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古都 奈良の定番コースとは一味違う 歴史の深淵にふれる3スポット

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    今回は定番の奈良旅コースに飽きた、もっと深く奈良の寺社仏閣を知りたいという方に、ぜひ訪れていただきたい3つのスポットをご案内。
    聖武天皇が創建した東大寺と対になる、聖武天皇の娘・孝謙上皇が創建した西大寺。
    そして菅原道真生誕の地に建つ菅原天満宮、奈良の大仏殿のひな型とされる本殿を持つ喜光寺から、歴史の表舞台の深淵へと誘います。

     

     

    1200年以上 古都奈良の西を司る西大寺

     

     

     

    写真01_alt:西大寺四王堂

     

     

     

    765年創建の古刹「西大寺」。
    764年に起きた反乱の平定と平和祈願を目的として孝謙上皇によって建立され、平城京を中心に東の東大寺、西の西大寺としてともに栄えてきました。近鉄大和西大寺駅から一番近い東口から入って右手に見えるのが四王堂です。
    中には本尊である四天王像をまつっています。4つの仏像いずれも度重なる火災に見舞われたこともあり、江戸時代に再建されたものです。その足元には四天王像に踏まれている邪鬼が。

     
    なんとこの邪鬼は火災をくぐり抜けて、創建時からの様子を伝える唯一の遺構となっています。1250年もの間、幾度の火災に見舞われてきた苦難の歴史を物語るような表情に引き込まれました。

     

    写真02_alt:西大寺本堂

     

    四王堂を出て中心に向かって進んでいくと、立派な本堂が見えました。
    1790年頃に完成した仏堂で、文殊菩薩騎獅像や弥勒菩薩坐像といった鎌倉時代の仏像がまつられています。毎年10月には「光明真言会」という、災害や平安京遷都によって衰退した西大寺の再興に尽力した叡尊上人が始めた法要が行われています。
    1264年以来、約750年もの間脈々と受け継がれている伝統行事です。
    途絶えることにない一門の精神を感じる、幻想的な空間が広がっていました。
    また光明真言会と並んで有名なのが「大茶盛式」。
    大茶盛式も叡尊上人が深く関わる行事で、「戒律復興・民衆救済・一味和合」の精神から始まりました。一味和合とは同じ味を味わうことで、親睦を深めて絆を強めることだそうです。

     
    春と秋の2回行われるので、日程を確認してぜひ足を運んでみてください。

     

    公式HP : 真言律宗総本山西大寺

     

     

     

     

    奈良にある最古の天満宮 菅原天満宮

     

     

    写真03_alt:菅原天満宮外観

     

    菅原天満宮は日本最古の天満宮として知られ、天穂日命・野見宿祢・菅原道真を御祭神とし、合格祈願にご利益があります。
    しっかりと構える石鳥居の奥には、拝殿が見えます。

     

    写真04_alt:菅原天満宮境内

     

    趣ある鳥居をくぐると、まるで別世界かのような静けさに心が震え、とても神聖な気持ちになりました。
    拝殿の前には道真ゆかりの臥牛像と梅の木が並び、まさに菅原道真生誕の地ですね。
    2月から3月にかけては盆梅展も行われ、梅の香りが境内全体に漂うそうです。

     

    菅原道真の菅原という姓は、この菅原の地から来ています。菅原道真の先祖である野見宿祢は、かつて土師器(はじき)や埴輪を製作していました。

     

    当時慣習として行われていた殉死の制度を改め、代わりに埴輪を埋めるようにと垂仁天皇に進言し「土師」という臣の姓を賜ることとなりますが、その後菅原へと改姓を願い出たそうです。土師器や埴輪の製作は菅原の豊富な資源が背景にあり、そこから土師氏が発展していったことからも「菅原」の地に強い思いを抱いていたのでしょう。

     

    文学の世界に大きく貢献した菅原道真の活躍、葬儀の文化を大きく変えた野見宿祢、どちらも日本の歴史文化に大きな影響を与えた人物です。そして始祖とされる天下泰平、国土安泰、五穀豊穣の守護神 天穂日命。そのパワーが境内に宿っています。学問の祈願だけではなく、歴史を変えた力を感じにぜひ訪れてみてください。

     

    公式HP : 菅原天満宮

     

    行基ゆかりの古刹 奈良 喜光寺

     

     

    写真05_alt:喜光寺南大門

     

    喜光寺は菅原天満宮にほど近くにあるお寺です。この一帯が菅原氏の治領であったことから「菅原寺」とも呼ばれています。まず最初に目に飛び込んでくるのが南大門。

     

    1570年代に戦で創建時のものは焼失しましたが、平城遷都1300年にあたる2010年に450年の時を越えて復興されました。左右の柱の中には、文化勲章を受章した彫刻家の中村晋也が手掛けた仁王像が祀られています。門もさることながら、この仁王像の迫力は圧巻です。

     

     

     

    写真06_alt:喜光寺本堂

     

    そして門をくぐると、重要文化財である本堂が正面に見えます。現在の本堂は1544年に再建されたもので、重層の本堂は本山 薬師寺の東塔や金堂と同様の裳階(もこし)を付け、創建当時の姿を意識した復古建築です。

     

    実はこの本堂、「試みの大仏殿」とも呼ばれています。行基、大仏、と言えば、「東大寺の大仏」ですよね。伝承によると、なんと本堂は東大寺の大仏殿の「ひな型」として行基が建てたとされています。仏教を篤く信仰していた聖武天皇の願いを受けて大仏造立に尽力した行基。本殿からその情熱が伝わってきます。

     

     

     

    写真07_alt:行基堂

     

    721年に行基が創建した当時は喜光寺ではなく「菅原寺」と呼ばれていました。喜光寺という名は748年に聖武天皇が参詣され、ご本尊から不思議な光が放たれたことを喜ばれた天皇が「喜光寺」という寺号を授け、現在にいたります。そしてその一年後に喜光寺で入寂した行基の功績を偲び、行基堂が建てられました。

     

    人々のために人生をかけて慈善活動や大仏造立に取り組んだ行基。その活動に感謝と尊敬の意を込めて手を合わせました。

     

     

    公式HP : 法相宗別格本山喜光寺

     

    奥深い魅力を持つ3つのスポットはいかがでしたか。
    東大寺、北野天満宮、大仏殿、といった定番の名所だけではなく、静かに厳かに歴史を支えいまに伝える深淵の寺社で、ぜひ古都奈良で心に染み入るような体験をしてみては。