるのであれば「高台寺三ヵ所共通拝観券」のご購入がオススメです。
    3か所共通拝観券は900円で販売しており、購入特典として高台寺オリジナル絵はがきもいただけますよ。

     

     

    〈16_kodaiji_ねねの道石碑〉

     

     

     

     

    〈18_kodaiji_ねねの道風景〉

     

    観光名所 高台寺周辺、お楽しみいただけましたか。秀吉とねねが過ごした伏見城から多くの遺構を移築し、秀吉の影を見つめながら晩年を過ごしたねね。
    そんなねねの秀吉に対する想いが詰まった高台寺で、すてきなひとときをお過ごしくださいね。