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喜多川歌麿も愛した「蔵の街」栃木市 蔵と浮世絵のおすすめスポット

  • 「小江戸」「蔵の街」などと呼ばれることの多い栃木市。そんな栃木市は浮世絵師喜多川歌麿のゆかりの地でもあります。今回は栃木の街全体にあふれる蔵と浮世絵について、数ある名所のなかから厳選して紹介します。

     

    たくさんの記念館や資料館のある栃木市で楽しむ「蔵」と「浮世絵」

    <写真01_alt:蔵の街大通りの蔵のモチーフのブロック>
    東京から電車で約2時間で栃木市に到着します。降りるとそこには江戸や明治時代の空気を色濃く残した街が広がっています。栃木市はもともと問屋街で、各地から様々なものが集まってくる地域でした。大切な荷物や品物が燃えてしまわないようにと、蔵が数多くつくられたのだそうです。保存されている蔵の数は全国有数で、大通りにかかっている旗や歩道のブロックにも蔵のモチーフを見ることができます。
    <写真02_alt:蔵の街大通りの浮世絵チックな旗>
    蔵の街大通りを歩いていると、蔵のモチーフと同じくらい目にするのが「浮世絵」です。栃木は歴史の教科書にも登場するあの浮世絵師、喜多川歌麿ゆかりの地でもあります。喜多川歌麿は、贅沢禁止の法令が出された江戸を逃れて栃木へとやってきました。浮世絵の展示に関するポスター、お祭りのポスターはもちろん、喜多川歌麿とのつながりを解説した立て看板も街中で目にします。有名歴史番組で歌麿の特集が組まれた際も、この栃木の街が取り上げられましたとのことです。

     

    浮世絵をみるならここ!重厚な外観が美しいとちぎ蔵の街美術館

    <写真03_alt:とちぎ蔵の街美術館概観>
    栃木駅から約20分のところにある「とちぎ蔵の街美術館」は、およそ200年前に建てられた栃木市指定有形文化財である「善野家土蔵」を改修した建物で、栃木市ゆかりの作家の作品を中心に収蔵している美術館です。内装はまだ新しく、一年を通して様々な企画展を行っています。喜多川歌麿以外の浮世絵師の作品や近現代の陶芸作家の作品も収蔵しています。喜多川歌麿の作品以外の展示を見ることで、喜多川歌麿の作品をよりよく知る機会となります。喜多川歌麿のことをさらに詳しく知りたいときは、近くにある「とちぎ歌麿館」にも合わせて訪れてみるのがおすすめです。是非とちぎ蔵の街美術館を訪れて栃木の芸術を感じてみてください。
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    とちぎ蔵の街美術館は蔵を改修しているため、展示スペースは小さな部屋がいくつもつながっている様式でした。作品と建物両方から歴史を知ることができるのが魅力です。とちぎ歌麿館は、栃木市蔵の資料館「古久磯提灯店見世蔵」を活かし、歌麿と浮世絵の復刻版などの関連資料を展示する「まちなか美術館」 となっています。

    所在地:栃木県栃木市万町3-23

    問屋街の歴史を感じる建物!岡田記念館「翁島」は銘木の宝庫

    <写真05_alt:翁島別邸概観>
    新栃木駅から約20分のところにある「岡田記念館」は、歴史的建造物群保存地区として登録されている嘉右衛門町(かうえもんちょう)にあります。岡田家は栃木市屈指の旧家で、現当主が26代目なのだそうです。栃木の蔵の街並みは、岡田家はじめ、かつて栄華を極めた豪商たちによって築かれてきたものなのです。岡田記念館は個人経営の記念館で、蔵や屋敷、別荘の内部を公開しています。2016年現在、開館日は土日月曜と祝日のみですが、予約をしておけば他の曜日でも見ることができます。
    <写真06_alt:翁島の襖の引き手>
    まずは明治時代に22代当主が建てた別荘「翁島」です。用材にはすべて銘木を使用し、工匠が技を競い合って建てたといわれている翁島別邸は、国の登録有形文化財です。釘を一本も使わずに建てられたのだそうです。庭園では四季折々の花を楽しむことができます。圧巻なのは、けやきの一枚板でつくられた廊下。長さが六間半(約12m)もあります。お風呂には唐傘天井、現代では作り手のいなくなってしまった千本格子、高い天井、3000年の屋久杉など、見どころ盛り沢山な建物です。今の時代では、用材をそろえることも難しく、技術面でも厳しい部分があるのだとか。写真は刀鍛冶師のつくった襖の引き手です。翁島は、良いものを使っているだけではなく、細部までこだわりに満ちていました。

    問屋街の歴史を感じる蔵と展示品!岡田記念館の「代官屋敷」

    <写真07_alt:岡田記念館代官屋敷の展示ケース>
    岡田記念館の代官屋敷では、代々の当主が使用した品々、貴重な文献、交流のあった文人・墨客が残した美術品などが展示されています。江戸時代慶長の頃、士豪として栃木に移住し、荒地を開墾し、地域発展のために尽くした岡田家。以後代々の当主は嘉右衛門を襲名し、「嘉右衛門町」という地名の起こりともなったそうです。
    <写真08_alt:代官屋敷内に展示された鎧>
    建物に入ると、豪華な鎧が出迎えてくれました。取材時は大雨の影響で蔵の中の展示は移されてしまっていましたが、平時は蔵の中でも展示品がみられるのだそう。当時からいままで、手を加えつつもそのまま使い続けている蔵を見ることができます。歴史の奥深さ、時の流れを感じるとともに、それを残そうとしている人々の愛が伝わってきました。

    所在地:栃木県栃木市嘉右衛門町1-12

     

     

    喜多川歌麿の愛した蔵の街、栃木市では、街全体が建物や資料、そして文化を保存しようと取り組んでいます。だからこそ、蔵や浮世絵を街中で目にする機会も多いのです。実際に街を訪れて、場所の空気を感じながら名所を巡ってみてはいかがでしょうか?